109 セドリックside.
今は気になることが一つ。
叔母が言っていた化物という単語だ。どうしてそんなことを言われなければいけないのかが全く分からなかった。
話題から言えば僕が魔法を使ったことなのだろうけれど、それの何がいけないのか分からない。
大抵は七歳ごろになってから魔法を使う練習を始める。
あと三ヶ月ほどが経てば、僕を公爵家に迎え入れるために訪れたウェルストン公爵からそう教えてもらえるのだが、今の僕にそんなことが分かるはずもなかった。
なんで急に化物だとかおかしいだとか言われるようになったのか疑問に思いながら着いて行った部屋は、今までとは全く異なる部屋だった。
叔父が来てから僕が過ごすようになった部屋の半分ほどしかない更に小さな部屋。窓は一つしかない。こんな部屋がこの屋敷にあったことに驚いた。
「セドリック様には今日からここで生活するようにとのことです。明日からは使用人として私共と同じ生活をしていただくにあたり、始めの一週間は使用人のうちから誰かがつか
せていただきます」
叔父は僕を侯爵家の一員として片隅に置いておくことすら辞めるつもりのようだった。いつかそんな日がくるとはなんとなく考えていたし、叔父達の理不尽や僕への当たりには慣れているので、どうしてそんなことをなどと途方に暮れたりはしない。
せめて理由ぐらいは言ってほしいと思ったり、両親と暮らしていた時の僕がどんどん消えていくことに対して一抹の悲しみを覚えたりもするけれど、怒りを抱くことはなかった。
翌日から、僕は使用人として生活し始めた。
朝は今までよりも三時間ほど早く起きて色々な仕事をし、夜には死んだように眠る。食事は部屋に出されたものを食べた。圧倒的に品数が少なかったり、数日に一回は一食抜かれたり。そんな中で僕は少しずつ、でも確実に痩せていった。
叔母や従妹からは嫌がらせかのように雑用を押し付けられ、叔父の息子であるもう一人の従兄からは剣術の稽古と称した暴力を奮われることもあった。叔父は最早僕を視界にすら入れたくないらしく、何も関わってはこなかった。
従兄からの暴力に関しては魔法を使えば対処可能だったと思う。既に魔法が使えることは知られているのだ。その人数が増えようがどうということもなかった。けれど僕はそれをせず、ただ黙って堪えるだけだった。
後になって考えてみれば、僕はその時の時点で色々なことを諦めていたのだろう。
だからこそ何を言われても反応しなかったし、どんな理不尽な目に遭わされようと我慢していた。辛いのはもう嫌だと叫んでいる心に気づかないふりをして、ゆっくりと過ぎていく日々をただ変わらず繰り返していた。
セドリックの叔父家族が今までよりも群を増してかなり酷いです。不快な思いをなさった方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。




