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「ねえリーナ、ユリウス。わたし、冒険者ギルドに登録したいんだけれど、どうすれば良いかしら?」

「……はい?セレスティーナ様、今、何とおっしゃいましたか?」


 わたしの発言に、ユリウスとリーナが目を見開いた。とは言っても、リーナはほんの少しだけれど。


……まあ、わたしも、言うタイミングが唐突すぎたっていうのは分かるけどね。


 こんなことを急に言われたら普通驚くだろう。それくらいは分かる。


「わたしが、冒険者ギルドに登録するためにはどうすれば良いのか、って言ったのよ」

「……お嬢様が、冒険者ギルドに、登録なさりたいのですか?」


 驚きからか一言一言区切って、確認するようにそう言ったリーナ。


「ええ。この前、ダンジョンに行ったでしょう?その時、冒険者さんのような身なりをしている人が多かったから、わたしも冒険者になって依頼を引き受ければ収入になるかな、と思って。いつまでもドレスを売れるという訳ではないし……」


 実際、既に五十着ほどは売ってしまっている。まだ着ることができないドレスは残っているとはいえ、いつかはなくなるだろう。その時に、確実に収入を得ることができる方法を見つけておきたいのだ。


……何かこの世界にはない商品を作り出してみるのも良いかもしれないね。まあ、それは後で考えるとして。


「以前から疑問だったのですが、セレスティーナ様は何故それほどお金を必要としているのですか?セレスティーナ様は公爵令嬢なのですから、わざわざご自分で動かれなくても生活できるはずです」

「……公爵令嬢という地位にだけ頼って生きていくのは嫌なのよ。もしかしたら今後、公爵令嬢として認められなくなるようなことが起きるかもしれない。それは明日かもしれないし、来月かもしれない。そんな時に、自分で生活していくことができるように、……自立できるように、できるだけ多くの技術を身につけておきたいの」


 実際、現在は公爵令嬢であるとはいえ、その地位に甘んじてだらだら過ごしているだけでは立場が不安定すぎる。公爵令嬢という椅子にずっとただ胡坐をかいて座っていられるほどの価値は、今のわたしにはないのだ。


 だからわたしは勉強……というか読書を頑張って多くの知識を手に入れて、魔法も身につけて、剣術も始めた。もしも、万が一、この国から出て行くことがあった時のためにも今は外国語にも挑戦している。


「お嬢様が公爵令嬢でなくなることなんて、旦那様が絶対にお許しにならないとは思いますが……」

「いいえ、リーナ。そんなこと、誰にも分からないのよ。確かにお父様はわたしのことを愛してくれているとは思うけれど、わたしをいつまでも公爵家の人間として認めてくれるとは限らないわ。だって、例えばわたしが何か大きな罪を犯してしまった時、いくらお父様でもわたしのことを許すはずはないでしょう?もちろん、そんなことはしないつもりだけれど」


 所詮、わたしの公爵令嬢としての地位なんてハリボテなのだ。今あったとしても、いつまでそのままかは誰にも分からない。


「だから、わたしはわたしが自分の力で生きていくために、今のうちからできる事をどんどんしていきたいの。冒険者ギルドに登録して冒険者になるのもその内の一つよ。……それで、何か方法があれば教えてくれないかしら?登録するのは何歳以上の人じゃないといけないとか、決まりはあるの?」

「……お教えしますが、これだけは約束してください」


 ユリウスとリーナの苦いものを飲み込んだかのような表情に、わたしは首を傾げる。


「何かしら?ギルドに登録しては駄目だってこと以外であれば聞くわよ?……もちろん、条件に合っていなくて登録できないってことなら諦めるけれど」

「いえ、私達がお嬢様が望まれていることを無理にお止めしたりすることはございませんよ」

「私達がお願いするのは、もし登録が終わりセレスティーナ様が冒険者となり、ダンジョンなどで依頼解消のために魔獣を狩ったり素材を集めたりされる時には、私達をお連れください。セレスティーナ様をお一人でダンジョンに行かせる訳には行きませんから」

「そのことなら、わたしもお願いしようと思っていたのよ。リーナとユリウスが一緒に来てくれればありがたいと思っていたから。二人のお仕事の邪魔じゃなければお願いしても良い?」

「ええ、もちろんです」

「それに、お嬢様をお守りすることが私達の仕事ですから」


 いくら自分の身を魔法である程度守れるとはいえ、リーナとユリウスがいてくれた方が心強い。彼等の仕事をする時間を奪ってしまうことになるけれど。


「では、お教えいたしますね。冒険者ギルドに登録するには年齢も性別も特に関係ありません。試験で実力を測られるので、その際に冒険者として相応しい強さを持っていると認められることができれば、誰でも冒険者になることはできるのです」

「そうなのね。……それじゃあつまり、問題は冒険者になっても良いとギルドの方に認めてもらえるほどの強さをわたしが持っているか、ね」

「セレスティーナ様であれば、確実に大丈夫ですよ」

「そうかしら?確か、冒険者のランクは高い順にS、A、B……って続いていくんだったわよね?」


 Sランクとは最も上のランクを表していて、次点でA、その次がB、と初めのSランク以外はアルファベット順に並んでいくのだ。一番下がEランクと決められているそうだ。


 ちなみに、魔獣も強さでランク分けされていて、冒険者が依頼を受ける時には自分のランクと目的の魔獣のランクを比較して受けるかどうかを決めるらしい。


「よくご存じですね。その通りです。セレスティーナ様のお力でしたら、Aランクにはなれるのではないでしょうか?」

「いや、それはないと思うわよ。わたし、そこまで強くないもの」


 さすがに、まだ五歳のわたしがいきなりAランクになれるはずはないだろう。


 そう思ってユリウスの言葉を否定すると、ユリウスだけでなくリーナまでもが顔を見合わせて苦笑した。何故に。


 そんな二人の反応にわたしは首を傾げる。そして、先日冒険者になりたいと考えていた時から思っていたことを口にした。


「……わたし、冒険者として活動するときには男装しようと思うの。もちろん、試験を受ける時もよ?」


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