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更新が凄く遅れてしまい、本当にすみませんでした!これからも不定期になってしまうかもしれません。
「すげえじゃねえか、坊主!」
「おいおい、お前、その年でなんでそんなに強いんだ⁉」
わたしは今、五人程の冒険者の人達に囲まれていた。その理由は、わたしが一人でヴォルーゾンを倒したから。
「あ、あはは……。皆さんも、大きな怪我はなさそうで、安心しました」
どう反応すれば良いのか分からず、乾いた笑みを浮かべるわたし。
******
あの後―――
ヴォルーゾンの首元にまで上ったわたしは、足元の「階段」を消した。重力に則って落下する勢いに合わせて、頭の上で構えた剣を振り下ろした。
当然の如く、切断されるヴォルーゾンの首。身体が大きい分、首も太いので、完全に切るためには結構力が必要だった。だからこそ、わたしは全体重をのせることができるタイミングで足場を消したのだ。
わたしは高さおよそ十メートルの場所から落下しながら、地面に接触するまでの間に魔法を使う。
「……炎球」
わたしが発生させた炎は、想定通りに切ったばかりの首について傷口を燃やしていく。火が広がらずに、傷口だけに留まっているところまでイメージしたまんまだ。ヴォルーゾンが、悲鳴のような声をあげる。当然だ。自分の体を切られた挙げ句、更にそれを燃やされているのだから。
……ごめんなさい、ごめんなさい!すぐ終わらせるから!
聞こえもしないのにヴォルーゾンに向けて謝りながら、わたしは上へ伸びている首元を軽く蹴って飛び上がる。
……いや、魔獣にも感情はあるんだから、痛いものは痛いと思うんだよ!最終的に倒すことは変わらないけど、できるだけ苦しい思いはさせたくないのに……。まあ、危害を加えている側のわたしが言えることでもないか。
ヴォルーゾンを倒すための時間を最小限にしたいこちらとしては、一度地面に降りてまた階段を作る動作も無駄に思える。
だからわたしは、目の前にあった首の根本を蹴って身体の向きを変えながら飛び上がった。そして、もう一度剣を振り下ろして首を落とす。わたしが魔法で切り落としたばかりの首を燃やしたその直後、急に近くに水の塊が現れた。
「!」
どうやら普通の水で、毒が含まれているという訳ではないようだが、今になってただの水を出してきた理由が分からない。ヴォルーゾンの考えが読めなかったわたしは、一度ヴォルーゾンの近くから離れることにした。
地面に立ってヴォルーゾンを見上げていると、水の塊が二つに分裂した。そして、上の方に上っていく。
……ん?ってまさか……。
ヴォルーゾンがしようとしていることが何なのかに気付く。その予想通り、二つの水はヴォルーゾンの首元……わたしが先程火をつけ、未だそれが消えていないところへとぶつかっていった。
「……消える、かも」
当たり前のことだけれど、火は水に弱い。魔法でもそれは変わらないので、わたしが出した火も、それなりの量の水をかければ消えてしまうのだ。
蒸発して水が消えると、やはり首の傷口にあった火は消されていた。再生してしまうかもしれないと少し焦ったわたしだったけれど、十数秒が経っても新しい首が生えてくることはなかった。心なしか、ヴォルーゾンも驚いているような気配がする。
……もしかして、傷口が開いていないと首の傷は治らないのかな?
そう考えれば、今の状態に説明がつく。もしもその通りだったとすると、一度止血をして傷をふさいでさえしまえば、もう再生しないのだろう。
けれど、たとえそうだったとしても、ヴォルーゾンが自分でまた首を切って、傷口をもっと深くすればせっかくの火も意味がないだろう。今のヴォルーゾンの様子を見れば、そのことを気付いているとは思えないけれど、油断は禁物だ。
……ヴォルーゾンもわたしのことを認識している暇はなさそうだし、今なら魔法、使えるかも。
そうと決めればすぐに行動に移さないと、だ。早くしないとヴォルーゾンも更に警戒してしまうかもしれないし、いつ戦闘態勢に戻るかも分からない。まだ食らってはいないけれど、毒入りの水を使ってくるかもしれない。そうなる前に終わらせたい。
「……慈悲の祝福」
わたしが使った慈悲の祝福は、ヴォルーゾンの首を残り七つ分を全て切り落とした。首に風の刃が当たる寸前でその気配に気付いたらしいヴォルーゾンだったけれど、打つ手は何もなかったらしい。その直後、抵抗する間もなく殺された。
……最初の時点でこれを使っておけば良かったかも。……まあでも、最初の風刃も避けられてたし、どうせ同じ結果だったかな?
慈悲の祝福によって発生する風の刃の移動速度は風刃よりも速い。もしかすると、ヴォルーゾンでも避けられなかったかもしれないけれど、それは今更話しても仕方のないことだ。最終的には倒せたのだから、終わりよければ全て良し、ということで良しとしよう。
******
そんな風にしてヴォルーゾンを倒したわたしだったけれど、自分よりもずっと大きな人達に囲まれるのは勘弁して欲しい。彼等が友好的な雰囲気で接してくれている分、先程のようにいきなり敵意を向けられるよりはまだ良いけれど。
そう考えていたところで、少し離れたところにいる三人が目に入った。わたしは周りを囲む人達に向けて「すみません」と一言断ってから彼等の方へと歩いていく。
「……あの。大丈夫ですか?怪我とか……」




