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料理場から出たわたしは、部屋へと戻った。今日は、チョコクッキーを作ったのだけれど、うまくできたと思う。まだ食べてはおらず、部屋で食べようと思っているのだ。だから今、わたしはクッキーが乗ったお皿を持っている。
「あら、リーナ。ここにいたの?」
「お嬢様。おかえりなさいませ」
「はい。これ、今作ったばかりだからできたてよ。どうぞ食べて。わたしも今から食べるから」
「ありがとうございます」
わたしはお茶を淹れてソファに座った。持ってきたお皿は目の前ローテーブルの上に置く。
「ん、まあまあかしら」
一口食べてみたけれど、いつもと同じような出来栄えだと思う。つまり、人にあげるには全く問題ない。わたしの呟きに、リーナが苦笑した。
「お嬢様がお作りになったものは全て美味しいですよ」
「そう?ありがとう。……そうだ、リーナ。伝えたいことがあるのだけれど、今話しても大丈夫かしら」
「ええ。もちろんです」
「わたし、誕生日のお祝いとして、お父様に自由に外出をする許可をいただいたの。明日から出かけても大丈夫?」
「外出されるのは何時頃のご予定ですか?」
「うーん……昼食後かしら。出来れば、昼食の時間をいつもより早めて、できるだけ長く外に出ていられるようにしたいわ」
「分かりました。では、料理場の方に明日の昼食を早めるように伝えておきますね。十一時頃でよろしいでしょうか?」
「ええ。お願いするわ。……それと、前に着られなくなってしまったドレスを取っておくようにと頼んだでしょう?明日、それを売ることはできるかしら?お父様は好きに扱って良いと仰ってくださったのだけれど。……お金はどうしても必要だと思って。外に出るにあたって必要な物もあるのだし」
「そうですね。大丈夫だと思います。お嬢様のドレスは保管状態も良いですから。ドレスを買い取ってくれそうな商店に心当たりがあります。そちらの方にも連絡を取っておきましょう」
「ありがとう」
流石リーナ。とても有能である。
「お嬢様、これからのためにもう一人お嬢様つきの使用人を増やしてはどうでしょう?」
リーナがそんな提案をしてきた。確かに、今のリーナはわたしの身の回りの世話を一人でやってくれている訳で、負担は大きいかもしれない。
「……リーナが少しでも楽になるのならわたしは構わないけれど、それはお父様の許可が必要なのではないのかしら?」
「お嬢様が望まれたことに関しては、自由にして良いと旦那様からのお言葉をいただいております。ですので、特に問題はないかと。後で旦那様に一応ご報告しておきます」
「分かったわ。……その使用人に心当たりはあるの?」
「はい。男性なのですが、優秀なので、お嬢様のお役に立てるかと」
「そう。では、この部屋に連れてきてもらってもよいかしら?そしてその人にわたしつきの使用人になってくれるか聞いてみるわ」
しばらくしてリーナが連れてきたのは黒い髪にエメラルドのような明るい黄緑色の瞳を持った細身の男性だった。久しぶりに見た馴染みの深い黒髪に、わたしは懐かしさを感じた。モノクルを付けているユリウスは、理知的な印象を与える。
「お嬢様、こちらはユリウスです」
「セレスティーナ様、私はユリウスと申します。この度はセレスティーナ様つきにしてくださるとのこと、光栄に存じます」
……話し方まで理知的だった。何歳なんだろう?見た目は若いけど、すごく大人びて見えるよ。
そう考えたところで、わたしはユリウスが既にわたしつきになることを決めているような風に言ったことに気づいた。
「……あの、ユリウス。ユリウスはわたしつきになってくれるのかしら?」
「もちろんでございます」
わたしが聞くよりも前に本人の中では決まっていたようだ。驚きである。
「ありがとう。……今日からよろしくね、ユリウス」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしします」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。