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違和感の正体

気がついたらおっさんになって数日。


少しずつですが、状況は理解してきました。


……理解したところで、納得はまったくしていませんが。


それでも、このまま何もしないわけにはいかないので。


とりあえず――できることから始めてみようと思います。

 ワンルームのアパート。


 薄いカーテン。

 質素な家具。


 ――そして。


「……誰、この生活」


 部屋の真ん中で、美南は腕を組んでいた。


(いや、落ち着きなさい)


(現状確認よ)


 現場にいた若手に“記憶が曖昧”と伝え、住所を教えてもらい。


 帰ってきたのが、この部屋。


(つまり、ここが“今の私の家”ね)


 ため息をつく。


 そして、ふと手を見る。


「……ひどいわね」


 指先。


 荒れている。


 ささくれだらけ。


「ハングネイルだらけじゃない」


 眉をひそめる。


(これはダメ)


(論外)


(論外よ)


 即判断。


「ケアして、バッフィングしないと」


 立ち上がる。


「……よし」


 バッグを掴む。


「ドラッグストアね」


 行動が早い。


 ◇


 一方、その頃。


(……なんであの人のことばっかり思い出すのよ)


 黒木彩花は、少し苛立ちながら歩いていた。


 隣には。


「だからさ、あそこめっちゃ雰囲気いいんだって」


 営業のエース、高田。


(まだいるのよ、この人)


 無視してもついてくる。


(しつこい)


「ねえ、聞いてる?」


「……聞いてます」


 棒読みだった。


「お、ここ寄る?」


 高田が指差す。


 ドラッグストア。


「ちょうどいいので入ります」


 即答。


 そのまま中へ入る。


(少しは静かになるでしょ)


 ――甘かった。


「でさ、俺的にはさ」


 普通に隣にいる。


(なんでよ)


 心の中で突っ込む。


 その時だった。


「……え?」


 視界に入る。


 見覚えのある、大きな背中。


(あの人……)


 あの日の。


 あのおじさん。


 だが。


 場所が問題だった。


(……え?)


 よく見る。


 立っている場所。


 ――女性用ネイルケアコーナー。


「……なんで?」


 思わず呟く。


 棚の前で。


 真剣な顔で。


 爪磨き用のバッファーを見比べている。


「……」


 状況が理解できない。


(え、ちょっと待って)


(なんでそんなに真剣なの)


(しかも選び方、完全に慣れてる感じなんだけど)


「どうしたの?」


 高田が覗き込む。


「いや……あの人……」


 指差す。


「あ?」


 高田が視線を向ける。


「……誰だよ、あのおっさん」


(そりゃそうよね)


 内心で納得する。


 だが。


 目が離せない。


 その時。


「……これね」


 おっさん――美南が、ぽつりと呟いた。


「この粗さがちょうどいいわね」


 完全に。


 女性の視点だった。


「……は?」


 彩花の思考が止まる。


(今、何て言った?)


 そして。


 次の瞬間。


 美南が顔を上げた。


 視線が合う。


「あ」


「……あ」


 空気が止まる。


 数秒。


 沈黙。


(……終わった)


 美南の内心が叫ぶ。


(なんでこのタイミングで会うのよ!!)


 だが外見は。


 完全にゴツいおっさん。


 無表情。


「……」


「……」


 妙な空気が流れる。


 そして。


 彩花が、ぽつりと呟いた。


「……やっぱり変な人」


 だが。


 その目は。


 どこか楽しそうだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


少しずつですが、物語も動き出していきますので、

引き続き見守っていただければ幸いです。


今後ともよろしくお願いします!

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