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 エドガーと名乗った支部長ギルドマスターは、わたしの正面へと腰掛けると、傍で立っていたミューアさんのほうに顔を向けた。


「ミューア、来たばかりですまないが、少し席を外してもらえるか」


 エドガーさんの言葉に、わたしは目を瞬かせる。不思議に思ったのは、わたしだけではなかったようだ。


「……よろしいのでしょうか?」

「ああ、良いんだ。後は私の方で対応させていただこうとおもう。ミューアは別の仕事に移ってもらって構わない」


 困惑の表情を浮かべるミューアさんに、そう返すエドガーさん。ミューアさんは、わたし達とエドガーさんを代わる代わる見やった後、


「……了解しました」


 と、言った。


「私はこれで失礼させていただきます。レナ様、ユリウス様、リーナ様、ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました。お仕事、頑張ってくださいね」


 わたしの言葉に、ミューアさんは少し目を見開いた後、ありがとうございます、と微笑む。そして、部屋を出ていった。


 ドアがぱたんとしまった後、エドガーさんが口を開いた。


「もう、マントは外してもらって大丈夫ですよ、()()()()()()()()()

「……」


……え?


「……どういうことでしょうか?僕の名前はレナですが……」


 悪足掻き(わるあがき)のようにしらばっくれたわたしの様子に、エドガーさんが苦笑した。


「私でなかったら分からなかったと思うのですがね。お二人と一緒にいらっしゃると聞いた時点で、なんとなくの予想はついておりました」


 そう言って、屈託なく笑うエドガーさん。そんな彼の様子を見て、誤魔化すのは無理そうだと判断した。


……それにしても、お二人っていうのはリーナとユリウスのことだよね。どういうこと?


 わたしが二人を見ると、彼等は苦笑していた。


「マスター……。やはりお分かりでしたか……」

「お嬢様、申し訳ございません。恐らく、マスターには確実にバレているかと……」


……うん、やっぱりそうだよね。エドガーさんには内緒にしててもらえるように頼まなきゃ。


 わたしは諦めてマントのフードを外した。


「金髪に紫の瞳……。マントを被ったのは英断でしたね」

「そうでしょうか?」


 エドガーさんから発せられたその言葉に、わたしは首を傾げた。


「ええ。ほぼ確実に狙われるかと思われます。このあたりはゴロツキや追い剥ぎなども多いですからね」

「そうなんですか?」

「はい。この領地は貧民も少ないとはいえ、いない訳ではないですからね。ユリウス殿もリーナ殿も、もちろんウェルストン公爵令嬢もお強いのは分かっておりますが、それでも危険は少ないほうが良いでしょう」

「なるほど……」


 納得してそう返事したところで、わたしはレナとしても、セレスティーナとしても自己紹介していなかったことに気づいた。


「ひとまず、名乗らせていただきますね。わたしはセレスティーナ・ウェルストン。公爵令嬢です」


 支部長ギルドマスターであるエドガー様に言うことでもないかもしれませんが、と前置きして、


「こちらでは、身分などの諸々を誤魔化すためにレナとして申請させていただきました。……何故エドガー様は、わたしがセレスティーナ・ウェルストンだと気づかれたのでしょうか?これからの参考にするためにも、ぜひ教えていただけませんか?」

「もちろんです。それと、ウェルストン公爵令嬢。私のことはエドガーで良いですよ」

「では、エドガーさんと呼ばせていただきますね。わたしのことも、名前で呼んでくださって構いません」

「分かりました。……貴女様が公爵令嬢であると気付いた理由でしたね」


 大したことではありませんよ、とエドガーさんは言った。


「セレスティーナ様の変装の方法はお見事でした。しっかり顔や体型が隠れるマントをつけていっらしゃいましたし、声も男子にしてはやや高めですが、年齢を考えるとそこまでおかしいほどではありません。恐らく、私以外は気づかないと思います」


 ならばどうしてなのだろうか。


「リーナ殿とユリウス殿、お二人が領主様と会った際に立ち合っていたのが私だったのです」


 私はもう一度ユリウスとリーナを見た。


「どういうこと?」

「私三年前、Aランク冒険者になりました。後日、旦那様にお会いしたことはお話しましたよね?」

「ええ。今さっき聞いたわ」

「旦那様からお嬢様の侍女とならないかとお誘いいただいたのがその際だったのです」

「ああ、そういうこと……。理解できたわ、ありがとう」


 リーナはお父様からわたし……いや、三年前ならばまだ前世の記憶を取り戻す前だろうから、セレスティーナの侍女にならないかという勧誘を受けて、それを受けたのだ。


 それをエドガーさんが見ていたというのなら、リーナが共に行動しているわたしがその領主の娘(公爵令嬢)だと判断するのは当然だろう。


 恐らく、ユリウスも同じなのだと思う。


「申し訳ございません、セレスティーナ様。盲点でした」

「いえ、ユリウスが謝る必要はないのだけれど……。予測もできないことだったのだし、仕方がないわ。それに、よく確認していなかったわたしも悪いもの」


 わたしとリーナ、ユリウスの会話をニコニコと好々こうこうや然として眺めていたエドガーさん。


「……エドガーさん、わたしがセレスティーナであるということは、この場だけの秘密にしていただけないでしょうか?」

「……良いでしょう。自分が誰なのかを隠すために性別を誤魔化し偽名を使っているのは分かっておりますから」

「ありがとうございます」

「いえ。……では、次のご予定もおありでしょうから、今回のテストに関する話を始めたいと思います。よろしいですか?」

「ええ、お願いします」











次回の更新は、来週あたりになるかと思います。

よろしくお願いします。

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