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「服はこの六着で大丈夫です。次は、お財布ですね」
わたしがそう言うと、マルクが従業員さん達が運んできてくれた箱から次々とお財布を出していった。
「……たくさんありますね。これは?」
「そちらは、ショルダーバッグに財布がついている形になっております。財布は取り外し可能ですので、バッグだけ、または財布だけ、という使い方も可能です」
……良いかも。バッグも欲しいと思ってたし。
「それにします」
わたしは財布付きのショルダーバッグ、つまり前世で言うウォレットショルダーを買うことにした。色は何色かあったけれど黒にした。
……黒だったらどんな服とでも合うからね。
「お買い求めいただき、ありがとうございます。お譲りいただいたドレスのお値段から、お買い上げくださった品の値段を差し引いた金額がこちらになります。お確かめください」
改めて紙を見ると、確かにわたしが今選んだ服やお財布の値段が引かれている。それでも、やはりドレスは普通の服よりも高いらしく、今の時点でもらえる予定の金額は、意外と高かった。
……こんなに高いドレスを何着も買える公爵家って凄いよね。だって、一着で大金貨何枚分もするんだよ?
この大金貨とは、この世界で使われているお金の1つだ。大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、銅貨、の順で価値が高い。分かりやすく日本円を基準にして表してみると、大金貨は約十万円、金貨は約一円、大銀貨は千円……という風に、それぞれ位が一桁ずつ変わる。銅貨が十円だ。
ちなみに、星金貨というものも存在している。星金貨はなんと百万円に値する。それほど価値のあるものなので、普通は使用されないのだ。
そして、今日わたしの手に入るお金は、全部で大金貨が一枚、金貨が二枚、大銀貨が八枚である。つまり、十二万八千円。どう考えても子供が持つお金ではない。
……まあ、持っていたとしても余程のことがない限り使わないんだけれどね。
今日はこの後剣を買う予定なので何円かは減るだろうが、大半は貯金に回すつもりなのだ。
「ハリス、わたし、今買った服に着替えていきたいのですけれど、どこかに着替える場所はありますか?」
せっかく外を歩けるように服を買ったのだから、早く着替えてしまいたい。
「でしたら、どうぞこの部屋をお使いください。私共は一度退室いたします。お着替えが終わりましたらお声がけください」
そう言って、ハリスとマルクは出ていった。
「私も外に出てますね」
ユリウスも部屋から出ていき、今この場にはわたしとリーナしかいない。
……皆待ってるんだし、早く着替えないと。
「リーナ、わたしはこのドレスを脱ぐから、手伝ってくれるかしら?」
「もちろんです」
リーナに手伝ってもらってドレスを脱ぐ。
「今日はこのワンピースにするわ。これならわたしだけでも着れそうだもの」
わたしが買ったワンピースは、前世で着ていたものとほぼ同じ形だ。だから、いつものようにリーナに手伝ってもらうのではなく、自分だけで着てみた。
「ああ。やっぱり大丈夫だったわ」
「素晴らしいです、お嬢様。ご自分お一人だけで着替えをなさるなんて……」
リーナは感動しているようだけれど、何故なのか全く分からない。
「……自分にできること、しかも当たり前のことを自分でやっただけよ?そんな風に言われるような凄いことかしら。……まあ良いわ。リーナ、着替えが終わったと外にいる皆に伝えてくれるかしら?」
「わかりました」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。