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 魔獣を剣で倒していったわたしの身体には、魔獣達の返り血がたくさんついていた。かろうじて顔にかかることだけは防げたけれど、服や腕は血だらけだ。服は白かった分とても目立っている。ちなみに、剣で戦っていたリーナ達は、わたしよりも凄いことになっている。


「……まあ、この前と同じように洗うわね。とりあえず二人共、剣を貸してくれるかしら?」


 二人から武器を受け取り、魔獣の死体がなく、汚れていない場所にそれらを置く。そして、わたしの剣も並べて置いてから目の前の四つの武器に洗浄魔法をかけた。


 リーナとユリウス、わたしの三人分の剣なのにも関わらず数が四つあるのは、リーナが一人で二本の短剣を使っているからだ。両手で持って戦っていたらしい。


「……じゃあ、今から洗浄魔法をかけるわね。目をつぶるか、鼻をつまむかどうかは二人に任せるわ」


 わたしはそう言ってから鼻をつまんだ。水の中で目を開けていることはできるけれど、鼻に水が入るのは嫌なのだ。その水が最終的には消えるのだとしても。


 リーナとユリウスもわたしの様子を見て鼻をつまむ。そのことを確認したわたしは、リーナ、ユリウス、わたしの三人についた汚れが落ちるようにと洗浄魔法を再びかけた。


「よし、綺麗になったわね」

「ありがとうございます、セレスティーナ様」

「お嬢様、ありがとうございます」


 血や汚れ、汗が消えてすっきりしたわたしに、リーナとユリウスがお礼を告げてきた。


「良いのよ。むしろ、魔獣の相手をすることを手伝ってくれたのだから、これくらいは当然のことよ。こちらこそありがとう。……それじゃあ、汚れも取れたところで解体に取り掛かりましょうか」

「そうですね」

「分かりました」


 わたしはリーナに短剣を一本借りる。わたしの剣を使おうとすると、長すぎるのだ。今のわたしでは、そこまで器用には扱えない。


 わたしのものと同じかそれ以上の長さの剣を使っているユリウスは魔獣解体に慣れているのか、わたしよりも背が高いからなのかが分からないけれどそれを使っていた。その様子を見て、長剣で解体ができることに対する羨ましさを覚えたのは秘密だ。


……それにしても、今日もたくさん集まったな。売ったらどれくらいになるんだろう。


 魔獣達をたくさん集めることができたおかげで、今日のあの男性三人組達との勝負には勝てるだろう。けれど、それだけの量の命を奪ったのだということを実感してしまい。気分が重くなる。先程までは魔獣を倒すことしか考えていなかったために気づかなかった。


……ごめんね。わたしの都合で殺してしまって……。貴方達は何も悪いことはしていないのに。


 今までだって、それこそ前世でも自分の都合で動物達を殺すというのは何度もやってきている。わたし達が食事の時に動物の肉を食べている以上、これからもそれをやめることはできないだろう。それに、食事に加えて今回は魔石などの素材を集めて売り、お金にすることができる。自分でそれらを使うこともできるのだから、尚更だ。


 これまでは、食事で食べる肉も大半がわたし以外の人が仕留めたものを料理してもらって得ていた。前回ダンジョンに来た時にも、わたしは魔獣を倒す時には魔法しか使わなかった。つまり、自分の手で殺したのは初めてだ。


 全ての魔獣を倒し終わった今でも剣で切るという感覚が頭の中に残っている。これを忘れることはしてはいけないだろう。自分が命をもらっているのだということを、今までよりも、もっと重く捉えていきたいと思う。


 時には自分を、そして大切な人を守るために何かを殺さなければいけないこともあるだろう。そのこと自体は理解しているし、絶対にやってはいけないと言うこともするつもりはない。誰かを傷つけることは許されないことだと考えるのはとても大切だけれど、その考えを重視するあまり自分が傷つくようなことがあったら意味がないからだ。


 地球で起きていた戦争だって同じだ。自分が生きるために、家族や友人のいる自分の国を守るために……理由は人それぞれだと思うけれど、そのために人を何人も殺す。


……まあ戦争を推奨している訳じゃあないけどね。そんなことは絶対にしないよ。


 わたしは別に戦争は悪くないものだ、などと言うつもりはない。むしろ、起こしてはいけないものだ。人の命がたくさん失われ、多くの人を傷つける戦争など、起きてはいけない。そこだけは勘違いしないでほしい。


 とにかく、わたしはこれからも自分が奪った命のことを忘れずにいたいと思う。


……これからも色々な生き物を殺していくんだから、それがわたしの……命を奪う人の責任だよね。


「……あら?もう終わり?」


 そんなことを考えている間に、魔獣の解体は終わっていたらしい。山のようにあった魔獣達の死体が綺麗さっぱりなくなって、代わりに前回のように魔石、肉、皮ごとに分けられた三つの山ができていた。


「……ありがとう、リーナ、ユリウス。二人共、たくさん解体をしてくれたのね。助かったわ」


 リーナとユリウスが大半の魔獣を解体してくれたのだと考えたわたしのその言葉に、二人は何故か顔を見合わせた。


「……二人共、どうかした?わたし、何か変なことを言ったかしら?」

「……いえ、私達はそれほど解体できていませんよ?お嬢様の処理の速度がとても速かったので、私達の解体できた数はむしろ少ないです」

「……え?そうだったの?」


 リーナと、彼女のその言葉に驚くわたし。自分がそれ程多くの魔獣の処理をしていたとは思わなかったのだ。


「はい。恐らく、私とリーナ二人合わせて半分くらいではないでしょうか?」


 どうやらわたしは随分と考え込んでいたらしい。解体が終わるまでは意識がどこか別な場所にあるような感覚で、手だけは動かしていても全く違うことを考えている状態だった。だから、処理自体はできていても自分が解体した魔獣の数や種類などは覚えていない。


「……そう。まあ良いわ。とりあえず、この山は片づけるわね」


 このまま考えていても何も変わらなそうだったので、考えるのはやめることにした。


 今はまず、目の前の素材の山をどうにかしなければいけないだろう。そう考えたわたしは皮は前回と同じ場所、肉と魔石は新しい場所に、それぞれまとめてしまったのだった。



 

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