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「皆、お待たせ。マーサも、お待たせしてしまってごめんなさい。……今から、皆の身体を綺麗にするために魔法を使うわ。水が出てくるけれど、すぐに……そうね、二秒くらいで消えるから、驚いても息を吸っちゃ駄目よ?……ということで、皆、鼻をつまんで目を閉じて。マーサも、皆と同じようにした方が良いと思います」


 皆が鼻をつまみ、目を閉じたことを確認する。


「じゃあ、いくわね」


 わたしは地下室と皆の身体が綺麗になるように、洗浄魔法をかける。


 水が消えたところでわたしが目を開くと、皆もゆっくりと目を開け始めた。鼻に水が入った人はいなかったようで、安心する。


「わあ……!綺麗になってる!」

「セレナ、この魔法?……って凄いね!」


 カイやマリア、ネラ、ミラ達が自分の身体と部屋の様子を見て歓声をあげている。マーサも驚いているようだ。


「凄いですね……一瞬で、こんなに綺麗になるなんて思いませんでした」


 確かに、汚かった地下室は黒ずんでいまところも含めてピカピカた。窓がなく、外から明かりが差し込んでこないため寝室よりは見えにくいけれど、今までと比べれば歴然たる違いが分かる。


 そして、カイ達については髪も艶々で、外に出て太陽の光を浴びていないからか肌も真っ白だ。女の子達がますます可愛くなっている。


……綺麗にする前から顔立ちが整っているとは思ってたけど、汚れをとっただけでこんなに可愛くなるの?やっぱりこの世界、綺麗な人多すぎでしょ。


 そんなどうでも良いことを考えているわたしだけれど、やるべきことはちゃんと覚えている。


「皆、ちょっと聞いてくれる?……マーサも聞いてもらえますか?」


 その言葉で、皆がわたしの方に注目する。


「わたしは今、魔法を使って皆のことを綺麗にしたけれど、このこと……つまり、わたしが魔法を使ったということは何があっても孤児院の皆以外には内緒にして欲しいの」

「分かった」

「うん、ミラも言わないよ。内緒にしとくね」

「……ほ、本当に?ありがとう」


 返事をするまでの時間が短すぎて、分かってくれたのかは疑問だけれど、今回は信じるしかない。


 それに、ネラやミラなら多分大丈夫だろう。根拠はないけれど、ここにいる皆は信じられる。


「セレナ、理由は分からないけど大丈夫よ。私達は誰にも言わないようにする」


 ネラとミラに続いて、マリアもそう言ってくれた。皆も頷いている。


 その瞳は真っ直ぐで、嘘を言っているようには見えなかった。


……うん、皆なら大丈夫。


「セレナ様、私もお約束します。この子達が孤児院の者以外に、そしてこの孤児院内でも不用意にセレナ様の魔法について話すことがないよう、私が注意します」


 そして最後に、マーサが頼もしいことを言ってくれた。


「マーサ、ありがとうございます。皆も、ありがとう」

「良いんだよー。だってネラはセレナのことが大好きだもん。……多分、ネラとミラだけじゃなくて、皆もだと思うけど」

「セレナ様は、この孤児院を救ってくださいましたから。これくらいでは恩を返すことなどできません。……これからも、何か私にできることがありましたら何でも言ってください」

「……ふふっ、マーサ、それは言い過ぎですよ。でも、ありがとうございます。……そろそろ移動しましょうか。皆、ついて来てくれる?ただし、静かにね」


 綺麗になった彼等を連れて、地下室を出た。寝室に向かって歩いている間、皆は物珍しそうにきょろきょろと辺りを見回していたけれど、わたしがお願いした通りに声は出さずに静かにしれくれていた。


 ちなみに、ネラやミラ、アリスは相変わらずわたしのすぐそばにいる。その様子を見たアリス達は、呆れたように首を振っていたけれど、三人はお構いなしだった。もしかすると結構マイペースなのかもしれない。


……まあ、ネラとミラがマイペースなのはなんとなく分かってたけどね。


「ここが寝室。今日から皆に使ってもらうことになるわ。……

一部屋につき使える人数が限られているから、何人かごとに分かれてもらうわ」


 今日からの部屋割りはマーサに決めてもらおうと思っていたので、わたしはマーサの方を向いた。


「マーサ、どの部屋を誰が使うのか、決めてもらえますか?」

「はい」


 使う部屋が決められたところで、わたしは時計を確認する。あっという間に時間は経ち、もう帰らなければいけない時間となっていた。


「マーサ、わたし達はそろそろ帰らせてもらいますね。今日話し合って決めたことは早めに実行できるようにお願いします。もし行き詰まった時は相談してください。協力できることなら何でもしますから。……魔石が用意できるのはしばらく後になってしまうかもしれませんが、出来るだけ早くに持って来ます」

「分かりました。それに、魔石のことはお気になさらないでください。今日もありがとうございました」

「皆、わたしはもう帰るわ。また今度来るから、何か分からないことや不安なことがあったらその時に教えてね」


「もう帰っちゃうのー?」と言っているネラ、ミラ、に苦笑しながら、わたし達は孤児院を後にした。


******


 そして、一週間後。


 あれからも孤児院には定期的に行っていて、その後の様子を尋ねてみたところ、特に大きな問題は起きていないらしい。小さなところでは今までとの違いに戸惑ったり、悩んだりすることはあるらしいけれど、他の職員とも相談して何とかやっているらしい。


 無茶を言ってしまったかもしれないと少し反省していたわたし。


 けれど、マーサが「確かに大変なこともありますが、アンザ様がいらっしゃった時に比べれば子供達も楽しそうですし、状況は良くなっていますから。セレナ様のおかげです」と言ってくれたことで気が軽くなり、間違っていなかったのだと思えた。


 帳簿については、翌日にリーナにこの世界での書き方を教えてもらった。


 これまではやはりというか何というか、子供達のために充てられている予算が少なかった。その中で不要だと思うものを削減し、必要だと思うものは増やしてみた。


 そして、マーサに見せて許可をもらった上で確定とした。孤児院の運営についてはわたしには分からないことが多かったので、実際にその場で生活してきたマーサに確認してもらうしかなかったのだ。


 また、属性検査のための魔石は、ユリウスとも相談してわたし達が採りに行くことになった。行くのはダンジョンだ。ダンジョンでは魔物が自然発生するので、魔石や毛皮などの素材を集めたい人にとっては適しているのだと教えてもらった。


 魔物の肉は食べることができ、普通の肉よりも美味しいらしい。わたしの食事の時にも出てきていたらしく、結構驚いた。


 また、毛皮は寒い時に重宝するので、お店で買い取ってもらうことができるのだそうだ。種類や大きさ、質によっては小金貨以上の値段で売れることもあるらしい。


 だから、魔石は孤児院の全員分に到達するまで魔法で保管しておいて、肉は孤児院に寄付しようかなと思っている。もし毛皮も採れたら売ってそのお金の何割かも寄付しようと考えているのだ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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