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 わたしがそう声をかけると、壁によりかかるようにして腰をおろしていた三人はゆっくりと顔を挙げた。とはいえ、わたしの背はそう高くないので、下に向けていた顔を正面に向けただけなのだけれど。


「……ああ、お前か」

「……大きな怪我は、なさそうですね」


 凄く疲れていそうな表情で、なんだかげっそりしている。「大きな怪我」がないだけで、身体には擦り傷や切り傷がいっぱい見えるし、わたし達がここに来るまでにヴォルーゾンの攻撃を食らったのか、身体も濡れている。満身創痍といった感じだ。


 それでも、Sランクの魔獣であるヴォルーゾンと戦ったということを考えてみれば、まだこれくらいで済んで良かったと言えるだろう。


……ん?「濡れている」?


「ちょっと待ってください。貴方方、ヴォルーゾンからの水魔法の攻撃を受けたんですよね?毒を受けたわけではありませんよね?!」


 もしそうだとしたら、無事だとは言えなくなる。ヴォルーゾンの毒には致死性はないけれど、もし毒を受けているのであれば、何かしらの対処をしなければいけないだろう。


 そう考えて少し焦ったわたしだったけれど、その心配は杞憂だったようだ。わたしからの質問を受けた三人の内、リーダー格の一人が首を横に振る。


「いや……。毒ではねえよ。多分な。ただの水だ。あいつにとっては、ろくな攻撃もできない俺等のことは、警戒する対象にもならなかったんだろ」


 その答えに、ひとまず安心したわたし。


 彼等への怒りが消えている訳ではないけれど、重症を負って欲しい、とまでは思っていないのだ。


「……お前は、何しに来たんだ?俺達のことを笑いにでも来たのかよ?!」

「お、おい、ジャン……。やめろよ」


 「ジャン」と呼ばれた、「リーダー」の隣に座っていた彼の言葉にわたしは首を傾げる。


「?違いますよ。何故そんなことをしなければいけないんですか?」

「な、なんで、って……そりゃ、あんだけ偉そうな態度を取ってあんた達のことを悪く言ってた俺達が、こんな様になってるんだから」

「ああ、そういう……」


 少し怯んだようにそういった彼の言葉に納得する。けれど、不正解だ。


「もう一度言いますが、違います。今わ……僕がここに、貴方達のところまで来ているのは、貴方達が三人だけ他の皆さんと離れたところで座っていたからです」


 呆気にとられたような表情をしている彼等に、わたしは「もちろん、貴方達に対して怒りを感じていない、ということはないですけれど」と付け加える。


 ジャンが項垂れたのを見て、わたしは話題を変えることにした。


「……ところで、勝負はどうします?僕は続けても良いんですが……」


 スタートしてから決まっていた二時間が過ぎるまで、残り二十分くらいしか残っていないので、今から勝負を再開したとしても、わたしはヴォルーゾンの解体だけで時間が過ぎるだろう。


……まあ、それは解体をわたしがしても良いと皆さんが言ってくれたらになるんだけどね。


 もしそうならなかってしてもこれから狩れるのは二匹ぐらいだと思う。それでも多分勝てるとは思うけれど。


 そう考えているわたしの前で、「リーダー」が顔を横に振った。


「……いや、これで終わりでいいさ。俺達が手も足も出なかったヴォルーゾンを一人で相手取って、更には倒しちまったっていう時点でお前が俺達よりもずっと強いってことは明らかだしな」


 意外な展開に、少し目を見開くわたし。


「お前たちも、それでいいだろ?」

「……ああ」

「……そう、だな」

「それで良いんですか?」


 先程から人が変わったかのように落ち着いていた「リーダー」や、ジャンの言葉を止めようとしていたもう一人の男の人だけならともかく、ジャンまでもが素直に頷くとは思ってはいなかった。


 今までずっと感情を表に出さずに無表情のままで話していていたためか、わたしが驚いていることを察したのだろう。ジャンがばつが悪そうに頭をかいた。


「……あんたが驚く気持ちは分かるさ。今さっきのは……大見得張ったくせして、その相手に助けられたっていうことが恥ずかしくて、なんというか……八つ当たりしちまったんだ。……その、悪かったよ。ギルドでのことも含めて」

「……!」


……つくづく意外。この人……ジャンさん、こんな簡単に謝ってくるような人には見えなかったんだけど。


 厳密に言うと、わたしが謝ってほしかったのは、わたしに対してではなくリーナとユリウスに対してなのだけれど、先に謝られてしまった以上、わたしも謝っておいた方が良いだろう。


 わたしだって、先程結構失礼な態度を取っていたと思うし、魔法だって使ったのだから。


……まあ、先に失礼なことを言ってきたのは無効だし、わたしだって腕を掴まれたけどね?


「……いえ、大丈夫です。こちらこそ、すみませんでした」


 驚きながらもわたしも謝ると、残りの二人も続けて謝ってくれた。


「……俺も、悪かった」

「……すまなかった」

「先程も言いましたけれど、僕は別に怒っていないんですよ。わ……僕が貴方達に謝って欲しいのは、むしろリーナとユリウス……先程僕の後ろにいた二人に対してなんです」

「……ああ。あのお二人さんには後で謝るよ」

「お願いします」


……ひとまず安心、かな?


 まだ勝負の結果は分かっていないけれど、今の雰囲気だと、勝っても負けてもそこまで悪いことにはならない気がする。


 あとはもう、この勝負の勝ち負けを決めるだけだ。


「じゃあ、あとは勝った魔獣を換金するだけですね。とりあえず、ヴォルーゾンの解体をしてしまいましょうか。」



読んでくださり、ありがとうございました!

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