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「でも、カイ。もし、いつか誰かのことを助けたいって思う時があれば、その時は内緒にしたいからとか、そういうことを考えずに、自分のしたいようにこうどうしても良いからね。何かあった時のために、光魔法の使い方を覚えておきたい、って望むのであれば、わたしも協力するわ」
「うん。ありがとう、セレナ」
「その、魔法の使い方を覚えたい時には言ってくれる?」
「分かったよ」
カイが頷いたことを確認し、わたしは席に戻るよう伝えた。カイの魔石は他の皆と同じようにわたしが持っている。
皆が座っているか確かめると、わたしは椅子から立ち上がった。
「皆さん、お疲れ様でした。今日の適性検査がこれで終わりです。皆さんも自分の魔力の属性を知ることはできたと思いますが、その属性の分だけ魔法を使うことができます。属性によって、使える魔法は異なります。それを知りたい、魔法を使ってみたいと思う人がいれば、わたしに声をかけてくださいね」
******
その翌日。
わたしはリーナと一緒に者ギルドに行くための支度をしていた。
「リーナ、服装はこれで良いと思うのだけれど、この髪の毛は短く見えるようにしたいの。できるかしら?もしできなかったら後ろで一つに結べば良いと思うけれど、最悪この前のように顔と頭を隠すけれど」
「できますよ。少しお待ち下さいね。今結びますので」
しばらくすると、わたしの胸の下あたりまであった金色の髪の毛は、肩までの長さになっていた。
「……ありがとう、リーナ。これくらいならわたしは男だ、って言っても信じてもらえそうだわ」
支度を終えたわたしは、椅子から立ち上がって部屋を出る。
「よし、じゃあリーナ、ユリウス、行きましょうか。ギルドはどこにあるの?」
「ダンジョンの近くです。歩いて五分くらいでしょうか」
「そう。それなら、ダンジョンから行った方が早いわね」
わたしは部屋にいるままダンジョンへと空間を繋ぐ。
ぎょっとしたように目を見開くリーナ達に、そういえば空間魔法を使った移動方法を披露するのは初めてだったな、と思うわたし。
「……えーと。少し前にできるようになった魔法なのだけれど。空間魔法で二つの場所を繋げて、移動できるようになったのよ。一応、安全面では大丈夫はなっているから、わたしを信じると思ってくぐってみてくれないかしら?」
「……セレスティーナ様が魔法面において規格外であることは理解していたつもりですが、ここまでだとは理解していませんでした」
「お嬢様……。最早天才の域を超えていませんか?」
「あの……二人共、聞いている?」
遠い目になっている二人にそう聞くと、彼等ははっとしたように動き出した。
「申し訳ございません。……ここをくぐればよろしいのですね?馬車はお使いにならなくても宜しいのでしょうか?」
「ええ。歩くぐらいなら別に使わなくて良いと思うもの。誰が見ているか分からないから、できるだけ急いでもらえると嬉しいわ」
「はい」
……というか、馬車を使うかとか、今更だよね。最近馬車は全然使ってないもん。
二人が「向こう側」に行った後、わたしも足を出して二つの空間の繋ぎ目をくぐった。そして、くぐり終えると同時に魔法を解除して消す。
「よし、ちゃんとダンジョンに移動できたわね。それじゃあリーナ、ユリウス。ギルドまで案内してくれるかしら?」
「分かりました」
前回来た際と同じ、見覚えのある場所にわたし達はいた。ダンジョンの入り口から少し人が少ないところへずらした場所である。
「お嬢様、先程の……移動魔法というのでしょうか?」
「うーん、多分そうよ。わたしが発動するときにはそう言っているもの。同じような魔法はないの?あるならそれと同じなのではないかしら」
「いえ、移動ができる魔法というのは一般的にはないと思います。もしかすると、一部の最高位貴族の間では存在しているのかもしれませんが」
「……そうだったのね。全然知らなかったわ。まあ、それが正解かは分からないけれど、移動魔法で良いと思うわ。意味が分かれば十分だもの。……それがどうかした?」
「移動魔法は、どこにでも行くことができるのですか?」
「いいえ?わたしが行ったことのある場所や、見たことのある場所にしか繋げられないわ。場所が分からないから当たり前のことだけれど。……それでも、わたしは魔法で色々なところを見ることができるから、直接行ったことはない場所でも、大半のところには行けることになるわね」
リーナやユリウスに先程披露した移動魔法について質問され、それについて答えていく。当然のことながら、移動魔法のことを誰かに教えたのは二人が初めてだ。
「……到着しました。ここが冒険者ギルドです」
しばらく歩いていくと、一つの建物の前に辿り着いた。少し古めで、外装などに凝っている様子はない。
……まあ、それもそうか。ここに来るのは仕事を求めてる冒険者さんか冒険者になりたい人達ぐらいだろうし。見た目は別にこだわらなくても良いのかな?
ひとまず中に入ると、そこには何人もの人達がいた。ほぼ全員、男の人。身体が大きい人ばかりだ。
……なんていうか……いかつい?失礼なような気もするけど。
そんな失礼なことを考えていたわたし、そしてリーナとユリウスに気付いたのか、何人かの人がこちらを向く。
「……おい、お綺麗なナリした奴らがいるぞ!」
「ああ?まさか、お貴族様じゃないだろうな?」
「いやお前、お貴族様がこんなところに来る訳ねえだろ!」
どっと笑いが湧く。向けられる視線が好意的ではないことは分かっていたけれど、わたしは特に気にすることなく俯いて歩みを続けた。下を向いていたのは、顔を見られないようにするためだ。
そんなわたしの前にふと影が落ちた。
わたしは顔を上げる。わたしの目の前には、三人の男性が道を塞ぐようにして立ちふさがっていた。
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