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質問に来た子達に色々と教えたりしていると、しばらくして魔石を染めた人が現れてきた。それはなんとミラとネラの二人だった。
「セレナ、終わったよ。多分大丈夫だと思う」
「ネラも〜。見て見て」
「……もう、終わったの?早かったわね」
「そう?」
「二人共、凄いわ。とりあえず、魔石を貸してくれる?」
「うん。はい」
「ネラのもどうぞ」
二人から魔石をもらい、それらを見る。
「……っ、え?」
「どうしたの、セレナ」
「何かあった?……あ、もしかして、できてなかった?」
「あ、ごめんなさい、違うの。ちゃんと染まってるよ。染まってるんだけれど……」
わたしが驚いた理由。それは、二人から受け取った魔石の色が一つではなかったから。いや、それだけであれば別にそこまで驚かない。貴族こそ多いのが当たり前だけれど、平民の人でも適性のある属性が一つだけではない人だって稀にいるのだ。でも、ネラとミラはそれどころではなかった。
なんとネラとミラは、属性が四つもあった。その点は二人共同じだけれど、もちろん属性は違った。ネラは水魔法と火魔法、風魔法、そして雷魔法。ミラは水魔法と火魔法と土魔法と空間魔法だった。
この結果に驚きながらも、わたしは手元の紙に二人の属性を書き込んだ。
……どういうこと?属性が四つもある、って言ったら最早それは平民の魔力量じゃなくて、侯爵家にも匹敵する数だよね。
基本的に、属性の数というのは魔力量と比例するのだ。つまり、属性が四つのネラとミラは普通の平民どころではなく、貴族に匹敵するほどの魔力を持っていることになる。
「ありがとう。これは返しておくわね。取っておくと良いと思うわ。もしいらないんだったらわたしが預かるけれど……」
「じゃあ、セレナにあげる。私達のこと、忘れないように」
「私も。ずっと持っててね」
「ネラとミラのことを忘れたりはしないけれど……二人がそう言うなら、わたしが大切に預かっておくわね。もしまた欲しくなったらいつでも言って。すぐに返すわ」
わたしは二人の魔石を返すことはせずに、そのまましまう。絶対になくさないように、新しい「収納場所」も作った。
そんなわたしの様子を見ていたネラとミラは首を横に振る。わたしは二人を見つめた。
「……どうしたの?」
「ううん。それ、ネラはずっとセレナに持っててほしい。ネラはセレナのことが大好きだけど、セレナはここにはずっといられないでしょ?だから、ネラ達の代わりとして持っててほしいの」
「ミラも同じ。だから、ミラ達は返してほしいって言わないと思う」
その言葉に、わたしは沈黙する。
ネラやミラがわたしのことを好いてくれているのは知っていた。だからわたしが孤児院に来た時は毎回抱きついてきてくれるんだと思っていた。どうしてわたしなんかのことを好いてくれているのかは分からなかったけれど、嬉しかった。
それでも、ネラやミラ達が言ってくれたようなことを考えていたとは知らなかったし、思いもしなかったから、今わたしは驚いていた。
わたしは、正面で椅子に座りながら魔石を握っている孤児院の皆と少し離れたところで座っているリーナ達をちらりと見る。まだ魔力を込め終わった人がこちらに来るまでには時間がかかりそうだということを確認し、少しだけ、目の前の二人とこのまま話すことにした。
「……もしかして、ネラとミラは、もっとわたしと会いたいと思ってくれているの?間違えていたら、ごめんね」
「そうだよ!ネラはいつでもセレナに会いたいもん。ミラも同じでしょ?」
「うん。セレナは二日に一回くらいのペースで来てくれているけど、あんまり長い時間はいられないから、ミラ達はそれだけだと寂しいの」
わたしは二人の言葉に苦笑する。
「……長い時間はいられないって言っても、一応、三時間以上はいるけれどね」
「でも、それでも足りないの。もっと話したいこともあるし、もっとセレナと一緒にいたいんだよ」
「セレナが忙しいことは分かってるけど、ネラ達はそれぐらいセレナ達のことが大好きなんだよ」
「……」
……え、本当に、なんでこんなに好いてくれてるの?真剣な場面だって分かってるけど、分かってるけど!本当に心当たりがないんだけど。
そんな疑問はまあどうでも良いとして。二人のわたしへの友愛がそれほど大きいとは思わなかった。寂しい思いをわたしのせいでさせてしまっているのは申し訳ないし、わたしも可愛くて素直な二人のことは大好きだから、ネラ達がそんな思いをしなくてもすむようにはしてあげたいなとも思う。
でも、どうすれば良いのかが分からない。
「……ごめんね、寂しい思いをさせてしまって」
「……ううん、セレナは悪くないよ」
「ネラ達はわたしのことを大好きだって言ってくれるけれど、わたしも二人のことは大好きだよ。だから、今さっき言っていたように、二人を忘れることなんて絶対にないから、そこだけは安心してほしいの」
「ほんとに?」
「ええ。これからはできるだけたくさん会いに来るようにするわね。二人が寂しくならないように」
わたしのその言葉に、ネラとミラは嬉しそうに笑った。
「約束だよ!」
「待ってるからね」
そう言ってから二人はそれぞれの席に戻っていった。
……結構長い間話しちゃったな。そんなに終わっている人がいなかったから良かったけど。
今の間に魔石を染め終えた人は数人で、彼等はネラとミラと話していたわたしのところではなく、リーナとユリウスのところに行ってくれていた。
やはりネラとミラが速すぎただけで、魔石を染めるには時間がかかるようだ。今魔石を染め終えた人も、全員が十歳以上だ。
わたしは誰かが魔石を持ってくるまで、気長に待つことにしたのだった。
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