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 孤児院のことなどで忙しくて忘れていたが、わたしの誕生日が気付いたら三日後にまで迫っていた。


……自分のことなんだから覚えておこうよ、なんて意見は受け付けません。


 とにかく、誕生日当日にはパーティーが開かれる。ウィリアム兄様とアルバート兄様の誕生日パーティーでは他の領地からも知り合いの貴族が招かれていた。


何と、貴族の屋敷にはそれぞれ最低一つは転移陣があるのだそうだ。その転移陣を使って招待客は屋敷まで来ていたのだと言う。


 転移陣とはその名の通り転移をするための魔法陣のことで、設置さえすれば魔法を持つ者は誰でも使用できるらしい。転移のために必要な魔力は少ないので、簡単に使える。


 そんな風に多他領に住む人も招待していた兄様方の誕生日パーティーだが、今回は少し招く人数が減るらしい。厳密には、兄様の友人とヴァン叔父様だけを招くそうだ。


 ヴァン叔父様は、お父様の弟で、わたしのことを可愛がってくれている。ウェルストン公爵領ではない別の領地を持っているため、そこからわざわざ来てくれるらしい。


……そうは言っても、叔父様は結構頻繁に訪ねてくるけどね。


 そして、兄様の友人というのはもちろん以前お会いした四人である。この前兄様と昼食を一緒に取った時に知らされた。同じ爵位である公爵子息の御三方ならまだしも、王子がいらっしゃるの⁈と驚いてしまったわたしは悪くないと思う。


 皆様は兄様方に会いにいらっしゃるのだろうけれど、本当に仲が良いんだなあと思った。だって、つい何日か前にもいらっしゃっていたらしいからだ。転移陣を使って午前中に来て、夕方に帰ったのだそうだ。


 ウィリアム兄様は、「パーティー当日はここに泊まっていくことになるだろうね」と言っていたけれど、そんな気軽に告げるようなことではないと思う。


……お父様とアルフォンス殿下方のお父様同士の仲が良いからって言っても、一応身分ってこの世界では大事なんじゃないの?


 まあ、そんなこんなでわたしの誕生日パーティーはあまり大規模にはならないらしい。


 それでも、十時から行われる庭を使った昼食会を兼ねたパーティーだけでなく、夕食も普段とは違う特別なものになるらしい。


 わたしは特に何もすることはなくて、忙しくなるのはお父様や使用人の皆さんだ。強いて言えば、わたしがする必要があるのは、ドレスを決めておくことくらい。


 いつも着ている普段使いのドレスではパーティーには出られないのだそうだ。だから、パーティーなどの特別な時に着るものの中から選ぶ必要がある。


 とは言え、それはパーティー前日でも間に合うので、今から急いでする必要はない。


……それに、マーサがある程度は選んで候補を決めておいてくれるらしいしね。


 つまり、同じことをもう一度言うけれど、パーティーがもうすぐあるとは言え、わたしは何かを用意する訳ではないので、もしこのまま忘れていたとしても特に問題はなかったもだ。


……問題ある?いいの。他の人のを忘れていたならまだしも、自分の誕生日なんだから。


 あっという間に誕生日当日を迎えた。


 朝から屋敷の中には慌ただしい雰囲気が流れている。パーティーの用意のために、朝食を早めに食べ、わたしは十時まで何をするのか考えていた。


……うーん、今日は孤児院には行けないし……。本を読んで魔法の練習をして、ユリウスとの稽古をするっていう流れで良いかな?


 夕食の時間はいつもと変わらないので、剣術の稽古もいつも通りできる。


 一日の予定を決めたわたしは、早速部屋を出て図書室に向かった。リーナには、着替えなどの用意のために九時には戻ってきて欲しいと言われているので、あと二時間以上は本を読んでいられる。多分、十冊くらいだろう。


 図書室に到着したわたしは、早速読書を始めたのだった。


「……そろそろ戻らないと駄目ね」


 本を片付け、部屋に戻るとリーナによって湯浴みをさせられた。


 湯浴みからあがれば着替え。今日着るのは、深い青色のドレスだ。夜には紺色のものを着ることになっている。


 髪の毛を結ってもらいたい用意が終わるとパーティーが始まる時間まであと十五分だった。


「まだ余裕がありますね。どういたしましょう?」

「……遅れても困るし、早めに移動するわ」


 リーナとユリウスと一緒に庭まで移動すると、もうお父様が来ていた。


 わたしに気付いたお父様が笑みを浮かべる。そして抱きしめられた。


「セレナ、誕生日おめでとう。とっても綺麗だよ」

「ありがとうございます、お父様。そう言っていただけて嬉しいです」


 最早お父様がわたしを目にする度に褒めるのは慣れてしまった。お父様が親馬鹿だということはすでに分かっているので、わたしに関するそれらの言葉を全部信じることはしていない。


 今の間にもわたしのことを抱きしめていたお父様が立ち上がる。


「ヴァンは少し遅れるそうだよ。先にパーティーを始めておいてほしいと連絡が来た。セレナに申し訳ないと謝っていたよ」

「そうなんですね」

「まあ、ヴァンのことだからセレナに会うための準備に時間をかけているんだろうな。殿下達はすでに到着していらっしゃるというのに。……ほら、噂をすれば」


 お父様の言葉に振り返ると、兄様と殿下方がこちらに近づいてきていた。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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