表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/116

104








「現カウゼル侯爵であるクラーク・カウゼルは、流れる血だけで言えば僕の叔父です」

「“血だけで”言えば……?」


 その言い方に引っかかった。


……それだと、血以外だと叔父じゃない、みたいな……。


「はい。というのも、僕はあの人のことを家族だと思ったことはないんです。それは、両親が亡くなって、侯爵位を継いだ彼の家族の元に引き取られてからもです」


 セドリックの言葉に、わたしはかすかに眉を潜める。どういうことだろうか。


「僕の父と叔父は、かなり仲が悪かったそうです。父が叔父を嫌っているという訳ではなくて、むしろ父は叔父と仲良くしたいと考えていたようです。……なんだかんだ言って、世界に二人だけの兄弟だからでしょう」

「……まぁ、兄弟は仲良くするに越したことはないわね」

「でも叔父は、カウゼル侯爵家の後継者として優秀な成績を修め、社交の面でも自分より優れている父に劣等感を募らせていたようです。本人が言っていたのを聞いた訳ではありませんが、父を見る時の視線などから考えてもそれは正解だと思うんです」

「……そう」

「叔父は、嫌いな父の息子などを引き取りたいとはかんがえていなかったそうです。ただ、僕には他に親戚はいない。だから居場所を与えてやったことには感謝しろ、と」

「……それは、叔父様に言われたの?」

「はい。父と母が亡くなり、彼の元に過ごし始めた初日に言われました」

「……」


 親を一気に喪った子供に言う台詞がそれだとは。あまりの酷さに頭が痛くなった。


 溜息を吐きたいのを我慢して、目の前に座る義弟おとうとを見る。


……まだ幼いのに。


 固まっていたわたしは、続くセドリックの言葉に再び目を瞬くことになる。


「……それでも、その頃はまだよかったんです」

「……?」

「あの頃は、貴族令息としては一般的な生活をさせてはもらえましたから」


 嫌な予感がする。


「叔父達の元で暮らし始めてから一ヶ月ほどが経った時、あることが従兄に知られてしましました」

「あること、というのは……」


 セドリックはそこで言葉を呑み込んだ。


「僕、魔法が使えるんです。と言っても、姉様にとってはそこまで驚くことでもないのかもしれませんが」


 セドリックの言葉に、わたしはあれ?と首を傾げた。


……セドリックの前で魔法使ったことあったっけ?


 見せていないと思うけれど、セドリックがこんなことで嘘を吐く意味はない。


「……どうしてわかったの?わたしが魔法を使えること」

「僕は魔法……魔法というより魔力ですね。魔力の流れを見ることができてしまうんです」

「魔力の……流れ?」

「はい」


 わたしが首を傾げていると、セドリックがその「魔力の流れ」というものについて教えてくれた。


「普通なら、他人の魔力は見えません。例外は血縁関係が近い場合だけですが、そうだとしても見え方には差がありますよね?魔法によっては完全に見えないということもありますし」

「そう……かもしれないわね」


 実を言うとわたしは誰かの魔力を見たことがない。お父様もお兄様も、わたしの前では魔法を使わないからだ。


「それにもちろん、見ることが可能な範囲内でなければ魔法が使われたことには気づきません。ですが僕は、血の繋がりがなくても、つまり誰が魔法を使ったとしても魔力がうっすらと見えてしまうんです」

「それは不思議、ね……?」


 そう感心して頷きかけたところで、わたしはあることに気付いた。


「えぇとつまり、わたしがセドリックからは見えない位置で魔法を使っていたのにそれが分かったのは、そのせいということ?」

「……はい、そうです」

「へぇ……」

「……まぁそんな訳で、僕が魔法が使えること、そして他の人にはできない魔力感知ができると侯爵家の者に知られてしまったんです」

「ご両親はそのことを知っていたの?」


 わたしがそう尋ねると、セドリックは頷いた。


「はい。母も父もそのことについて驚きはしても嫌悪はしないでくれました。……だからこそ、普通に使ってしまったのですが」


 それはそうだ。


 今まで受け入れられていたことが実は普通ではないなんて想像できるはずがない。


「叔父達は嫌悪すると同時に恐怖を感じたようです」


 化物、と罵られました、とセドリックは言った。


「それからは生活が一変しました。化物には必要ないと言って、両親との思い出の品は捨てられました」


 今までに使っていた部屋も奪われ、使用人どころか下働き用の粗末な狭い部屋に押し入れられたらしい。そして使用人として扱き使われるようになったそうだ。


……酷い。


 ウェルストン公爵家の使用人達ですらもっと良い生活をしている。


「ただ、不憫に思われたのか、叔父夫婦とその子供達には見つからないようにしながらこっそりと助けてくれる使用人もいたんです」

「……そう」

「二年ほどが経ち、公爵様……義父上ちちうえが僕を引き取ってくれました。それで今にいたります」


……お父様、ありがとう。よくぞセドリックをそんな悪辣な環境から出してくれました。


 お父様の判断を内心で褒め称えるわたし。


「……ねぇ、セドリック。隣に座っても良いかしら?」

「え……はい、どうぞ」


 突然の質問に驚いたらしいセドリックだが、許可はもらった。わたしは立ち上がるとテーブルを回ってセドリックの隣に座り直した。


「!」


 セドリックが息を呑んだのは、わたしが隣にいる彼を抱きしめたから。


 何の脈絡もなくて悪いとは思うけれど、セドリックは抵抗しなかった。むしろ驚いて動けない、という方が正しいかもしれない。


「ごめんなさい、嫌だった?」


 もしかしたら急に抱きつかれて嫌だったのかもしれない。一応そう聞いてみると、小さく首が横に振られた。その反応に安心してわたしは再び口を開いた。


「……セドリック、話してくれて、ありがとう」


 頑張ったねとか、辛かったねとか。セドリックを労う言葉はいっぱいあると思う。けれど言わない。わたしにはセドリックがどんな思いで今までの日々を過ごしていたかなんて想像するしかできないし、本人にしかそれは分からないだろうから。


「これからはわたしが姉として、力の及ぶ限りセドリックを守るわ」

「……」

「不甲斐ないし、頼りにならないかもしれないし、事実ただの公爵令嬢なだけの今のわたしじゃあ何の役にも立てないかもしれないけれど、セドリックが悲しんだり苦しんだりするようには遭わせないようにするわ」

「……僕のこと、恐くないんですか?」


 セドリックは恐る恐ると言ったようにそう聞いてきた。








二週間ぶり、お久しぶりです!

アクセス数とかいいねとか評価とか増えてて嬉しかったです、ありがとうございます。

次話は来週または再来週には出せるようにはします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ