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ここから異世界編です。
目が覚めると、わたしは全く知らない場所にいた。馴染み深い自分の部屋でもないどこか。
とても上質なベッドの上で寝ていると言うことだけは分かる。何故なら、触れているシーツやクッションがすごくふわふわで気持ちいいから。
とりあえず上半身を起こし、周りの様子を眺める。わたしが今まで寝ていたベッドは、なんと天蓋付きのものだった。高い天井からは、薄いピンクのレースが垂れている。そのため、レースの奥の様子はあまりよく分からない。気配はしないので、誰も人はいないようだ。
それはともかく、何故わたしがこんな所にいるのかが分からない。
確か、わたしはいつも通り学校に行ったはずだ。それで、家に帰ろうとしていたときでに谷口さんに声を掛けられて……。
「……わたし、死んだの?」
そう考えたのは、歩道橋から真っ逆さまに落ちたら無事ではいられないからだ。むしろ、普通なら死ぬ。
つまり、わたしも死んだと考えるのが普通だ。そして、ここは天国なのだと言われた方が納得できる。地獄に行くような悪いことはしていない。そう信じたい。
ふいに、頭に痛みを感じ両手で頭を押さえた。すると、視界の隅を何か金色のものがよぎった。その正体は、一束の髪の毛だった。
その髪の毛はわたしのもののようだ。何故分かったのかというと、手に取って引っ張ってみると頭に鈍い痛みを感じたから。この痛みは、先ほど感じたものとは違う。
「え?なんで?」
わたしの髪は、真っ黒のロングストレートだ。産まれてからずっと同じ黒だったから、同級生の明るい茶色の髪の毛が羨ましかったのだ。だからといって、髪を染めようとは思わなかったけれど。
とにかく、初めたわけでもないため、わたしの髪が金髪であることは有り得ないのだ。
自分の身に起こっていることが分からず、髪を掴んで見ながら首を傾げる。
そのとき、もう一つの違和感に気がついた。
なんと、わたしの手がいつもより小さく見える。目が覚める前までに見ていた自分の手に比べると、その違いは歴然だ。しかも、何故かぷよぷよしている気がする。まるで、小さい子の手のようだ。
小さい子のものといえば、先程出した声も、少し高かった。
「……どういうこと?何が起きてるの?」
そう呟いたとき、レースの向こうで扉が開き、誰かが中に入ってきた気配がした。レースからもうっすらと影が見える。
その人影は、わたしが座っているベッドの方に慌てた様子で駆け寄ってきた。
「お嬢様!お気づきになったのですね!」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。