主任拝命
お借りしたお題は「マネジメント」「羊」「感動」です。
松子は唐揚げ専門店に勤務する激痩せに成功した元フリーターである。
心を惹かれた長谷川さんが妻帯者だと思い込んだ松子は、仕事に打ち込む事でそれを忘れようと思ったが、何も知らない長谷川さんは相変わらず店に来ていた。
胸が張り裂けそうになった松子だったが、
「主任の辞令が下りたよ」
顎割れ芸人にノリがそっくりな店長に言われてジレンマに陥っていた。
(私を信頼している店長に申し訳なくて辞めたいなんて言えない)
いつになく義理堅くなっている松子である。
主任を拝命した以上、従業員の配置を考察し、毎日毎週毎月の売り上げ目標を設定し、それを達成するにはどうするべきかを考えなくてはならないと親友の光子に言われた。
「主任てそんなに重い肩書きなの?」
松子は光子の言葉に目を見開いた。光子はニヤッとして、
「そうよ。お客様に感動すら与える仕事をして、全従業員の手本にならないといけないわ」
相当盛った話をする光子だが、松子にはわかっていない。
松子は羊を一万九千九百九十九匹まで数えてしまい、そのまま夜明けを迎えた。
それでも眠くならない松子は無事に出勤できた。
「いらっしゃいませ」
入って来たのは自分と同じ負け組だと思っている萌だった。
連載にしてみました。