第01話 プロローグ
異世界ものが好きで、趣味で書いてみることにしました。
ひとりでも読んでくれると嬉しいので、よろしくお願いいたします。
空が夕日に染まり、茜色の光が差し込む教室の窓辺で僕は漫画を読んでいる。
教室内にはページを捲る音だけがしており、窓の外からは時折野球部の人たちとおぼしき掛け声が聞こえてくる。
放課後の教室でのんびりするの、結構好きなんだよね。
そして今読んでいるのは、昨日友達に薦められた少女漫画だ。
よくあるラブコメもので、男女の掛け合いがなかなか面白いので、僕もよく参考にさせてもらっている。
ところで、僕がなぜ放課後の教室でひとり漫画を読んでいるかというともちろん人を待っているからだ。
そろそろ来るはずなんだけど、と思っていると勢いよくドアが開いた。
「け~い!おまたせー!かえろっ」
と言いながらこっちに近づいてくる少女。
彼女の名前は南條茜。僕の幼馴染だ。
少し茶色が混じった黒髪で、ストレートのセミロングヘア。
可愛い顔立ちで誰とでも分け隔てなく話す面倒見の良さから、学校内での人気が高い。
「うん。じゃあ、行こっか」
今更だけど、僕は相良慧。
私立開豊高校に通う一年生だ。
この辺では、ダントツで頭が良い進学校である。
僕はそこまでじゃないけどね。
読み終わった少女漫画を机の中にしまい、鞄を肩に掛けて茜と教室を出る。
「ごめんね。生徒会が意外と長引いちゃって」
「いや、おかげで漫画読み終わったしちょうどよかったよ」
茜は一年生にして既に生徒会に入っている。
この間の中間試験では、総合四位とかなり頭が良いのだ。
普段は寂しがり屋で、全然そんな感じしないんだけどね。
「ああ、さっきの少女漫画?面白い?」
少し首を傾けて、そう聞いてくる。
うん、めっちゃ可愛いです。
思わず、その可愛い頭をなでなでする。
キョトンとしながらも、嬉しいのか顔がにやけている。
昔からの僕の癖で茜も知っているので、黙ってされるがままになっている。
そんな所もまた可愛かったりするのだが。
茜を愛でるのは、僕の趣味である。
その後、数分間撫でていた手を離す。
茜は残念そうにしているが、さっきから男たちの、いやなぜか女子もいる、嫉妬の視線がビシビシ突き刺さってくるのだ。
こっち見てる暇があったらもっと部活がんばれというものである。
帰宅部の僕が言えた義理じゃないけどね。
「それで?面白いの?」
「面白いよ。興味あるなら明日貸そうか?」
「いいの?又貸しになるけど……」
「大丈夫だよ。気にしないで」
「う、うん。じゃあ、明日借りようかな」
僕たちはそんな他愛もない日常の会話をしながら、学校を出て電車に乗る。
この時間帯は、もうあまりうちの学生は乗っておらず仕事帰りのサラリーマンが多い。
以前、こういう帰宅時間帯に茜が痴漢されたことがあった。
その時は僕が近くにいたから良かったけど。
え?その痴漢した奴どうしたのかって?
もちろん社会的に抹消し、ついでに痴漢野郎の"きのこ"を物理的に踏み潰しておいた。
何か特別な治療をしない限りは、永遠に使い物にならないと思う。
茜に汚い手で触れようなんて、自殺志願者(男として)が多くて困る。
それ以来、帰れる時は一緒に帰っている。
別に過保護ではない。ただただ心配なだけだよ。
「……ねぇ、慧聞いてる?」
「ん、ああ、聞いてるよ」
おっと全然聞いてなかった。
まずい、茜が不機嫌になってるっ。
「その顔は絶対聞いてなかったよね、もう!」
そう言って頬を膨らませ、拗ねている。
は、破壊力がありすぎますよ。茜さん。
抱き着きたい衝動をなんとか抑えて、頭をぽんぽんするに留める。
「ごめんごめん。なんでもするから」
「ほんとに?じゃあさ、電車降りたらここに連れてって」
途端に笑顔になった茜が見せてきたのはスマホの画面。
お店のホームページのようだ。
「カフェ?」
「うん。駅の近くに新しくできたんだって。内装とかおしゃれでしょ?」
「へぇ~知らなかった。じゃあ、行ってみるか」
「うん!もちろん、慧のおごりね」
「はいはい。お好きなだけどうぞ」
その後、電車を降りた僕たちは、新しくできたカフェでお茶してから帰ることにした。
◆◆◆◆◆
《突然の茜視点》
初めまして。南條茜といいます。
私立開豊高校に通う一年生です。
さっそくですけど、私には幼稚園のときから大好きな幼馴染がいます。
もちろん異性として好きという意味です。
でもずっとずっと一番近くにいるせいか、告白もせずに幼馴染以上恋人未満を続けている。
でもたまにキスとかしてくれるので、正式に付き合ってはいないけど、好き同士みたいな曖昧な関係になっちゃってます。
それはそうと、その幼馴染の名前は慧。
女の子のように綺麗な黒髪をしていて、中性的な顔立ちだけど、雰囲気とかが男の子だと伝えてきます。
服の上からだとあんまりわかんないけど、結構筋肉があってカッコイイのです!
あと、凛として優しい声も最高です。
えっと。
慧の自慢を色々しちゃったけど、実は最近悩みがあります。
この前、慧とカフェに行ってから毎日のように自宅の郵便受けに、私宛ての手紙が入っているのです。
どういう手紙かというと、新聞を切り取ってぺたぺた貼った感じのやつで、「愛してる」とか「結婚しよう」とか書いてありました。
私は怖くなって、それをゴミ箱の底に押し込んでいる。
学校の男子に貰うラブレターが数倍可愛く感じるよね。
こういうのって、そのうち諦めてくれるものなのかな?
こういうとき頼りになるのが慧なんだけど……。
ストーカーの為にも、慧には言わないほうがいいよね。
慧に話したら、ベタだねーとか言いながら半殺しに行くからね絶対!
慧って怒ると本当怖いんだよ。
小学生のときは空手にハマって、始めて一年で全国大会で優勝してから三連覇すれば、今度は中学から居合道を始めて、この間二段になったらしい。
私は凄いのかよくわかんないんだけど、居合の演武めっちゃかっこよかったなぁ。
他のスポーツも卒なくこなして、中にはプロか!って思うものもある。
一時期は部活いくつも掛け持ちしてたんだけど、あの事があってから全部辞めたみたいです。
とにかく、慧は運動神経の塊みたいなやつで。
だからね?怒らせると凄く怖いよ。怖いんだよ。(大事だから二回言った)
私には凄く優しいけど。ふふっ。
異世界に行くのはもうちょっと先です・・・