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夢売りの妖精  作者: ちょこみんと
9/10

寄り道

雨上がりのモワッとした空気は、好きではない。


顔に空気がまとわりつくし、ただでさえ夕方で化粧が崩れているって言うのに、湿気でもっと酷いことになっている。


いつもならまっすぐ家に帰るだけなので、諦めて崩れたままだが、今日は友達と寄り道して帰る予定のため、そうはいかない。


目の下にマスカラが滲んで、パンダ目になってしまっているし、ファンデーションも崩れまくっている。誰が見ているって言うわけではないけど、こんな姿で友達に会いたくない。

私の変なプライドが、許さないのだ。

特に男の子と遊ぶときよりも、女の子と遊ぶ時の方がそのプライドは高くなる。

きっと負けたくないだと思う。その子より少しでも上にいて、少しでも幸せでいたい。

そういう小さなことを気にしていると、時々考えすぎて辛いこともあるが、なかなかその考えを捨てることができない。



自分で自分を苦しめている。

わかっているけど、やめることはできない。


違う世界に行けたら、変われるのかな。

今の世界は、自分で作ってしまったプライドで辛い。

違う世界なら、今までの私を知っている人もいない。だから、私のプライドも何もない。



そんな世界に行ってしまいたい。



自由の時間の中で何も考えずに生きてみたい。








寄り道の場所は、いつも友達が行きたいところに行くので、行ってみないとわからない。


今日も待ち合わせの場所以外は、何も知らない。


まぁ、でもたぶん、新作の飲み物を飲みに、駅前のコーヒーショップに行くのだろうなとある程度は予想がついている。


駅のトイレである程度化粧を直し、待ち合わせの改札に向かう。


夕方で帰宅ラッシュ真っ最中の改札は、人で溢れかえっていた。


みんな自分の目的地に向かうために、動いている。

私がここにいることは、誰も気づいていない。

同じ時間に同じ場所に居るのに、みんなそれぞれ違う世界で生きている。

こんなに人は沢山いるのに、私は一人ぼっちだ。

とても、孤独を感じる。

別にここにいる人達とは、知り合いでもなんでもないが、なんだか仲間はずれにされているようで居心地が悪い。早く友達と合流しなくてはと思い、目的地へと急いだ。



友達の葵は、中学校が一緒だった。高校は違うところに行ったが、毎朝乗る電車が一緒のため、毎日のように顔を合わせている。そして時々こうやって放課後に待ち合わせをして遊びに行く。


葵は、とても明るくて一緒にいると落ち着く。唯一、本音で話せる友達だ。



(あれ?居ない。)


どうやら、今日は私のほうが先に着いてしまったみたいだ。

いつもの時計台の所に、まだ彼女の姿がない。


(まぁ、でもすぐに来るだろうから

着いたよってメッセージおくっておこう。)


(送信!これで良し!さてと、あのベンチでゲームでもして待ってようかな。)


ピカっ!


(え?何!?)


突然、目の前を何かが通りかかった気がした。


一瞬で分からなかったが、物凄い眩しかった。

でも羽根が見えた気がした。良く絵本とかで見た、妖精の羽根のような...


けれど、もうその姿はない。


蝶々とか虫だったのかな?

うーん。でも蝶々の羽とは少し違って、ふんわりしていたきがするんだよなー


辺りをキョロキョロ見回してみたが、やはりそれらしいものはいない。


いるのは、帰宅ラッシュを作っている人たちだけだ。



最近、テスト前で寝不足だったから、目が疲れていたのかもしれない。と自分の中で納得していると、


~♪


葵からメッセージの返事があった。


ごめん、今着いた!


このメッセージを目にして、ようやく夢から覚めた気がした。


さっきまでの出来事が全て夢の中で起きたことだと感じた。

一瞬だけ、違う時間の中を生きていた気がする。


ゆったりとしていて、ちょっと寂しくて、ちょっとふわふわした時間。


一瞬だけど、ちょっとだけ暖かく感じた。









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