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「とてもお似合いですよ、セレスティーナ様」


 戻ってきたハリスがそう言って褒めてくれた。


「ふふっ、ありがとうございます」


……人から褒めてもらえるのは、お世辞でも嬉しいものだね。


「……お買い上げいただいた品やそちらのドレスなどは、ウェルストン公爵家宛にお届けいたしましょうか?」

「いいえ、大丈夫です。持ち帰ります」

「では、箱にお詰めいたしますね」

「ありがとうございます。お願いします」


 買った服やドレスを箱に入れてもらい、わたし達は部屋を出た。


「ハリス、マルク、今日はありがとうございました。またドレスを売りにこちらに来させていただくかもしれません。その時はよろしくお願いします」

「ええ。いつでもお越しください。従業員一同、お待ちしております」


 ハリスとマルクに見送られ、わたし達はホークス商会を後にした。


 そして、箱を持ってくれているリーナとユリウスを連れ、人の少ない建物と建物の間に向かって歩いていった。


「お嬢様?」


 不思議そうなリーナの声を聞きながら、わたしは収納魔法の亜空間の入り口を開いた。


「……なっ」

「……嘘でしょう……」

「……?二人共、今持っているその箱を、この中に入れてもらえる?……重いでしょう?まだいろいろと歩くことになるから」


 これから剣を売っているお店に行くつもりなので、わたしの荷物を持っていてもらうというのは少し気が重いのだ。


 そう思って二人に話したわけだけれど、何故か驚愕している気配を感じる。


……何で?あ、わたしが魔法を使えることを初めて知ったから?


「お、お嬢様、その魔法は……?」

「え?あ、収納魔法よ。便利だからよく使ってるのよ。現に今も色々と入っているわ。……だから二人も遠慮しないで入れてちょうだい」


 わたしがそう言うと、二人は躊躇う様子を見せながらわたしのすぐそばに開いている入り口の中へ箱を入れていった。彼等が何も持っていないことを確認して、わたしは収納魔法を解除した。


「これで良し。後は、屋敷に戻ってからわたしの部屋で出すわね。って、どうしたの、二人共」


 二人は未だに躊躇い……というか驚愕の表情を浮かべていて、そのことを不思議に思ったわたしはそう尋ねた。お互いに顔を合わせたリーナとユリウス。そして、こちらを向くとユリウスが口を開いた。


「……セレスティーナ様、この魔法はいつから使っていらっしゃるのですか?」

「だいたい半年前ね」

「ということは、その時点でお嬢様はまだ四歳……」

「セレスティーナ様、貴女が魔法を使えることは、誰にも教えないほうが良いでしょう。ウィリアム様、アルバート様だけでなく、旦那様にも。……もちろん、私達もこのことは他言しません」

「ユリウスの言う通りです。せめてあと三年は秘密にしておいてください」


……どういうこと?


 別に、魔法が使えることを内緒にすることは良い。これまでも誰にも教えていないし、今回のように必要にならない限りは言うつもりはなかったからだ。


 でも、ユリウスに続いてリーナまでがそう言う理由が分からない。


「えーと、魔法が使えることを誰にも言わないということについては分かったわ。けれど、どうして?」

「本来、魔法とは学園に入学してから学ぶものなのです。高位貴族や王族の皆様などは、学園入学の二、三年前……つまり七歳以降に予習として学ばれることもありますが……普通、それよりも幼い方が学ぼうとしてもできることではありません。それほど魔法は難しいのです」

「ですから、お嬢様のように貴族令嬢でありながら四歳の時点で魔法を使える、などというのは聞いたことがありません」

「そうだったの……?全く知らなかったわ」


 でも、それが理由にはならない気がする。別に悪いことではないと思うからだ。そう思ったわたしだったけれど、次のユリウスの言葉によって青ざめることになる。


「これは、八歳頃から魔法を習い始め、使えるようになった方々の様子から考えられていることなのですが……魔法を幼い頃から使っていらっしゃる方は、魔力も多いことが多いです。万が一、他の貴族などにまだ四歳であるにも関わらず、魔法が使えるなどと広まれば、下手をすると、お嬢様を誘拐しその力を私欲のために使おうなどと考える貴族が出てくるかもしれません」

「お嬢様をそんな危険に晒す訳には絶対に参りません」


 彼等の言葉に、一瞬で顔から血の気が引く。


……嘘でしょ。そんなことがあるなんて……。


「……分かったわ。どうしても使う必要がある時以外、リーナとユリウス以外の人の前では魔法は使わないようにするわね」

「ぜひそうしてください」



最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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