誤ったルールと正しい真実
「前に進むためにも名前は必要だと思うよ。」
「前に進む?」
「そう」
「私たちは、呪いをかけられているから」
「え?呪い?」
「妖精は、人間と目があってしまうと消えてしまうでしょう?」
「うん。人間の目にはとても強い力があるからでしょ?」
そのくらいは、私も知っている。だけど、今まで消えてしまった妖精がいるってことを聞いたことがない。
「それは、どこで聞いたの?」
リークが唐突に質問してきた。
「え!?・・・誰に聞いたわけでもないけど・・・生まれたときから・・・というか、物心付いたときからそのルールは知っていた気がする。」
私たちにとってそのルールは、息をすること、食事をすることと同じくらい知ってて当たり前なことだった。
「そう、それこそが呪いなんだ。」
「え?」
「誰にも言われていない。なんの根拠もない。それなのにそのルールに縛られて恐怖に怯えながらも、妖精たちは人間のストレスを主食にしないと生きていけない。おかしいと思わない?」
「それが普通だと思っていたからおかしいとは思わないけど?」
リークが何を言いたいのかわからないが、確かに考えてみると危険な目に遭うくらいなら別の食べるものを探せば良いのではないか?
ストレスだはいけない理由があるのだろうか?
しかし、実際のところストレス以外のものを食べたことがない。
他のものを食すことが、想像つかない。
これも呪いなのだろうか?
簡単に手に入ってしまうと、食べ過ぎて病気になってしまうからなのか?
でもそもそも満腹になったことがないから、食べ過ぎという感覚が無い。
わからない。
悩めば悩むほどわからなくなる。
そもそも、なぜ自分が生きているのか。
いつから生きているのか。
ストレスを初めて食べたときのこと、どうやって、ストレスの食べ方を知ったのか?
・・・何も覚えていない
・・・ワカラナイ
考えれば、考えるほど暗闇に引きずり込まれそうになる。
とっても不安で、とっても怖い。
たすけて・・・
たすけて・・・・
「助けて!!」
「わぁ!?」
「おい!大丈夫か?」
はっと意識が戻り、気づいたら、叫んでいた。
目の前には、ミルとリークが心配そうに私の顔を見ていた。
「ラピ!!わかるか??大丈夫か??」
リークが心配そうに私の肩を譲っている。
ミルはそれを見て、
「リーク!頭グラグラしちゃう!!」
「あ、そうだな…悪い…つい、びっくりしちゃって...」
どのくらい意識が飛んでしまったんだろう。
額にはジワリと冷や汗をかいていた。
「もう大丈夫。考え事してたら、深くまで意識が飛んでしまって...」
「ごめんね、ミルたちが呪いの話なんかしたからだよね」
「違うよ。初めてそう言うことをして少し戸惑ったとうか…びっくりしたというか…今までそんな風にかんがえたことなかったから、自分の中で新しい情報を取り込むのに時間がかかっちゃったみたい」
「そうか」
リークは安心したように微笑んでいた。
「ラピがいきなりぼーっとして動かなくなったから、本当に魂が抜けちゃったかと思ったよ。リークと一緒にラピの名前を読んだんだけど、無反応だったし…」
ミルは今にも泣きそうな顔をしている。
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ。だからまた続き聞かせてね。」
「うん!でも少しずつね。また一気に色々言ったらラピおかしくなっちゃうから」
「そうだね。」
ふたりの顔をみると、なぜか落ち着いた。まだあってそんなに経ってないのに。店の中に入れてくれたミル、名前をつけてくれたリーク。
意識が戻った時、ふたりがいてくれて本当に良かった。
「あ!そうだ、この店で働いて!そうすれば、食事もできるし、ちょっとずつミルがいろんなことおしえてあげられるし!ねっ!!」
「そうして貰えると助かるな。」
ミルとリークは私の返事を待っている。
まだ聞きたいことはいっぱいある。
それにまたふたりに会いたい。
だから、もちろん!と答えるとミルは喜んで私の方へ駆け寄ってきてぎゅっと抱きしめられた。
今日は初めてなことばかりだ。
初めて付けてもらった名前。
初めて知った呪いの話。
初めて出来た仲間。
全部私にとって、キラキラ光ってドキドキする。
明日が来るのが楽しみだなんて、思えたの初めてだ。