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「では、これからまずセレスティーナ様の体力がどれ程あるのかを見させていただきますね」
「ええ。よろしくお願いします、ユリウス先生!」
わたしが冗談めかしてそう言うと、ユリウスは笑った。
「まず、このグラウンドをできるだけ長く走ってみてください。一定のペースで走れると更に良いですね」
今わたしとユリウスがいるのは、グラウンドのようなところだ。地面は土で、陸上競技場のように広い。
「分かったわ」
わたしはそのまま走り始める。リズムよく、呼吸に気をつけて走ると、一分くらいで一周できた。
一周が恐らく三百メートルほどなので、わたしの走る速さは秒速五メートルくらいだろう。そのまま足を止めることなく走り続ける。
速度を変えずに八周目を走り終えると、ユリウスが声を上げた。
「セレスティーナ様、もう大丈夫です。お疲れ様でした」
さすがにわたしの息は少し切れていて、喉の乾きを感じたので、魔法で水を出して飲む。
「驚きました。これほど走り続けられるとは思いませんでした。……体力面は特に問題なさそうですね。先程の店でも剣は手に持てていましたし、後はどれくらい持ち続けられるか、ですね。剣は重いですから」
お店で手に持った時の重さを思い出す。確かに重かった。金属でできているのだから当たり前なのかも知れないけれど、今の状態のままだと、振り回せるようになるのは慣れるまで無理だと思う。
「セレスティーナ様、今は剣は持っていらっしゃいますか?」
「持っているわ」
わたしはしまっていた剣を取り出して持つ。持つだけならばなんとかなりそうだ。
「今日は素振りをしましょう。その剣を少しお貸りしてもよろしいですか?」
ユリウスに持っていた剣を手渡すと、彼はそれを両手で持って構えた。
「両手で剣を構えて、上から下へとこのように振り下ろしてください」
ユリウスが何度か剣を振り下ろして見本を見せてくれる。剣を返してもらったわたしはそれに倣って素振りを始めた。
前世でも、もちろん今世でも、剣を持ったことなど片手で数えるほどしかない。それも、学校の剣道の授業で使った木剣くらいだ。
この剣は重くて、何回か素振りを続けると腕が震えてきた。
……筋トレやってきてて良かった。もしやってなかったら確実に今の時点でばててたよ。
そんなことを思いながらひたすら剣を振っていると、額から汗が出てきた。
「セレスティーナ様、そろそろ一度休憩しましょう。お疲れ様でした」
ユリウスの声に、わたしは剣をしまって床に座った。
「……ふうう〜」
深呼吸して水を飲む。そしてしばらく休んでからわたしはもう一度素振りを再開した。
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「……よし、これくらいで終わりにしようかしら。そろそろ帰らないと」
訓練場に来てから早くも二時間が経っていた。
「ユリウス、今日はありがとう。また明日からもよろしくお願いするわ」
すぐそばでわたしの様子を見ていてくれたユリウスの方を向いてお礼を言う。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
そうして今日の稽古を終わらせたわたしとユリウスは、2人で一緒に屋敷へと戻ったのだった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。