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「……込めた魔力が多すぎたのでしょうね。すでにいくらか消費しているとは言えセレスティーナ様の魔力量は多いので」
「その辺りは調整が必要、ということね。もっと魔力を使ってしまえばもう少しやりやすくなるかしら?」
「お嬢様が魔石に魔力を込めることに慣れるまではその方が良いかもしれませんね」
わたしにその実感はないけれど、ダンジョンで魔法を連発して魔力を使った今でさえこの有様なのだ。最終的には今のような状態ではなく、自分の魔力をしっかり管理……というか調節できるようになることが理想だけれど、まだそれは難しいだろう。
それなら、身体に残っている魔力を少しでも減らした上でまた魔力を流してみて、どれぐらいの量が適量なのか、どれくらいの感覚で魔力を込めれば良いのか、そのコツだけでもまず掴みたい。それが分かった後で、少しずつ込める魔力を制御することに慣れていきたいと思う。
そしてわたしは、今自分が魔力を右手に集めてみてからそれらを魔石に押し流したことを思い出した。
……もしかして、その過程をなくして手にある魔力を少なくしてみたら、魔力を流しても砂にならなくて済むんじゃないかな?
そう考えたわたしは早速もう一度魔石を手に取り、魔力が普段通りに循環しているそのままの状態で手の上の魔石にそれを込めてみた。
「……失敗、ね」
「セレスティーナ様、今は何をなさっていたのですか?」
ユリウスにそう問われたわたしは、つい先程考えたことを彼等に話すことにした。
「実は、今さっき、わたしが魔石に魔力を込めた時には身体の中を流れていた魔力を右手に集めてから押し流すようなイメージをしていたのよ」
「そうですね。それが一般的な方法になります」
「でも、そうすると魔力が多かった。だから魔石が砂になったのでしょう?……そう思ったから、今度は手に魔力を集めることはしないで、そのまま魔力を込めたのよ。そうすれば、上手くいくかもしれないと思ったのだけれど……そう簡単にはいかないみたいね」
なかなか上手くいかないことに少し落ち込んでしまう。
……なんでできないんだろう?魔力が多いってことは、悪い訳ではないんだろうけど……。ここまで上手くいかないと、流石に少し不安になってくるよ。
「……まあ、とりあえずはひたすら練習していくしかないわよね。頑張るわ。……二人共早速魔力をどんどん使っていきたいのだけれど、この屋敷で魔法を使える場所がどこかあるかしら?一番早いのは部屋を洗浄魔法で片っ端から綺麗にしていくことなような気がするけれど。でも、それだとお父様どころかこの屋敷にいる皆にわたしが魔法を使えることが知られてしまうかもしれないわね」
わたしがお父様に魔力を使えることが知られないようにしながら一気に簡単に魔力を消費できる方法はないのだろうか。
わたしは頬に手を当てて考える。
「ねえ、リーナ、ユリウス。今疑問に思ったのだけれど、わたしが魔法を使えることは、貴族だけでなく平民の皆さんにも知られてはいけないの?」
「できれば知られない方が良いでしょうね。……何故でしょう?」
「この領地に、あまりお金を持っていないような人はいない?」
「います。ウェルストン公爵領は他領に比べても豊かな方ですが、誰しもが金銭を十分に持てるとは言えませんからね」
わたしが考えたのは、そのような人達の家を巡って洗浄魔法で綺麗にしていくという案だ。もちろん一応は「セレスティーナ・ウェルストン」が魔法を使えることは内緒にしてもらう。というよりも、わたしが自分の本名を明かさなければ大丈夫だろう。
「最悪、男の子の格好をして名前を少し変えればそれがわたしだとは以外とバレないと思うの。……二人はこの案をどう思う?」
わたしの考えを聞いたリーナとユリウスは顔を見合わせて数秒か考える素振りを見せた後、再びこちらを向いた。
「お嬢様の案はとても素晴らしいと思います。それが出来れば彼等も喜ぶでしょう」
「貧民達の住む貧民街の環境については、旦那様も領主として悩んでおられましたからね」
「そうだったのね。……じゃあ、それで良いかしら?でも、わたしが突然押しかけて、彼等は受け入れてくれるかしら?他人を家にあげることになるでしょう?」
もちろん初対面でそれほど親しくなれるとは思っていない。何回か回数を重ねて訪問して、それを受け入れてくれるほど打ち解けてくれると良いなとは考えているけれど。
「貧民の中には家を持たない者もいるので、その辺りについては考えてみなければいけませんね」
「まあ、なるようにしかならないわよね」
これは多分思考放棄とも言う。が、気にしない。思考放棄だとかどうとでもなれと開き直っただけだとか言われても気にしない。
「とりあえず今日はもうすぐ剣術の稽古の時間でもあるし、一旦止めましょう。明日、孤児院に行った後に時間が余ればその貧民、街?に行ってみれば良いと思うわ」
……なんか、この貧民街って言葉、好きじゃないなあ。
なんとなく、嫌だ。貧民という言葉自体あまり好きではない。差別しているかのようで少し悲しくなってくる。
……なんて、わたしが思ったところでどうにもできないけどね。
「……じゃあ、ユリウス、わたしは着替えたら訓練場に向かうから、いつものように待っておいてもらっても良いかしら?できるだけ早く行くわ」
「もちろんです。……とは言え、セレスティーナ様はいつも私よりも早く着いていらっしゃいますよね。むしろ私の方がおまたせしていると思いますが」
苦笑しながらそう言うユリウスにわたしは首を横に振った。
「わたしが教えてもらっているのだから、それが当たり前なのよ。……まあ、とりあえず待っていてくれる」
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