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第14話 フローランの世界

 

 朝食を食べた僕は、リーザとエンリの案内で皇宮の書庫にやってきていた。


 因みに朝食は牛乳と卵サンド、いくつかの野菜が入ったコンソメ風スープだった。

 凄く美味しかったよ。

 それに、エンリのドヤ顔が印象的だった。

 普通コックさんとかが作るんじゃないだろうかと、僕は少し疑問を感じた。



 まず基礎的な知識を得ようと、タイトルを見て片っ端から本を読んでいる。

 ただ、僕が気になっていたこの世界の貨幣についての本は見当たらなかった。

 物語とかでは出てくるんだけどイマイチよくわからない。


「リーザ、この世界の貨幣ってどんな感じなの?」

「貨幣?ここに入ってるよ?」


 そう言ってリーザが取り出したのは、銀色の少し洒落たカードだった。

 なんか某銀行のクレジットカードみたいだ。


「これはね、貴族証って言う貴族の身分証なんだけどね、この中にお金を入れておけるんだよ」

「え?これ、カードだよね?」

「うん!マネーチャージっていう魔道具があるんだけどね、それにこのカードをかざしてお金を入れると情報としてこのカードに記録されるんだよ。それで、お金を支払うときにまた魔道具にかざすと自動的に引き落とされるんだぁ。大きい都市の店ならどこにもあるし、重い金貨とか持ち歩かなくてすむから便利なんだよ」

「へぇ。まさにクレジットカードだね」

「クレ……なに?」

「あぁいや、なんでもないよ。凄いねそれ、貴族しか持てないの?」

「うん、貴族証だからね。でも、ギルドに登録すればギルドカードが貰えて、そのカードにも付いてる機能だから、ケイは冒険者ギルドに登録すればいいんじゃない?」


 なるほど。さっき冒険者に関する本は少し読んだ。

 実績を重ねていくと冒険者ランクというのが上がり、上に行けば行くほどお金が貰える。

 やっぱりお金稼ぎの最有力候補は冒険者かな。


「それで、硬貨の種類は?」

「えっとね。硬貨の種類は全部で6つあって、下から順に銭貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、光金貨っていうのがあるんだよ。銭貨1枚で1ガント、銅貨1枚で10ガントっていうふうに一桁ずつ上がっていくの」

「ふむ。それってこの国だけ?」

「全部の国で使えると思うよ」


 この世界での通貨は、『ガント』っていうのか。

 国によって通貨が違う地球よりだいぶ楽でいいね。


「因みにそれってどのくらいの価値があるの?何か目安ある?」

「う~ん。この間、街の屋台で買った串肉は50ガントだったよ」


 串肉か。縁日とかでやってる串焼きみたいなものだろうか。

 そうすると、あれは大体500円ぐらいだから、単純に10ガント100円相当ってことになる。

 1ガント、10円?

 物価の違いとかがあるだろうから、こんなに単純かどうかはわかんないけど、そこまで間違ってはいないと思う。


「うん、だいたいわかったよ。ありがとね、リーザ」


 そう言って、いつものようにリーザの頭を撫でる。

 凄い気持ち良さそうに目を細める。

 本当にリーザは撫でられるのが好きだね。



 それから、また本を探しながら気になったものを読んでいるが、ここに来てから探している本がいまだに見つからない。

 どうしようかなと思っていると、とある本が目に入った。


「──ッ!!」


 その本は、棚の一番端に埋もれていた。

 タイトルはどうでもいい。

 その作者が問題だ。


 "アラン・ヴィ・ラーシャ"


 茜のこの世界での名前は、『エレナ・ヴィ・フェシス』。

 真ん中の名前が一緒だ。

 つまり、この作者と同じ国にいる可能性が高い。

 案外、簡単に手掛かりが見つかったよ。

 だが、作者の紹介ページがない。

 これでは、何て言う国の人間か分からない。


「リーザ。この作者、どこの国の人か分かる?」


 僕は、本を見せて聞いてみることにした。


「え?どれ?ッ!これ、まだあったんだぁ」

「ん?どういうこと?」

「この人はたぶんフィーリア王国の人だよ。『ヴィ』は、フィーリア王国貴族のミドルネームだからね」

「フィーリア王国?」

「そう。その国はエルフの国なんだよ。人間や他の種族も普通にいるけどね。でも、貴族はエルフしかいないはずだよ」

「まじか……。もしかして、茜ってエルフ?」

「アカネ?」

「ん?あぁ、昨日少し話した僕の探してる人の名前に『ヴィ』が入ってるんだよ」

「そうなの?じゃあ、エルフなのかもね」


 途端に寂しそうな顔をするリーザ。


(じゃあ、探し人の場所が分かっちゃったのか。ケイ、もう行っちゃうのかな……)


 僕はリーザの頭をわしゃわしゃと、いつもよりも強めに撫でながら口を開く。


「そんなに寂しい?なんなら、一緒にくる?」

「え?い、いいの?」


 途端に花が咲いたような笑顔を見せるリーザ。

 なにこの小動物、超可愛い。

 僕はさらに撫でまくる。

 何10分そうしていたのか、急にリーザが不安そうに聞いてくる。


「でも、私一応皇女なの。そんな勝手が許されるかどうか。あのパパだし」

「僕が連れていくんだから。リーザが心配することは何もないよ」


 そう言って今度はリーザの頬をぷにぷにする。

 や、病み付きになりそうだ。

 それにしても、リーザが知ってるなら『ヴィ・フェシス』に関する本を探さなくてもよかったのかぁ。



「そういえば、『まだあった』って?小さい頃にでも読んだの?」

「あ、違うよ。この国は他種族に排他的だから、基本的に本も人間が書いたのしか置いてないんだよね」

「そうなのか。そういえば聞いてなかったけど、リーザは違うの?」

「うん。私は別にそうでもないかな。ルーファン兄様の他種族嫌いは凄いけど」

「ああ、あれね」


 リーザが他種族嫌いじゃなくてよかった。

 茜がエルフかはまだわかんないけど、連れていけない所だったよ。


「それじゃあ、フィーリア王国に行くの?」

「うん。あ、それってどこにあるの?」

「ここだよ。帝国から東に行くとあるんだけど、結構遠いんだよねー」


 リーザは地図を広げると、ある一点を指差した。

 そこには、たしかにフィーリア王国と書いてある。

 それにしても、思ったより地図がしっかりしている。

 まぁ、地球程じゃないけどね。


「たしかに、遠そうだね。一直線に進むと国を4つも渡らないとなのか。しかも、その内のひとつはバーサス帝国の3分の1ぐらいの面積があるね」


 バーサス帝国の面積はかなり大きい。

 地球で言えば、ロシアだ。

 あそこまで大きくはないと思うけど、他の国と比較するとだいたいあのぐらい違う。


「ここはねぇ、魔法研究が盛んでその分野の人材が豊富なんだよ。東方諸国が帝国に侵略されてないのも、この国があるからなんだぁ」

「へぇ。それより、バーサス帝国ってそんなに凄かったんだね」


 僕がそう感想を口にすると、リーザはクスクス笑っている。


「ケイだけだよ。パパにあんな態度とれるの。アシッドも似たようなものだけど、心の内では尊敬してるし」

「そうかな?」






 その後も、リーザとおしゃべりしながら読書をしていると、あっという間に外が暗くなってきた。


「リーザ。明日、この皇宮を出て東に向かおうと思う。付いてきてくれる?」

「うん!私でよければ。道案内もまっかせっなさ~い」


 そう言って力一杯胸を張っているリーザ。

 僕が可愛いなぁと思っていると。


「リーザ様、私もお供致します。よろしいですね、ケイ様」


 いつの間にか近くに来ていたエンリがそう言ってくる。


「え、エンリもくるの?」

「いけませんか?リーザ様のお世話は私の仕事ですので」


(このまま、ケイ様と別れるなんて無理です。たとえ反対されても強引に……)


 言ってることと心の声が違いますよーエンリさん。


「はは。わかった、いいよ。じゃあ、明日リーガンに話してから出発するから、出かける挨拶含めて支度しといてね」


 僕がそう言うと、ふたりは嬉しそうに頷いた。







次回、いよいよ慧の旅が・・・。


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