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 わたしが普段使っている、椅子の乗り方は、以下の通りだ。


 一、空間魔法で空気の板のようなものをつくる。イメージはヴォルーゾンと戦った時に使った階段のような

   ものだ。

 二、その板を足場にして椅子に座る。


 この方法で、高い椅子にも本当に簡単に座ることができるようになる。


 誰かにいちいち持ち上げてもらうよりも楽だし、時間もほとんどかからないのだ。傍から見れば、空中に立っている変な人になるけれど、足の方を見なければ自然に腰掛けているようにしか見えないはずである。


 ただ、これは周囲に誰か人がいる時には使えない。私が魔法を使えるということを知られてしまうかもしれないからだ。


……お父様とかは嬉々として持ち上げてくれるからね。何がそんなに楽しいのかは分からないけど。重くないのかな?


 基本的にはリーナとユリウス――主にユリウス――が持ち上げてくれるのだが、食事の際などにわたしがお父様よりも遅く食堂についた時にはわざわざ立ち上がってまで椅子に座らせてくれる。


 お父様だけでなく、隣に座る兄様が上げてくれることもある。リーナもユリウスも特に止めないから遠慮せずやってもらっているけれど、ずっと不思議に思っていた。


 わたしがセレスティーナになった時には隣に座っていたのはウィリアム兄様だったのに、最近は頻繁に席を交換し合っている。


……兄様方、本当に何がしたいんだろう、あれ……。気分転換でもしてるのかな?


 脱線しまくっていたわたしの思考は、ユリウスの声によって元に戻された。


「レナ様、代筆の必要はございますか?レナ様は字は……」

「ああ、大丈夫。書けるよ。ありがとう」

「そうでございましたか。流石ですね」

「……そう、なのかな?」


 そのように、「流石だ」と言われるほどのことなのだろうか。


 わたしは首を傾げながら、手元の紙に視線を移した。紙の数は全部で五枚。


「えぇっと、?僕は何をすれば良いのかな?教えてもらっても良い?」

「レナ様が記入する必要があるのは、主にこちらです。その他は名前を書くだけで良かったと記憶しています」

「ありがとう」


 まずわたしはペンを取り、一枚目の紙に目を通した。項目は全部で七つ。その内のいくつかに記号が描かれていて、「記号がある箇所は必須項目です」と注意書きがあった。


「えーと、僕が書かなければいけないのは、名前と登録領地、魔法が使えるかどうか、そしてこの魔獣との戦闘経験についての欄だけで良いんだよね?」

「はい。恐らくそれで大丈夫かと思います」


 わたしが一つ一つの項目を指で示して確認すると、ユリウスとリーナが頷いた。わたしは持っていたペンにインクをつけて、紙に書き出した。


「名前はレナ、登録領地は、……ウェルストン公爵領、で良いのかな?」

「良いと思いますよ」

「セ……レナ様がご成長なされば、他領地におもむかれることもあるかもしれませんが、適性検査はこの領地で行うことになると思います」

「ありがとう。……魔法は使える、魔獣との戦闘経験はある、討伐した魔獣は……何を書けば良いんだろう……」


 テストをBかCランクで辞めるのであれば、Sランクであるヴォルーゾンなどと書く訳にはいかない。それぐらいは流石に分かる。


 わたしはリーナとユリウスを見上げた。


「ワームアゴットやブログフォーンあたりで良いのではないでしょうか?」

「そうですね。あれならばちょうど良いランクかと思います」

「分かった。……これで良いのかな?二人共、確認しておいてもらって良いかな?」


 わたしはユリウスとリーナに書き終えた紙を手渡し、書き漏らし等がないかを確認してもらった。


「大丈夫です。特に問題はないかと」

「ええ。私もそう思います。……ですが、お、いえ、レナ様はとても美しい字を書かれるのですね。驚きました」

「美しい……?そうかな?……でも、ありがとう」


 返された紙をテーブルの上に置き、わたしは残りの紙に名前を書いていく。


「……あれ、これは?」


 残りの一枚は、名前を記入する欄がなかった。今までの紙とは違い、長々とした文が書かれている。


「ああ、それは、テストの流れが書かれたものです。簡単に言えば、冒険者となるための手順が載った説明書、ですね。先程私達がご説明させていただいた内容とほとんど同じことが載っていますが、お読みになりますか?」

「……一応読んでおこうかな。どうせ時間はあるんだから」


 そう言って、わたしは早速それを読み始めた。


……ふんふん。特に不安なところはなさそう、だね。大丈夫そうかな。


 全てを読み終えたわたしは、紙をテーブルの上に戻した。


「……もう読み終えられたのですか?」

「うん。そこまでの量でもないし、流し読みだから」


 なぜか驚いている様子のリーナとユリウスにそう返事をして、わたしは紙を揃えた。


「……なあ、あいつ、冒険者希望なのか?」

「そりゃそうだろ。あそこにいんだから」


 近くのテーブルから、そんな会話が聞こえてきた。ちらりと視線を向けると、五人ほどの冒険者らしき人がこちらを見て話している。会話に混ざってはいないけれど、他のテーブルの人達もちらちらとわたし達の方に意識を向けているのが分かる。


 五人の男性達は、わたしが聞いていることを知ってか知らずか、話を止める気はなさそうだ。








 

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