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「こう言ってはなんですが、よく倒せましたね。三人編成のBランクパーティでは厳しかったのではないですか?」
わたしの言葉に、アンディーは苦笑する。
「ハハ……まあな。たまたま、弱体化していた群れを見つけたんだ。そうでもなかったら倒せなかっただろうな」
「……まあ、これは預かっておきますね。もし何か皆さんに用事があった時には魔力を込めますので、その時はよろしくお願いします」
「ああ。そん時は俺達はここに来ておくから」
「はい」
「じゃあ、俺達はこれで失礼するわ。改めて、今日は迷惑かけて悪かったな」
「いいえ」
アンディー達三人がこの場を去り、わたしは席を立った。
「……リーナ、ユリウス。少し席を変えようか」
「はい」
「分かりました」
わたしは今から冒険者登録をするのだ。
その相談をリーナ達としたかったわたしだったけれど、わざわざアンディー達がいなくなって三人になったわたし達が広々とした七人用のテーブルを使う必要はないと思ったわたしは、ちょうど空いていた三人用の丸テーブルに座った。
冒険者登録をするとはいえ、急ぎめに終わらせないと夕食前の予定がかなり詰まるのではないだろうか。
……三時間くらいで終わらせられるかな?
わたしはリーナとユリウスが座ったことを確かめると、テーブルと椅子の周囲を空間魔法を使って外と遮断した。
正確に言うと、わたし達の周りを空気でできた壁で囲ったのだ。イメージは、大きい透明な箱である。
こうすることで、わたし達の発する音が外部には聞こえなくなるのだ。そして、周りの音も聞こえなくなる。屋敷で習得した時に実験済みだ。
……というか、魔法の練習をしてたら周りの音が聞こえなくなって、この活用法を思いついたっていう方が正確なんだけどね。
二ヶ月ほど前に、アトモスフィアという空気の層で透明な箱を出すという魔法を見つけた。用途は特に書かれていなかったけれど、大小を自由に調節できるとだけ載っていた。
アトモスフィア自体はさほど難しいものではなく、中級魔法なのだが、箱の大きさによって消費する魔力の量が結構変わるらしい。
そこでわたしがこの魔法をいろいろな規模で試していたところ、自分がすっぽり包まれるくらいの大きさになった時、聞こえていたすべての音が聞こえなくなったのだ。
かなり驚いたけれど、その原因はすぐに分かった。そんな訳で、その特徴を理解してからは、あとは使い方はすぐに思いつくことができた。
……便利だよね。いろんなことに使えるし。
ちなみに、先程アンディー達を動かす時に使った魔法も、このアトモスフィアの応用だ。上だけを開けて、水槽のような形にしていたので、音は普通に聞こえていたと思う。
初めてする使い方だったので、成功するのかは分からなかったけれど、何とかなった。
……まあ、魔法は、なれるまではイメージが大事だからね。慣れればそれさえ特にする必要はなくなるけど、最初の方は頭の中で想像さえできていればあんまり問題ないのかも。
そんなことをわたしが考えている間に、リーナとユリウスはわたしが使った魔法に気づいたようだ。
「レナ様、これは?何も音が聞こえなくなったのですが……」
「今は普通に話してもらって大丈夫よ。協力してくれてありがとう。……これは魔法よ。アトモスフィアって知っているかしら?」
「アトモスフィア……中級空間魔法、でしょう」
「そう。これはそのアトモスフィアを応用したもので、わたし達の声を外に漏らさないようにするために使っているのよ。ついでに外の音も聞こえなくなるけれど、向こうに読心術でも持っている人がいなければ、わたし達の会話は聞こえないから、自由に話してもらって大丈夫よ」
わたしは簡単にアトモスフィアの説明をする。二人が今の状態に納得したことを確かめ、本題に入ることにした。
「ねえ、二人共。今からギルドでのここでのわたしの設定について色々と決めておきたいことがあるのだけれど、良いかしら?」
「はい」
「もちろんです、お嬢様」
「ありがとう。……まず、名前はレナ。性別は男子でいくわね。年齢については、アンディー達に言ってしまったから、それと同じ八歳で」
そこまで言ってから、わたしは気になっていたことを尋ねた。
「……冒険者登録の時は、書類とかは書く必要はあるの?」
「はい。ただ、書類と言っても簡単なもので、名前や年齢など、最低限のことのみを書くようになっています」
「個人情報における必須項目は名前だけで、年齢や性別は必ずしも書く必要はなかったと記憶しています。この冒険者ギルドは良くも悪くも実力主義ですので」
「そうなのね。……ごめんなさい、冒険者登録の時に何をするのか、大まかに教えてもらっても良いかしら?」
わたしにはよく分かっていないところが多いので、今のうちに聞いてある程度理解しておいた方が良いだろう。
……現冒険者の二人なら、何をするかも分かってるだろうしね。
「大丈夫ですよ、セレスティーナ様」
「もちろんです」




