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わたし達が壁の近くからヴォルーゾンが倒れる場所へと戻ると、リーナやユリウス、そしてわたしがヴォルーゾンを倒すまで戦っていた人達が、その死体の解体を勧めていた。
わたし達が近づいていくと、リーナとユリウスが振り返る。
「おじょ……レナ様」
「リーナ、ユリウス」
わたしは、彼等のすぐ近くまで近づき、空いていたスペースにしゃがみ込む。
「ありがとう。先にやってくれていたんだね。……皆さんも、ありがとうございます」
わたしがお礼を言えば、彼等は笑って返事をしてくれた。
わたしもそのまま、彼等と解体を進めることにする。今の時点で解体は大分進んでいるので、始めてからそれ程経たずに終わりそうだ。
「……よし、終わりましたね。皆さん、ありがとうございました。……ところで、これ、どうやって分けましょうか?」
「……?分けてもらえるのか?」
「え?」
「え?」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げて見つめ合うわたしと皆さん。
そんなわたしに、隣にいたユリウスとリーナがあることを教えてくれた。
「……レナ様、通常、魔獣とはそれを倒したものが解体した素材に関する権利を得るのです」
「ヴォルーゾンのようなAランク以上の魔獣は出現率も低く強いため、倒されることが滅多にありません。その分、倒された時の素材の価値が高くなります」
彼等が言うには、魔石の質も良く、更には貴重なヴォルーゾンのような魔獣からとれる素材は、倒した人がそれらを独占することが多いらしい。
「う、ーん?なんとなく分かったけれど……それなら、今回の場合はどうなるの?」
リーナとユリウスがせっかく教えてくれたもにも関わらず、結局分かっていない。理解はできていると思うけれど、結局その知識を活かせていないのだ。
魔獣は倒した人が素材に関する知識を得るということは分かった。むしろそれは当たり前だ。
……だって、やっとの思いで倒した魔獣の素材が、他の人にかっさらわれていったら「え?」って思うよね。それはわたしでもそう。
けれど、そのことが分かっていても、どうして今回わたしが素材を分けようとしたことに対して不思議がられるのかが全く分かっていないのだ。
「今回は、レナ様に素材を受け取る権利がありますね」
「そう、なるの?」
わたしが未だに不思議そうな顔をしているのを見て、わたし達の会話を黙って聞いていた皆さんが口を開いた。
「……いや、だって……ヴォルーゾンを倒したのはあんただろ?」
「そうそう」
わたしはまたしても首を傾げる。
「……え?いえいえ、そんなことないと思いますよ?」
そんなわたしの言葉に、彼等が意味が分からないと言いたげな驚いた表情を向けてくる。
……あ、説明したほうが良いのかな?
「だって、皆さんは、わたし達がここに来るまでヴォルーゾンと戦っていらっしゃったじゃないですか。全部の首を切ったのは確かにわたしかもしれないですけれど、そのきっかけを与えたのは皆さんです」
唖然としている彼等に、皆さんが戦っている音を聞いてわたしはここに来た訳ですし、と付け加える。
もしかしたら、わたし一人だけでもヴォルーゾンは倒すことができたのかもしれない。けれど、実際はそうではないし、たらればの話をしていても意味がないのだ。
「……何か、あんたは面白い考え方をするんだな。そんな言葉、初めて聞いたよ」
「そう言ってくれるのはありがたいが……俺達なんて、大して役に立ってないぞ?」
「ああ。やっぱり、ヴォルーゾンの素材はあんたが手に入れた方がいいと思う」
「そりゃ、素材は欲しいが。ヴォルーゾンから素材が得られることなんて、ほとんどないからな」
「まあな。それは俺達だって一緒だよ。でも、今回は俺等がもらう訳にはいかないさ」
……これは……、受け入れてくれそうにない、かな?でも、自分が倒した魔獣の素材をどうするかは自分で決めて良いんだよね?
それは依頼を受けて魔獣の討伐をした時などは別だが、わたしはそうではない。リーナや皆さんの言葉を聞き入れるのであれば、今回はその素材をもらえるのはわたし、ということになる。
けれど、怪我をしてしまった人もいるし、せっかく戦ったのに何も得られるものがなかった、ではあまりにも悲しい。だから、わたしは一度素材をもらった上で、その後に分けることにした。
「……じゃあ、これらの素材は僕がもらってしまいますね。そして、解体を手伝ってくださった皆さんに、皮を分けたいと思います。自分の素材はどう使ってもわたしの自由でしょう?」
「ま、まあ、そうなんだがな……。いいのか?」
「もちろんです」
わたしのこれは譲らない、という気持ちが伝わったのか、皆さんはしばらく顔を見合わせた後、苦笑しながらわたしから素材を受け取ることを承諾してくれた。




