呆気ない決着
松子は不動金縛りの術をかけられたかのように動かなくなった。
「萌ちゃんを女性として見る事はできません。彼女は、妹に瓜二つですから」
長谷川さんは気持ちが昂ぶって来たのか、いつになく大きな声だ。
「でも、貴女は僕にとって女性なんです」
松子は心臓が壊れそうな程感動してしまったが、その思いを振り払った。
部下の従業員二人は作業に追われているフリをしながら、しっかり聞き耳を立てている。
「萌ちゃんから聞きました。婚約者がいらっしゃるのですね」
長谷川さんの顔が曇ったのを見て、松子は胸を締め付けられる思いがした。
(売上も大事だけど、長谷川さんの気持ちを踏みにじるのはどうなの?)
また睡魔が襲ってきて、頭の中を羊が駆け回る。
「要するに僕の思い込みだった。貴女が僕に好意をお持ちだって、勝手に思ってしまったという事ですよね」
更に衝撃的な長谷川さんの独白が続き、松子は失神寸前だ。
「婚約者の方とお幸せに。もうここには来ませんから、ご心配なく」
長谷川さんの目に光るものを見た松子は飛び出していく彼を追いかけたかったが、身体が動かなかった。
(何なのよ、どうして動かないのよ!)
自分が某アニメの主人公になった気がした松子である。