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赤い衝撃

 松子は萌の言っている事が理解できず、訝しそうに彼女を見た。


 その視線に気づいた萌が更にヒートアップした。


「長谷川さんに言われたのよ、君とは交際できないって! 好きな人がいるからって!」


 松子は萌が哀れになった。長谷川さんも酷い。好きな人がいるなんて遠回しな事を言わないで、


「結婚しているんだ」


 そう言った方が萌も納得できたはずだと思った。


「長谷川さんは結婚されてますよ」


 松子は微笑んで告げた。あくまで店の将来の売上を思って。すると萌は、


「何言ってるのよ!? 私は、長谷川さんが独身だって言ってたから、思い切って告白したのよ!」


 更に熱くなってしまった。長谷川さん、人が好さそうな顔して実はプレイボーイなの?


「でも、先日私が入院した病院の看護師さんが奥様で……」


「その人は妹さんよ! 私、その妹さんによく似ているので、間違えられたの!」


 萌は泣き出していた。松子はあまりの衝撃に言葉を失った。


 どうした事か、松子の頭の中を無数の羊が駆け回り始めた。睡魔が襲ってきたようだ。


「長谷川さんが好きなのは貴女なの! だから、毎日のようにお店に来ているのよ!」


 萌の更に倍の衝撃的な発言に松子は感動を覚える事もなく、固まってしまった。

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