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第18話 決闘はお金稼ぎ?

 

 受付嬢から冒険者ギルドについての説明を受けた後、近くのおすすめの宿屋を紹介してもらった。

 風呂もあって、ご飯もかなり美味しいらしい。

 高そうなので遠慮しようと思ったら、リーザから「大丈夫だよ」という言葉を頂戴した。

 なにが大丈夫なのか……。

 もしかしたら、皇族はタダとかいう暗黙の了解みたいなものがあるのか。

 でもだからといって、おんぶに抱っこになるわけにはいかない。

 そこで、前から考えていた"短時間でお金を稼ぐ方法"を実行に移そうと思う。


 リーザとエンリに「ここで待ってて」と言った僕は、なんとなく短絡的でアホそうな男に近づいていく。

 さっきの絡んできた男がよかったけど、あのマッチョに追い払われてしまったのでもういない。


「ねぇ、オジサン。僕と決闘しない?」

「なに?決闘だと?俺とか?」

「うん!お互いの持ち金を賭けて」


 冒険者ギルドでは、懸けの決闘というのが公式に存在する。

 魔法によってお互いの懸けを縛り、破ることはできない。

 ルールも、アシッドとやった決闘と変わらないし。

 お金を懸けた決闘をすれば、簡単に手に入る。

 もちろん、拒否することもできるけど、この場にいる人たちは僕のことを貴族の子供だと思っているから、もし勝てれば、と考えてもおかしくはない。


(このガキは馬鹿か?そんなの、この俺に金をくれるようなもんだ、ハハ)


「いいぜ!決闘しようか。地下に決闘場がある。ついてこい!」


 そう言った男は、ギルドの職員を呼ぶと、スタスタと歩いていった。

 凄い単純だよ。

 僕にどんなメリットがあるかとか考えないんだろうか。

 そんなことを思いながらも、男の後ろを付いていく。



 ギルドの地下には、巨大な室内闘技場があった。

 フィールドは円上になっていて、回りには観覧席まである。

 凄い立派な作りをしていた。

 僕たちがその決闘場の中央に行くと、後ろから来ていた野次馬がゾロゾロと観覧席に座っていく。


「まさか、あんなガキがラーバに決闘を挑むとはな」

「ああ、おもろいな。で、どっちに懸けるよ?」

「んなもん、ラーバに決まってんだろ」

「おいおい。それじゃあ、懸けになんねえだろうよ」

「じゃ、私は大穴であの子にしようかしらね」

「お、いいね。俺はもちろんラーバだな」

「でも、大丈夫か?相手は子供でも貴族だぞ?」

「なーに。なんかあっても、ヤバいのはラーバだけだ」


 とにかく外野がうるさいや。

 この男、ラーバというらしいが、たいしたことはない。

 神眼など使わなくてもわかる。

 動きが、素人に毛が生えた程度だ。

 余程身体強化のスキルレベルが高くないと話しにならないね。


 さて、すでに恒例になっている何かする前のステータスチェックから。


 ステータスオープン!


 ***

 ケイ・サガラ(異世界人)

 種族:人族 性別:男 年齢:16

 ジョブ:勇者(召喚)

 魔法属性:火 水 風 土 雷 光 時空

 スキル:世界共通言語 神眼 スリ[Lv.1] 身体強化[Lv.5] 武術[Lv.2] 剣術[Lv.2] 回避[Lv.1] 居合[Lv.2] 威圧[Lv.5] 速読[Lv.3] 詠唱破棄 高速思考 刀術[Lv.1] 手加減[Lv.1] 索敵

 称号:Fランク冒険者

 ***


 あ、称号がようやく変わっている。

 職を移れば変わるのかもね。学生も立派な職か。

 それから、スキルがもうワケわかんない。

 どんどん増えていって、見るのも億劫だ。

 もっと見やすくならないかなぁと思っていると、脳内の表示が一瞬で変わった。


 ***

 ケイ・サガラ(異世界人)

 種族:人族 性別:男 年齢:16

 ジョブ:勇者(召喚)

 魔法属性:火 水 風 土 雷 光 時空

 スキル:

 戦闘系→身体強化[Lv.5] 武術[Lv.2] 剣術[Lv.2] 回避[Lv.1] 居合[Lv.2] 威圧[Lv.5] 高速思考 刀術[Lv.1] 手加減[Lv.1] 索敵

 魔法系→詠唱破棄

 生産系→なし

 生活系→世界共通言語 スリ[Lv.1] 速読[Lv.3]

 その他→神眼

 称号:Fランク冒険者

 ***


 うん。前よりは見やすくなったかな?

 次からは、これをデフォルトにしよう。

 因みに、このステータスチェックは高速思考のおかげで1秒も経っていない。


「それでは、両者の同意の元、決闘を執り行う。立ち会い人は私、アロスが行う。懸けは、お互いの持ち金。ルールはギルド条項の規定通りだ。では、魔法を掛けさせて頂く」


 そう言ったギルド職員──アロスは、スクロールを取り出し、それを開いた。


「黒縛魔法。タイズダークネス」


 アロスがそう口にすると、ラーバと僕の体に黒い靄みたいなものが入ってきた。

 ふむ。これが、魔法で縛るってことか。

 因みにスクロールとは、魔法の巻物のことで、術者が魔法をそれに付与させて、魔法を使えない者でも魔力さえあれば行使が可能になるという代物だ。


「よし!それでは、始め!」










 ◆◆◆◆◆




 ラーバとの決闘を瞬殺で終わらせた僕は、さっさとラーバの持ち金をふんだくると、口をあんぐり開けたまま固まっている人たちを横目に、リーザたちの元へ戻ってきた。


「ふたりとも、おまたせ。じゃあ、お金も手に入れたし、行こっか」

「さすが、ケイ!「様です!」」


 憧れの目で見てくるふたりを愛でながら、ギルドを出ようとしたとき、僕たちの前に立ちはだかった巨漢。

 それは、さっきのマッチョだった。


「さっきの決闘見せてもらったぜ。小僧、なかなかやるじゃねえか!俺は、ハイドン。帝都で活動してるAランク冒険者だ。なんかありゃ、いつでも頼れ!ガハハハッ!」


 そう言って豪快に笑いながら、酒場の方に行くマッチョ──ハイドン。

 ふむ。あれは強そうだ。

 ステータスは見ないけどね。めんどいし。








 ギルドを出た僕たちは、紹介してもらった宿屋に向かって、歩いていた。


「ねぇ、ケイ!あれ、美味しそうだよ!」


 僕の手を引っ張って、出店に突撃していくリーザ。

 そこには、串肉と書いてある。

 これが、前言ってたやつか。確かに50ガントだ。


「へい。お嬢ちゃん。一本どうだい?」

「ケイ、これ欲しい」

「いいよ。おじさん、三本ちょうだい。はいこれ、銀貨1枚と銅貨5枚ね」

「まいどありー!」


 空間収納魔法、アイテムボックス。

 その名の通り、異空間に物を自由に出し入れできる超便利な魔法だ。

 僕は、これを皇宮の書庫にあった魔法書を読んで会得した。

 その空間の中に入れておいたお金を取り出して、おじさんに支払ったのだ。

 僕には、詠唱破棄というスキルがあるので、息をするように魔法が使えるからラクチン。



 この串肉、めっちゃうまい!

 肉も旨いけど、なんといってもタレが旨いね。


「ケイ、美味しいねこれ。ふふ」


 凄く幸せそうな顔をしているお嬢さんの頭を撫でながら、エンリに視線を向けると。

 はふはふしながら、肉にかじりついているメイドがいた。

 なんか……リスみたいだ。


「ケイ様。これ美味しいですね。出店で食すのは初めてですが……け、ケイ様との"初めて"です//」


 なぜそんなことで顔を赤くしている。

 いったい何を想像したの?君は。

 突然、そういう顔はしないでもらいたい。

 僕の理性はガラスより壊れやすいんだからね?



 僕たちは、その後もいくつかの店をひやかしながら宿屋へ向かっていると、面倒なのがやってきた。

 ここは、あまり人通りがなく、もう暗いので一目につかないし、大胆に出てきたのだろう。

 この道は宿屋への近道なので、特に気にせずに歩いていたけど、案の定だ。

 前から二人、後ろから二人。全員剣を携え、チンピラのような風貌をしている。

 客観的に見ると、ピンチなのだろう。

 だが、僕が今考えているのは、宿屋の風呂は大きいのか小さいのかということである。

 部屋に付いてるタイプだと小さい。

 公衆浴場的なのがいい。

 それから混浴ってこの世界にあるのだろうかと思っていると、前にいる金髪の男が口を開いた。


「よう。大人しく俺たちに付いてきな。なーに、わるいようにはしねえよ。抵抗すれば、痛い思いをするかもしれねえがな」


 なにが面白いのかニヤニヤしている男たち。

 因みにこんな男たちの心を読んでも、キモイだけなのでスキルは切ってある。

 この世界では襲われれば殺しても何にも罪にはならない。

 当然だ。

 盗賊とかが普通にいる世界だし、治安も日本と比べるまでもなく悪い。

 つまり、さっきからエンリに邪な視線を向けてきているこいつらを、過剰にぶちのめしてもなんら問題ないということである。


 僕はリーザとエンリの周りに、ある魔法を発動させると、指をポキポキ鳴らしながら前の二人に近付いていく。








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