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「……この孤児院での子供達の育て方は全て孤児院長であるアンザ様によって定められているのです」

「つまり、こんな状況にさせているのはそのアンザ、という人だということですか?」

「はい。以前は、どうにか環境の改善をしようとした者もいたのですが……アンザ様によってこの孤児院から追い出されてしまいました。ですので、私はせめて子供達の置かれている環境がこれ以上悪くならないようにしようと考えたのです。……申し訳ございません」

「マーサを責めたい訳ではありません。……けれど、変ですね。この孤児院には、貴族の方からの寄付があるはずです。それらがあれば、最低限健康に育つくらいの生活はできると思うのですが……。寄付されたものは、どのように扱われるのですか?」

「孤児院に寄付されるものは、全てアンザ様が管理なさっております。そして、アンザ様が使い道を決められるのです」

「……そうなのですか」


 恐らく、寄付自体は充分にされているはずだ。それがきちんと使われていないということは、アンザが横領しているのだろう。もしアンザが横領をしていないとしても、孤児院長としては失格だ。


……どうにかしてその証拠をおさえないと。後で調べよう。


 わたしのこれからの行動に、孤児院長であるアンザの調査が追加された。


「色々と教えてくれてありがとうございます。助かりました。これからも定期的にこの孤児院には来ようと思うので、マーサは子供達のことをよく見ていてください」

「もちろんです。お待ちしていますね」


 わたし達は地下室から階段を上がって一階に移動する。意外と時間が経っていたようで、孤児院を出るともう二時近くになっていた。


「お嬢様、そろそろ迎えの馬車が参ります」

「もうこんな時間になっていたのね。馬車はどこに来る予定になっているの?」

「来た時と同じ、ホークス商会付近です」

「そう、じゃあ移動しましょう」



 屋敷に帰ってきたわたしは、部屋についてから収納していたドレス類を取り出し、片付けてもらった。


「ユリウス、昨日言っていた体力を調べるというのは、早速やれるかしら?」

「はい。この時間帯でしたら、ウィリアム様やアルバート様の剣術の稽古も終わっているでしょうし、問題ございません」

「じゃあまず着替えてから行くわ。どこでやるの?」

「騎士団の訓練場を使います」

「分かったわ。じゃあ、十五分後くらいには始められるように用意するわね」


 この国には、王立騎士団だけでなく、それぞれの領地ほとんどに騎士団が存在する。それはこのウェルストン公爵家の領地も例外ではなく、その騎士団が訓練をする際に使用する訓練場があるのだ。


 徒歩約十分とこの屋敷の近くなので、馬車も必要ない。わたしも一応場所は知っているので、一人でも行けるのだ。


 ユリウスは一足先に訓練場へと向かい、わたしは服を着替える。ワンピースはそのまま着ていたので、自分一人で着替えを終わらせられた。


 今の時間はまだ太陽が沈んでいないので、日焼けの心配がある。そこでわたしは、魔法で薄い空気の層を作り、それを肌にまとわせることにした。肌と言っても、露出している足や腕、首筋や顔だけなのだけれど。


 リーナに一言告げてから、わたしは屋敷を出た。


「ユリウス、おまたせ」

「いえ、大丈夫ですよ。早かったですね」


 実は、屋敷からここまで走ってきたのだ。だから、ユリウスと別れてからまだ十分も経っていない。


……走りながら魔法を使い続けるのって、意外と大変なんだね。毎日続けてたらもっと効率的に使えるようになるかも?


 走っていると集中力が少しとはいえ落ちるので、空気の層の厚みが場所によって変わらないようにすることに意識が持っていかれた。だから、走るスピードが遅くなってしまった。


 ただ、この半年間で確実に体力はついていたようで、五分間走り続けても息が切れることはなかった。とはいえ走っていたのは五分間だけなので、前世のころよりも体力があるかと聞かれると、そこは何とも言えない。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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