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女神様の使い、5歳からやってます バレンタインSS 〜美羽のバレンタイン〜

作者: めのめむし


城のティールームで小桜美羽はクララとレーチェルの3人でガールズトークをしていた。

「それで、ミウちゃん。この間教えてもらったバレンタインデー、誰かに渡しますの?」

「おねえさま、わたしもきになりますわ」

そう言われると、美羽は頬を染める。

「うん」

「え、本当に渡すの?好きな人いるの?誰?」

「ガーン。おねえさまがすきなひとがいるなんて……」

「レーチェル、ガーンは口で言わないんだよ」

「そんなことよりだれですのー」

「キャー」

女子たちがわちゃわちゃしている陰で、皇子エルネストとカフィが盗み聞きしていた。


盗み聞きしているエルネストとカフィ。

お互いで牽制する。

「君、カフィだったね。盗み聞きとは貴族らしからぬ行為だよ」

「殿下こそ盗み聞きなんて、陛下が知ったらなんと言われることか?」

「「ぐぬぬぬぬ」」

睨み合う二人。

そんな中ガールズトークは進んでいく。

「それで、どなたがおねえさまのチョコをもらえるのですか?」

「そうよ、私にも教えて」

「うーん、当ててみて」

「まさか、カフィおにいさまですか?」

睨み合っていたカフィがばっと聞き耳を立てる。

美羽は薄く笑う。

「まさか、エルネストお兄様?」

今度はエルネストが聞き耳を立てる。

また、美羽は薄く笑う。

((反応がわからねー))


「まさか、近衛騎士団長のクラークとか?」

「えへへ、クラークだったら渡してもいいかも」

可愛らしい顔で笑う美羽

「「おのれぇー! クラーク」」

エルネストとカフィは鬼のような形相になる

「もしかして、さいきんなかのいいもんしょうのローガンですか?」

「あ、うん。いいよね。彼。うふふ」

美羽ははにかんで笑った。

「「おのれぇ、誰だ!ローガン」」

エルネストとカフィは鬼になる

「ミウちゃん、それじゃあどっちに渡すかわからないよ」

「あ、そっかそれはね……」

エルネストとカフィは限界まで耳に神経を集中する

「二人とも渡すよ」

「「キャー」」

女子二人が黄色い悲鳴をあげる

((なんですとぉー))


エルネストとカフィが(盗み聞きで)憔悴しているところ、クララが聞く。

「ミウちゃん、クラークとローガンの二人が好きってこと?」

「おねえさま、ふたりともなんて……」

「うふふ、バレンタインってね、好きな人にあげるだけじゃないんだよ。

日頃の感謝を込めて、チョコを渡してもいいの。うーん、ありがとうチョコって言おうか」

「じゃあ、クラークとローガンはありがとうチョコですの?」

「さぁ、どうかな」

美羽はまた薄く笑った。

「ミウちゃん、それじゃあ分からないよー!」

((本当にわからねー))

エルネストとカフィは頭を抱えた。


「私は本命チョコとありがとうチョコを作りにいくねぇ」

そう言って、美羽はティールームから去っていった。

「私が本命だったらよかったのに……」

「わたしがおねえさまのほんめいなら……」

図らずもクララとレーチェルは声がかぶさり、驚いて顔を見合わせる。

「うふふ、そうはいかないわよね」

「ふふ、ええ、そうですわね」

二人はお互いのことがおかしくて笑い合った。

ひとしきり笑ったら、「さて」と言って、二人とも顔を厳しくさせる。

「エルネスト兄様! 出てきてはいかがですか!」

「カフィおにいさま! ぬすみぎきなんてさいていですわ」


「それで、お二人とも申し開きはありませんか」

エルネストとカフィは盗み聞きがバレて、二人の妹の前で正座をさせられている。

「あのな、クララ。私は皇子なんだぞ。こんなこと……」

「お黙りなさい。ミウちゃんにも同じ事を言うのですか?」

「ぐっ」

「レーチェル、僕は盗み聞きしようとしたわけじゃ……」

「なにいっているんですの? さいごまできいておいて」

「うっ」

それぞれの妹にやり込められるエルネストとカフィ。

しかし、エルネストはただ怒られるだけの男ではない。

エルネストは急に芝居がかったポーズを取り、喋り出す。

「妹たちよ。お前たちは知りたくないか? 私は知りたい」

「な、何を?」


エルネストは声高に、歌うように言った

「僕の天使ちゃんが誰に本命チョコを上げるのかを」

クララは顔を引き攣らせる

「別に兄様のミウちゃんじゃないけど、誰にあげるのかは知りたいわね」

「そう、私たちはそれを知りたい仲なんだ。探りに行こうじゃないか」

相変わらずエルネストは芝居がかっている

しかし、クララは知りたいと言う欲求の方が勝ってしまう

クララは陥落した

「そ、そう……」

「クララおねえさま!まどわされてはいけません!」

すかさずカフィが口を挟む。

「レーチェル、君は一番ミウ様のことを知っているんじゃなかったのかい?」

「それは、とうぜんじゃありませんこと?」

「じゃあ」


レーチェルはいつもにはないカフィの不気味な迫力に生唾を飲んだ。

「当然、ミウ様の好きな人も知っているんだよなぁ」

「そ、それは」

「だから、僕たちがミウ様が誰を好きになってか知っても、教えなくてもいいんだよなぁ」

「うっ」

「ミウ様のあの可愛らしい笑顔が誰に向けられるか、僕たちが知っても教えなくてもいいんだよなぁ」

「も」

「も?」

「もう!もう! わかりましたわ。どうすればいいんですの!」

レーチェルも割と簡単に陥落した。

カフィが顔を歪めて笑う。

それを見ていた、エルネストが嬉しそうに喋り出した。

「それでは計画を話すよ」


美羽は機嫌良さそうに街中を歩いていた。

手には大きな袋を持っている。

「やあ、天使様。今日もお仕事かい?」

「おじさん、こんにちは。今日はお仕事じゃないよ。

いつもお世話になっている人にバレンタインチョコを配っているんだよ」

「バレンタイン?」

「これだよ。おじさん、いつもありがとうね。ありがとうチョコだよ」

「そうか、なんだかわからないけど、ありがとうね」

「じゃあね」

美羽は街の人気者だ。

歩いているとすぐに声をかけられる。

その一人一人にチョコを渡し笑いかける。

もらった人はほんわかとして、大事そうにチョコを抱えた

それを見ている4人がいた。



「もう、計画があるって言うからどんなことをするのかと思えば、ただの尾行じゃない」

「そうですわ。これじゃ、わたしたちただのへんしつしゃですわ」

クララとレーチェルが文句を言う

「何を言うのかい君達。これがミウ様の好きな男を見極めるのに一番いい手なのさ」

「何を偉そうに言ってるのよ。兄様」

「その証拠に、君たちはミウ様の好きな男を聞き出せたかい?」

「うっ、それは」

「つまりはそう言うことなのだよ」

知人と話している美羽を熱い目でじっと見つめていたカフィが注意をする

「話している時間はありませんよ。ミウ様が動き出しました。あちらの方角は……」

「「「「門将ローガン」」」」


美羽は外門に来ていた。

キョロキョロとあたりを見回し、近くの門衛に何か言う。

すると、門衛は詰所の中に入っていった。

程なくして、ある人物が出てきた。

「ローガン!」

美羽が花が開いたような嬉しそうな顔をする。

「おお、嬢ちゃん。どうしたんだい」

「えへへ、来ちゃった」

ローガンは美羽の言葉に頬をだらしなく緩める。

「「なんだ、あの男」」

エルネストとカフィが憎悪のこもった目で見る。

「ミウちゃんのあの笑顔、やっぱりあの人がいいのかな」

「おねえさま、かわいいですわ。やはり、あのかたが」

美羽は元気な声で言った。

「はい!ローガン。ありがとうチョコだよ。」

「「「「ちがったー」」」」


「こんどはおしろにむかってますわね」

「ええ、そうみたいね」

レーチェルとクララが話していたら、鬱陶しい笑い声が聞こえてきた。

「「ワハハハハ、勝った」」

「何シンクロしてんのかしら?」

「おにいさま、きもちわるいですわ」

二人の辛辣な言葉には反応しないで、エルネストとカフィが交互に喋り出す。

「見ろ! あの、ミウ様の手に持つ袋を」

「あの袋の量はもういくつも入っていないです」

「ミウ様が城で交流があるのは幾人もいない」

「そして、本命を渡すのは最後と相場が決まっています」

「つまり私とカフィが最後にもらう可能性が高い。つまり本命なのだよ」

「何かしら、その破綻した理論」


エルネストとカフィはウキウキして美羽をつけていた。


「いやぁ、まさか私がミウ様の本命だなんて」

「まったくきまってませんわ」ボソリとレーチェルが言う

「残念だが、カフィ君。私以外にミウ様の本命になるものはいない。まあ、恨みっこなしでいてくれ」

「どこからその自信が出ているのかしら」クララがポツリという

「何言っているんですか、私が一番ミウ様と過ごした時間が長いんですよ。私に決まってるじゃないですか。

恨みっこなしでお願いしますよ」

「すごしたんじゃなくて、つきまとってるのまちがいですわ」レーチェルが……。


そうこうしているうちに城に着いた美羽は近衛騎士団の詰所に向かった


「カフィよ」

「はい、殿下」

「わかっていると思うが、近衛騎士団長は手強い」

「その通りですね。しかし」

「そう、あんな木訥とした男、ミウ様の好みのわけがない」

「そうです。あんな剣にしか興味のない面白みのない男、ミウ様が相手にするわけがない」

「この二人最低ね」

「さいていですわ」


美羽の嬉しそうな声が聞こえてきた

「クラークー」

「おう、ミウ様」

美羽は走って近づいていき……飛び蹴りをした

「「「「!?」」」」

クラークはなんなく受け、二人はニコニコと仲良く話す

美羽の笑顔はいつものそれより明らかに可愛い

「「「「まさか!!」」」」


「はい、ありがとうチョコだよー」

……違った


エルネストとカフィのニヤケが止まらない

「いよいよだなぁ」

「いよいよですねぇ」

「何がいよいよなのかしら」

「ちがうかもしれないですわ」

クララとレーチェルは呆れ顔だ

「二人とも見たまえ、ミウ様のあの袋を」

「そう、あれはまさに二人分」

「「つまり我々のチョコだ」」


クララがイライラして返す

「何も兄様たちの分って決まったわけじゃないでしょ」

「おにいさまにあのおねえさまがほんめいをわたすわけありませんわ」

レーチェルは涙目になってしまった

「いいや、現実は我々に味方しているのだよ」

「そうです。私のためにミウ様は用意したのだ」

レーチェルはついに涙をこぼした

そこへ美羽がやってきた


「あれ、なんでみんないるの? ん、どうしたのレーチェル」

レーチェルは慌てて涙を拭いて取り繕う

「なんでもありませんわ。おねえさまにあえてうれしいだけですわ」

「? そうなの。まあ、いいけど」

美羽は一度ため息をつく

そして、顔を上げると、笑顔になってエルネストとカフィを見た

「エルネスト、カフィ……」

「ミウ様、何も言わなくとも伝わってるとも、でもやはり君の口から聞きたい」

「ミウ様、僕はこの時を心待ちにしてました」

(ミウちゃん、やっぱり)

クララは胸が苦しくなる

(おねえさま……)

レーチェルは必死で涙を堪える


美羽はにっこり笑い、チョコを二人の男性に出した

「はい、義理チョコ」


エルネストとカフィは間抜けな声を出す。


「「ギリ……チョコ」」

混乱している二人に変わって、クララが美羽に聞く。

「ミウちゃん、義理チョコって何?」

「義理チョコはねえ、あげるのがめんどくさいけど、あげないと可哀想だから仕方なくあげる時のチョコだよ」

エルネストとカフィの顔色は青ざめる。

クララは一瞬呆気に取られたが……。

「ぷっ、ふふふ」

レーチェルも先程までの悲しい気持ちはもうなくなっている。

「あはははは、おねえさま、おっかしー」

「そうね、ミウちゃんおかしいわ」

「ん?そう?」

エルネストが、ミウに問い詰める。

「待ってくれ、ミウ様は本命チョコを作ったんだろう」


エルネストの問いに、美羽が少し首を傾げる。

「それはエルネストには関係ないんだけど……うん、ここでいいか。きんちゃん」

すると、どこからともなく、魔法生物のきんちゃんが現れる

「こちらです、美羽様」

きんちゃんの異空間収納から、綺麗な箱を二つ受け取る

明らかに今までのどの箱より立派な箱だ


美羽はクララとレーチェルを見て、笑顔になる

今日見ていた中でいちばんの可愛い笑顔だ


「レーチェル、クララ、この世界に来てから、私は二人といれて本当に幸せなんだよ。

だから、これ」


 美羽は、頬を染めながらとても嬉しそうに箱を二つ差し出した。


「ハッピーバレンタイン。二人に本命チョコだよ。大好き」

「ミウちゃん!」

「おねえちゃん」

「「わたしもだいすき」」








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