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轢き屋 スマッシャー  作者: 拉麺丸
一速:護衛ミッション
2/9

#2


「初めまして。

あなたの評判を耳にしました。信じるべきか悩みましたが、他に頼れる者はいません。

私は来月、大きな商談を控えています。成功すれば、私の人生が変わります。

ですが、同時に多くの敵を作ることにもなります。

期間は一カ月です。お願いです。私の家族――妻と娘を、守ってください。

報酬は、誠意をもってお支払いします。」


自宅の位置情報、脅迫文の画像が送られてきた。

「自宅を見るに相当な金持ちだなこりゃ...」

豪邸というよりお屋敷のようであった。

三郎の頭のなかにとある疑問が浮かぶ。

「こんな金持ちそうなのになんで警察に出さないんだ?」


依頼人の自宅にたどり着く。事前に見ていたがやはり肉眼で見るとかなり衝撃である。

「日本にこんな屋敷があったとはな...」

当たりを見渡していると依頼人らしき人物が来た。

「こんにちは。今回は依頼を受けてくださりどうもありがとうございます。」

初老の男性は深々と頭を下げた。

三郎は軽く会釈した。

初老の男は気まずそうにしながら門扉を開けた。

男「中へどうぞ」

案内された客間はとても綺麗であった。

畳に一切のほつれがなく、座椅子に座った瞬間、井草のにおいが鼻に触れる。

柱は黒光りするほど磨かれていて、水墨の掛け軸には滲んだ山の絵が描かれていた。

お茶を出されたあと、男が口を開いた。

男「初めまして。尾島と申します。」

ん?尾島?そう思っていると名刺が渡された。

 尾島グループ 代表取締役 尾島 慶蔵

尾島グループ。戦前は「尾島財閥」として、重工・鉱業・運輸・金融を中核に据えた五大財閥の一角を占めていた。

もともとは江戸中期から船大工として創業した「尾島屋」。御用船や廻船の建造で名を上げ、明治維新後は造船と海運を核に、近代産業の黎明期を牽引。

当時「海を支配した」といっても過言ではない財閥まで上り詰めた。財閥解体を経ても再統合し、「海の上で船と時代を動かす」のスローガンを掲げ、造船・物流・金融の三本柱を中心にさまざまな分野に事業を拡大している。

三郎(え、あの尾島グループ?)

とんでもないところから依頼を受けちゃったな...

慶蔵「さて、本題に入ります。私は一か月後に国際的な商談を控えております。これが成功すればわが社はより飛躍するでしょう。しかし、どこから情報が漏れたのかあの脅迫状が届いたのです。」

三郎「聞きたいんだが...なぜ警察ではなく、俺に?」

慶蔵「すでに警察に通報はしました。しかし、その翌日、我が娘が誘拐されかけました。間一髪、娘に持たせておいた非常用端末でなんとか防げました。」

三郎「つまり...警察に内通者がいると?

慶蔵「断言できませんが…もうそうとしか思えません。ここ最近気が気ではありませんでした。」

慶蔵「しかし、そこで…」

三郎「俺を選んだわけか」

慶蔵「裏社会で色々探るのは大変でしたが…あなたの腕は凄く良いと評判でした。それに、こういう護衛の任務を何回か受けたことがあるそうで。」

さて、ここで記憶喪失のことを話すべきか…

第一、俺は自分が何してきたか全く覚えていない。いや、そんなこと言ったらかえって混乱させるか。必死で掴んだ蜘蛛の糸がこの様じゃパニックになる。

三郎「ああ。任せてくれ。」

慶蔵「その言葉を待っておりました。それでは一カ月、何卒よろしくお願いします。」

慶蔵は深々と礼をした。

さて、一カ月か…ふと、庭の松の木に目がいく。風に揺られきれいに剪定された木々がかすかに鳴っていた。しかし、その木々の向こう、枝の隙間から異質なものが見える。黒いバンが数台。門の外には制服姿の警察が十数人。チャイムが鳴る。

三郎「待て、出るな」

厄介なことになったな…

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