表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/116

75





切り落とした数秒後に再生したヴォルーゾンの首。


「……再生能力が高いっていうのは、こういうことね」


 首を切っても再生するなど、聞いたことも見たこともない。前世ではもちろん、この世界でも倒してきた魔獣の中で再生する魔獣には遭遇してこなかった。


 ただし、ヴォルーゾンが不死身ではないということは、何か殺す手段があるということだ。小さく呟いて苦笑したわたしは、首を再生させないようにするための方法を考え始めた。


……そういえば、ギリシャ神話でもヴォルーゾンと似たような生き物がいたような……。


 確か神話では、首を切った後に松明の火でその傷を燃やすことで再生することを防いでいたはずだ。わたしも試してみる価値はあるかもしれない。


……今だったら魔法で火を出すこともできるしね。もし水で火を消されたとしても、傷口さえ塞げればどうにかなるはず。


 そう考えたわたしは、もう一度風で首を切ろうとした。けれど、ヴォルーゾンは先程の魔法がわたしの仕業だと何故か分かっているようで、怒りに燃える九対の瞳をこちらに向けている。


……なんで分かっちゃうんだろうね?魔獣の本能とかそういうこと?


 先程の風刃ウィンドカッターは、不意打ちで直前まで気づかれることがなかったからこそ成功したようなものだ。今の状態でもう一度やったとしても警戒されているために防がれるか避けられるかのどちらかだろう。


 わたしは一つ溜め息を吐くとしまっていた剣を取り出した。魔法で切断することができないのであれば、剣を使うしかない。背は低いけれど、今のわたしにはヴォルーゾンの首元にまで上がる方法があるのだ。


 ヴォルーゾンが反撃を止めている今の内にと次々と攻撃を仕掛けている男の人達の間をぬって、駆け出したわたしはヴォルーゾンに近づいていく。


……攻撃をされてるんだから、そっちの方に意識を向けてくれれば良かったんだけどね。そんなに簡単にはいかせてくれないか。


「おい、お前、危ないぞ!」


 わたしに気づいた男の人が、驚いたような声を出してそう言った。ヴォルーゾンというSランクの魔獣にわたしのような子供が向かっていったことに驚いたのだろうが、ありがたいけれど心配されるほどわたしは弱くない。むしろ心配するならまず自分の心配をしてください、と言いたい。


 わたしは声をかけてきた男の人に返事をすることはなく、足を止めずにヴォルーゾンの方へと進んでいく。


 その時、ヴォルーゾンが魔法を使い始めた。何もなかったところに水の塊が現れる。これまで魔法を使っていた様子はなかったのに、どういう心境の変化だろうか。ヴォルーゾンの魔法によって出された水は、そのままわたしに向かってきた。


「!」


 向かっていくるとは言っても、それ程の速さではない。避ける分には問題無さそうだ。けれど、水の大きさが意外と大きい。わたしがすっぽりと埋まりそうなくらいには大きい。


……うーん、避けるとなると結構動かされるかも?どうしよう?


 見たところ、色は普通の水と同じ透明なので、毒が含まれている訳ではなさそうだ。ヴォルーゾンも今は様子見のつもりなのだろう。本当にわたしをどうにかしたいのであれば、最初から毒入りの水を出してくると思うからだ。


 普通の水だけであれば、完全に避けなくても掠るくらいであればそこまで濡れることはないのかもしれない。けれど、わたしがこのまま横にずれるとわたしの後ろにいる人達が濡れることになるだろう。


 色々と考えてみた結果、避けるのはやめることにした。避けないのであればどうするのか、というと。


空間創造(ラオムクレラーレ)


 わたしは目の前に空間魔法で作り出した亜空間の入り口を広げた。亜空間はそのまま迫ってきた水を飲み込む。


 今回使ったのはもちろんこれまでに使ったことのない新しいものだ。つまり、新品無使用。今回ヴォルーゾンが出した水は全てこの空間の中に入れて、最後に纏めてどこかに捨てようと思う。その後魔法を解除して空になった空間を消す。そうすれば、誰かが濡れることもなく、毒に当たることもない。


 自分の魔法が消されたことに驚いたのか、ヴォルーゾンが動きを止めた。


……うん、そろそろ良いかな?


 そのタイミングで、わたしはまたしても空間魔法で階段のようなものを作り、それを駆け上がっている。ヴォルーゾンとの距離が近いので、結構急だ。


 この階段はわたしにしか見えない。空間とは普通透明であるからだ。わたしが見ることができるのは、自分の魔力で作ったものだから。今わたしの目には、淡く光を放つ階段が見えているのだ。


 普通、魔力がある人は自分の魔力を感じることができる。けれど、他人の魔力を見ることはできない。血縁者などの魔力が似通っている人の魔力であれば、多少は見えるかもしれないけれど。そして、今この場にはわたしの血縁者はいない。だから、わたしが他の人にも見せようと意識をしない限り、誰にもこの階段は見えないだろう。ヴォルーゾンと今まで戦っていた後方にいる男の人達はもちろん、リーナとユリウスにも。


 階段が見えていない人には恐らくわたしが急に空を駆け上がり始めたように見えているのだろう。後ろから驚愕したような声が聞こえてきた。


 わたしとしても、この「空間魔法による階段作り」を実践したのは今回で数回目だ。前からこういうこともできそう、と考えてはいたため、何回か屋敷で試したことはあるけれど、魔獣と戦っている時に使ったのは流石に今回が初めてだった。


……この魔法、集中力が切れると結構危険な目に遭うからね。


 下手をすると、足場が消える。そんなことが起きたらどうなるか。足場が消えるということは、立つことのできる場所がなくなる。つまり、そのまま地面に向かって落下する。


 だから、この階段を維持したまま他の魔法を使う時にはこの階段に魔力を供給することを忘れないようにしなければいけないのだ。


……まあ、わたしの場合、いつも空間魔法で収納しているから、常に複数の魔法を同時に使っているのと同じだし、多分大丈夫だと思うけどね。


 ちなみに、わたしが登り終えた段は、今は消えている。わたしが立っている段と、その上下それぞれ二段までしか階段は作っていないのである。

評価やいいね、いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ