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次は、この世界についてだ。
これは本で知ったことなのだが、多くの国が貴族制度を採用していて、わたし達が住んでいるアリステア王国のみならず、その周辺国も人々は平民と貴族という身分で隔てられている。その中でも、アリステア王国は国民の魔力が高いことで有名なのだそうだ。
この世界の人は大小の差はあれど、誰でも魔力を少なからず所有しているらしい。長い歴史の中で、魔力量が多い人達が貴族として遇されてきたのだ。
ここで問題が一つ。それは、「貴族、つまり魔力の多い女性はなかなか生まれにくい」ということ。
その理由は明らかにされていないそうだが、生まれつきの魔力量が多い者には男性が多い。そして、魔力量が多い貴族からは同じように魔力量が多いものが生まれる。貴族にも魔力量の差は存在するけれど、平民と比べれば総じて魔力は多いのだ。
ただし、なかなか生まれにくいとは言っても、それは男性に比べれば多少は、というレベルのものらしい。だから、男女比は男性が六、女性が四ぐらいなのだそうだ。
比で考えればそれほど差はないように思えるけれど、それは間違いだった。意外と女性は少ないのである。
……学校のクラスで例えると、一クラス四十人だとして、女子が一六人、男子が二十四人ってことだからね。よく考えてみれば少なかったよ。
ただ、日本だってどちらかといえば女性の方が少なかったと思う。
……あれ、それは学校だけだったかな?日本全体で見たら男性の方が多かったような気もする。どっちだっけ?
とにかく、女性の方が少しだけ少ないというのが現実のようだった。
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昼食後にお父様の執務室へと呼ばれていたわたしは、今執務室へと向かっていた。
「お父様、セレスティーナです」
「ああ、セレナか。入っておいで」
ノックをして中にいるであろうお父様に声をかけると、このような返事が返ってきたので、その言葉の通り中へと入った。
「お父様、お話があるとのことでしたが、どういったご要件ですか?」
「……セレナは五歳なのにとてもしっかりしているね。流石私の自慢の娘だよ」
「ふふっ、ありがとうございます。お父様にそう言っていただけるなんて嬉しいです」
ちなみに、この話し方はわたしが意識している訳ではなく、自然になってしまう。多分、セレスティーナはわたしが前世の記憶を思い出す前にこのように話していたのだろう。それで、このお嬢様然とした話し方が身についているのだと思う。
……あ、セレスティーナがお嬢様然じゃなくて、正真正銘のお嬢様だったね。公爵家の長女だし。
「セレナの五歳の誕生日がもうすぐ来るだろう?お祝いにほしいものはあるかい?なんでも良いよ。宝石でも、ドレスでも、新しい別荘でも、鉱山でも……ああ、去年と同じように我が公爵家が所有している土地をもう一つあげようか?」
「お父様、ちょっとお待ちくださいませ」
宝石やドレスはまだしも、別荘に鉱山とはなんだ。それに、去年土地をもらったことも初めて知った。どう考えても四歳の子供に誕生日プレゼントとして渡すものではない。
今、欲しい物を考えてみると、あまり思い当たる物がないことに気づいた。公爵家の一員として、贅沢な暮らしをさせてもらっているし、玲奈だったときからわたしには物欲というものがあまりないのだ。
「……お父様、それは、物以外でも良いのですか?」
「もちろんだよ。なんでも言ってごらん」
「では、自由に外出する許可をください」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。