第12話 魔王軍の襲撃
僕が魔王退治を拒否すると、この場が静かになった。
え、なぜ?もっと他に誰かいるでしょうよ。
「やはり父上を倒したというのは嘘か。こんな臆病者に負けるはずがないからな」
そう言うのは、第2皇子のルーファンだ。
別に嘘でいいよ。どうでもいいからね。
僕が断ると思っていなかったのか、この場にいるほとんどの人間がポカーンとしている。
心を読むと、どうやらリーガンを倒す程の勇者が断るとは思わなかったらしい。
いやいや、僕は魔王を倒しにきたのではなく、彼女を探しにきたのだ。
そんな静かになった雰囲気の部屋で、僕は関係ないとばかりにリーザに話しかける。
「ところで、リーザ。ずっと気になってたんだけど、皇宮には人族以外の種族はいないの?」
(((((今の状況で、そんなどうでもいいことを?)))))
この場にいる大人たちの心が一致した。
そんな空気の中、豪快に笑いながら話し出した人物がいた。
「がはははっ、さすが俺が認めた坊主だ!実に自分中心で良いじゃねえか!リーガン!俺が行く!ちょうど暴れたかったところだしなっ!」
「……そうだな。頼めるか、アシッド。手の空いている騎士団の連中を連れてってかまわん」
「よし、メリア!10分後に出発する!至急、準備を整えろ!」
アシッドがそう言うと、慌ただしく部屋を出ていく人たち。
「僕としては、あなたたちに自分中心とか言われたくないんだけど」
「はは、確かにそうだな。まぁ、お前はゆっくりしてろ。俺も用ができたからな」
そう言ったリーガンもこの部屋を出ていく。
ここに残ったのは、リーガン、アシッド、ロイド、数人のメイドを除いた人たちだ。
ロイドは「俺も付いていくぜ」とか言って、アシッドに付いていった。
いや~慌ただしいな、とか思っていると、リーザが僕の服の裾を引っ張ってくる。
「ん?どうかした?」
「さっきの話しだけど、この国は人族至上主義なんだ。犯罪奴隷以外では、あまりいないかな。法律では、殺さない限りは他種族にはどんなことしても罪にならないし」
「そうなの?じゃあ、エルフとかはしばらくお預けか」
「エルフだと!あんな傲慢な連中に会いにいくというのか!」
突然、僕とリーザの会話に大声で入ってきたルーファンを無視して、リーザを愛でる僕。
うん、手触り最高だよ。
「おい!聞いているのか、勇者!」
「うるさいよ。僕とリーザの会話に入ってこないでくれるかな?」
そう言いながら、ちょっと殺気をぶつけてみた。
そう、ちょっとだったのだが……。
───バタリッ。
泡を吹いて後ろにぶっ倒れてしまった。
あ、あれ?
なんか、この感じ前にもあったよ。
ステータスオープン!
***
ケイ・サガラ(異世界人)
種族:人族 性別:男 年齢:16
ジョブ:勇者(召喚)
魔法属性:水 風
スキル:世界共通言語 神眼 スリ[Lv.1] 身体強化[Lv.3] 武術[Lv.2] 剣術[Lv.2] 回避[Lv.1] 居合[Lv.1] 威圧[Lv.3]
称号:私立開豊高校一年生
***
やっぱり、スキルのせいらしい。絶対この威圧っていうやつだよ。
ルーファンが、非戦闘寄りなのもあるのかな。
気のせいか、他のスキルもレベルが少し上がっている気がする。
***
対象:威圧
説明:脅しや自身の殺気を強化するスキル。スキルレベルにより効果幅が変動。
***
うん、もっと頻繁にステータスチェックした方がいいかもしれないね。
気絶したルーファンはメイドに運ばれて行き、僕も食べ終わったのでリーザと共に部屋をあとにした。
廊下で別れた僕は、客室に戻ってくるとあっさりと眠りに落ちた。
魔王がどうこう言っていたのは、すでに僕の頭にはなかった。
翌朝、僕の目覚めは最高だった。
うん、外も良い天気だ。
僕が窓から外の庭を見ていると、ドアが開く音が聞こえた。
「ケーイ!起きてる?朝食一緒に食べよう?」
そう言ってドアを開けて僕に近づいてくるリーザ。
僕の前まで来て、何かを期待した目で見上げてくる。
また、頭を撫でてほしいみたいだね。
あれからすっかり懐かれてしまったものだと苦笑しながら、彼女の頭を撫でて「おはよう」と言う。
「はやく行こ!今日一日で、この世界のこと調べたいんでしょ!」
僕の腕を掴むとぐいぐい引っ張ってくる。
「わかったよ、行くからまず着替えさせて」
そう言った僕は、この世界の服装に着替えると廊下に出た。
そこには、メイドのエンリもいた。
「おはようございます、勇者様!よく眠れましたか?」
「うん、スッキリ起きれたよ。それより、僕のことは名前で呼んでくれていいんだよ?」
「そ、そうですか?では、ケイ様とお呼びさせて頂きます。私のことも、「さん」など付けずにエンリとお呼びください」
「うん、わかったよエンリ」
「──ッ!?」
名前呼びだけで、薄く赤面した。
だがすぐに、頭を振って意識を反らす。
「えっと、それでは、朝食を用意しておりますのでお部屋までご案内致します」
僕はリーザと手を繋いで、エンリの後を付いていく。
◆◆◆◆◆
俺──アシッドは、出撃の準備を整えるとロイドや騎士団から100人近くの精鋭を連れて、北にある防衛都市ミザイアに向かっていた。
ブラッドホーンと呼ばれる馬のような魔物に乗って最大速度で走っている。
「アシッド!まだか?」
並走しているロイドが聞いてくる。
「もうすぐだ!相手は魔族だからな、ひとりで突っ込むなよ!」
「わかってるって!」
しばらくすると、高い城壁に囲まれた巨大な都市が見えてきた。
防衛都市、ミザイアだ。
ここから北にある小国群や魔王の支配領域からの襲撃に備えている、バーサス帝国北の玄関口だ。
その都市からいくつもの煙が上がっているのが見える。
だが、思ったより煙は少ない。
これなら被害を最小限に抑えられるかと思ったとき、それは降ってきた。
ヒュンッ!───ズドーーーン!
それは遥か上空から落下し地面に着地すると、高い土煙を上げている。
「な、なんだ!?」
「なんか降ってきたぞ?」
「人……じゃなかったか?」
「──総員、とまれ!」
アシッドの号令で、ブラッドホーンに跨る100人近くの集団が急停止する。
そして徐々に煙が晴れていき、そこに姿を見せたのは──。
「ふふふ。ようやく来ましたわね、帝国のゴミども。私、五災魔王が一柱、アゼルヴァイス様の側近、アンネスと申します。以後、お見知りおきを」
そう言って軽く会釈した、油断ならない気配を纏っている美女が佇んでいる。
漆黒の肌をして耳の長い種族、ダークエルフだった。




