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それからしばらく歩いていくと、魔獣を集めるのにちょうど良さそうな場所を見つけた。リーナとユリウスにも確認し、ここで魔獣を倒すことに対する賛同を得たわたしは、早速、今回の作戦を開始した。
「えーと、魔石に一気に魔力を集めれば光るのよね?」
魔石を一つ取り出して、手に持つ。そして、意識的に魔力を流し込んだ。
予想通り、明るい光を放つ魔石。その眩しさに負けて閉じていた目を開くと、前回と同じく手の上にあった魔石は砂と化していた。砂とはいっても、その色は薄い金色だったけれど。
「……これで良し、と。早めに集まってくれると良いのだけれど、どれくらいかかるかしら?」
「前回は数分で集まりましたからね。今回もそれ程かからないのではないでしょうか」
「ええ、私もそう思います。先程の光は先日と同じくらいの明るさでしたからね」
わたしの呟きに答えてくれたリーナとユリウスの言葉に、わたしは少し考えた後、頷いた。
「そう……ね。確かに、そう言われてみればそうだったような気もするわ。……というより、魔獣って、どうやって集まってくるの?この前行っていたように、魔力を感じるための器官でもあるのかしら」
「そのあたりはまだ明らかにはなっていませんが、魔石に流した大量の魔力に反応しているのではないか、と考えられています」
「そうなのね。初めて知ったわ」
わたし達がそんな話をしていると、先程の二人の言葉の通り、数分後にわたしの耳がいくつもの足音を捉えた。
「来た……かしら?」
わたしのその言葉に、リーナとユリウスがそれぞれの武器を取り出した。リーナは短剣、ユリウスは腰に差していた長剣だ。わたしも、いつでも魔法を発動捺せられるように意識を落ち着かせて周囲の音に集中する。
数秒後、こちらに向かってくる魔獣達は目に見える程まで近づいてきていた。前回と同じか、それ以上の数だ。かなりの迫力だったけれど、前回で少し慣れたのか、そこまで怯えることもなかった。
「リーナ、ユリウス!この前と同じことを言うけれど、絶対に無理はしないでちょうだい。万が一、怪我をしたら、どんなに小さなものでも一度休んで!わたしも頑張って倒すわ」
二人にそう告げてから、わたしは迫り来る魔獣達の様子を観察した。今の時点では、見えている魔獣の数は軽く五十を超えるだろう。足音はまだ少し遠いところからも聞こえ続けているので、更に増えるかもしれない。
自分で集めた挙げ句に倒すという魔獣達にとってはかなり酷いことをしているわたしだけれど、ただ単に魔石を多く集めたいだけで、別に彼等に対する恨みなどはない。あるはずもない。
ということで、わたしがすることは一つ。すでに決まっている。
「慈悲の祝福!」
初手からこの魔法を使ったわたしだったけれど、流石に一度で全滅させるのは無理だった。今の魔法で倒すことができたのは、低級の、いわゆるCランクやDランクの魔獣達ばかりだった。つまり、集まっている中ではそれほど強くない魔獣達。とは言っても、半数近くは息絶えている。
何か他の方法で目眩ましをしていた訳でもないので、当然のことながらA級やB級の魔獣達を倒すことはできていない。
……そろそろ剣術も使いますか。まだ魔力面では余裕はあるんだけど。
普通の魔法を使うよりは魔力を多く消費する「慈悲の祝福」だが、あと数回繰り返しても問題は無さそうなほどわたしの魔力は残っている。だから、魔力面では全く困っていない。
けれど、魔法だけを使っていても自分の剣術の技術やレベルを知ることができない。それに、この後何が起きるか分からないため、魔力はできるだけ温存しておきたいのだ。
ということで、色々と考えた結果、今からは魔法ではなく剣術をメインとして魔獣たちの相手をしていくことに決めた。
そうと決まれば剣が必要だ。わたしは早速剣を取り出すと、両手で握った手で構えを取り、近くにいた魔獣に切りかかった。一撃で仕留めることができるよう、狙うのは首だ。
突進してきたその魔獣が火魔法を放ってきたけれど、わたしはそれを水を出して防ぎ、横に回る。そして首元めがけて剣を振り下ろした。
皮と肉を断ち切る初めての感覚と、かかってくる血。首と身体が離れ力尽きている魔獣を見て、自分が命を奪ったのだ、ということを実感した。
けれど、ぼうっとしている暇はない。後ろから襲いかかってきた魔獣を、身を翻して切りつけた。倒れる魔獣。
わたしはそれから、魔法と剣を使って魔獣達を倒し続けたのだった。
******
「終わっ、た」
無心で剣を振り続けること数十分。今この場で立っているのはリーナ、ユリウス、そしてわたしだけになっていた。
前回と違い、剣を使ったわたしは息が切れている。動き回っていたからだ。
……前回は魔法だけしか使ってなくて、全く動かなかったから息切れしなかったのか。もうちょっと体力を上げたいな。
「リーナ、ユリウス、怪我はしていないわね?」
「はい」
「私も平気です。お嬢様こそ、お怪我はなさっていませんか?」
「……ええ、わたしは大丈夫よ。返り血は凄いことになっているけれど。まあとにかく、二人が無事なら良かったわ」
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