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お久しぶりです……!
「このままAランクテストは受けられますか?」
壁の魔石に触れてこの場に横たわる五体の魔獣を消したミューアさんが、そう尋ねてきた。
「いいえ、ここまでにします」
「かしこまりました。では、部屋を移させていただきますね」
「はい」
歩き出したミューアさんについて、わたしもこの部屋から出る。後ろから、リーナとユリウスもついて来る気配がした。
移動している間、わたしは先程から気になっていたことを質問してみることにした。
「ミューアさん」
「はい、何でしょうか?」
「先程の魔獣達はどうなるんですか?ミューアさんが魔石に触れたら姿が消えていましたが……」
「ギルドの方で処理させていただくことになります。あの魔石に魔力を流すと、魔獣だけが解体のために移動させられることになっているんです」
消えたと思ったら、移動させられただけだったらしい。
……えー、何それ。やっぱり面白そう。
色々と便利そうな転移魔法について聞いたことで、わたしの中での転移魔法に対する興味が跳ね上がっている。
……ん、でも、わたしは移動方法に関しては自分なりにやれてるし、そこまで需要はないのかな?
そう考えると、わたしの考えた移動法はやはり正しいものではないのかもしれないと気づかされた。何か支障があった訳でもないので良いのだけれど。
「レナ様の場合は、魔獣の数も多くなりましたし、最初のギガロークなどは体も大きいので、少し時間がかかるかもしれませんね」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いえ。……今回は、こちらの部屋を使わせていただきますね」
ちょうどこれから使うことになる部屋に到着し、わたし達はその中に入った。
「私は今から登録に必要となるものを用意して参りますので、あちらに座ってお待ちいただけますでしょうか」
「はい、大丈夫です」
わたしが頷くと、ミューアさんは一礼して出ていった。わたし達はソファに座る。
「……ねえ、二人共。ミューアさんはどのくらいでここに戻ってくるのかしら?二人がテストを受けた時はどうだった?」
「私の時には、十分もかかりませんでしたね」
「私の時もそうでした。ですが、今回は、想定外のことが起きましたからね。セレスティーナ様は普通に倒していらっしゃいましたが、普通の者であればかなり手こずりますし、最悪負けるでしょう」
そのユリウスの言葉に、リーナが次いで頷いた。
「確かにそうですね。そう考えれば、お嬢様の場合は少し時間がかかるかもしれません」
「……わたしも、どうして魔獣が五体も出てきたのかは気になっていたのよ。どうしてなのかしら?……まあ、無事に倒せたから良いのだけれどね」
あれで負けていたら、笑い事では済まなかったのだけれどね、と付け加える。
……まあ、ミューアさんは止めようとしてくれてたし、そうなっても自業自得なんだけどね。
テストの内容については一度頭から放し、空いている時間で今自分の中で抱えている疑問について考えることにした。
今回のテストで気づいた不可解なことは、全部で二つ。
一、絶体絶命の状態で、何故か魔獣が魔法を使ってこなかったこと。
二、ユーアライゼを仕留めた時、何かが身体の中に流れ込んできたこと。
実は、二つ目の身体に流れ込んできたものについては、うっすらと分かっている。魔力だ。
先程戦闘後の自分の身体の状況を確認してみたところ、少しだけ魔力の残量が増えていた。全体の十パーセントくらいなので、本当に少しなのだけれど。
普通に剣で攻撃する時には起きないことである上に、ユーアライゼ特有の現象という訳でもないと思う。もしそうであるならば、ユーアライゼについて載っていた本に書かれていなければおかしいからだ。
……やっぱり、剣を魔力で覆ったのが原因なのかなぁ。
一つ目にしても、二つ目にしても、これから何度か色々な条件で同じことをしてみて、その結果を比べる必要があるだろう。
敵が魔法で攻撃してこないのも、魔力が身体に入り込んでくることで、結果的に残量が増えるのもわたしにとっては問題ない。むしろ、都合が良い。
……魔力が入ってくる違和感には慣れなきゃいけなくなるけどね。まぁ、それもなんとかなるでしょ。
わたしの中でそう結論を出し、更にもうしばらく時間が経つと、部屋の扉がノックされた。ミューアさんが戻ってきたのだろう。
そう思ったわたしだったけれど、部屋に入ってきたのはミューアさんだけでなく、彼女の隣には、一人の男性が立っていた。
年齢は、恐らく四十歳後半ぐらい。目元に走る傷が印象的だった。ギルドの職員の方だろうか。
わたしがそう考えていると、彼は微笑んで頭を下げた。
「レナ様、はじめまして。私は冒険者ギルドの支部長です。……まぁ簡単に言ってしまえば、ここの責任者ですね」




