廃校ダンジョン、攻略完了
「「ギャアァァァァッ!!」」
美波の【火炎弾】の直撃を受けた二体のボブゴブリンは身体を燃やしながらのた打ち回る。
その炎はなかなか消えないようだ。
(美波の魔法系スキルの一端を見たな。 火炎弾でもすごい威力だ)
火炎弾自体は、魔法系の中でも、そして火属性の中でも初級のスキルだ。
だが、美波の持つ魔力ならば、火炎弾でもかなりのダメージを与えられようだ。
その一端を見た謙二は、そう心の中で感想を述べた。
「そろそろ火が消えるか。 流石にタフだな」
「うん。 でも、その間に別のスキルのチャージが完了したで」
「なら、片方は任せてもいいか?」
「うん。 もう片方は謙二さんに任せるよ」
「了解した」
流石にレベル1の廃校ダンジョンを支配するボスであり、Dランクの怪人型エネミーのボブゴブリン。
美波の高い魔力から放った火炎弾の攻撃に耐えて立ち上がる。
それでも満身創痍のため、分担して一体ずつ止めを刺すことにした。
「神速」
「ギッ!?」
謙二は自分達の視線から見て右のボブゴブリンに対し、前衛寄りが使うスキル神速で一気に相手の懐まで詰め寄った。
これは、一瞬だけ速度を最大限まで上げて相手の間合いを詰める時に使うもの。
例え間合いが離れていても、このスキルによって瞬く間に相手の目の前まで詰め寄ることが可能なのだ。
「あばよ……!」
咄嗟に間合いを詰められて驚くボブゴブリンの片割れに対し、謙二は無慈悲に剣を横に振るう。
「アッ、ガァ……!」
ボブゴブリンの片割れは、その一撃を受けて身体が真っ二つにされる。
少ししか断末魔をあげる事が出来ず、そのまま息絶えた。
(今のはすごいなぁ。 謙二さん、あんなスキルを使えたんや。 さて、うちも……)
その瞬間を見た美波は、謙二の攻撃に感心しつつ、もう片方のボブゴブリンに向けて魔法系スキルを発動する。
「電撃!」
「ガァっ!? アガガガァァァ!!」
次に美波が使った魔法系スキルは、雷属性の電撃だ。
火炎弾よりも必要なチャージ時間が長いが、その分どの初級属性魔法スキルよりも基本的な威力は高い。
そこに美波の高い魔力だ。
直撃したボブゴブリンは、激しい電撃による感電の後、黒焦げになって息絶えたようだ。
「やったな!」
「うん、やったね!」
ボブゴブリンを倒した事を喜ぶようにお互いハイタッチする。
なんだかんだでこの二人は、結構気が合うコンビみたいだ。
【カテゴリー・廃校舎、ダンジョン名:大宮泉小学校跡の攻略を確認しました。 攻略者名:坂本 謙二】
「お、専用スマホに攻略完了のメッセージが来た」
「あ、うちもや。 一時共闘やから、攻略者も個人のみになるんやね」
すると専用のスマホに攻略したと言うメッセージが受信される。
美波のいうように、今回は一時共闘という形なので、攻略した者の名前は一人のみの表示だ。
「じゃあ、早くここを出て役所に報告しよう」
「せやね。 企業所属も役所に報告せなあかんしね」
メッセージを確認した二人は、一緒に廃校ダンジョンを脱出し、近くの役所へ向かう事にする。
個人攻略者は当然だが、美波のような財閥の娘だったり、企業所属の攻略者も一度役所に報告をしておかないといけないのだ。
この辺りはすごく面倒なのだが、なりすまし防止の一環でもあるので仕方がない。
それでも効果はあるのかと聞けば、そうでもないのだが……。
さて、役所にて二人でダンジョンクリアの報告と一時共闘の旨を伝えたのだが、財閥の娘と一緒に居る謙二を見た対策庁のスタッフが驚きの声を上げていたのはまた別の話としておこう。
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