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「姉様は公爵令嬢でしょう?侍女もいるんですし、別に姉様がやる必要は……」

「……まぁ、そう思う人の方が多いでしょうね。ただわたしは、望めば大抵のことができる今のうちにできるだけ色々なことに挑戦しておきたいの」

「そう、ですか……」

「今は多少マシになったけれど、最初の方なんて散々だったのよ?」

「そうなんですか?」


 わたしの答えを聞いてなぜか驚愕しているセドリックに、おどけたように微笑んだ。


「ええ。温度が良くないのか色が移らなかったり、量が多すぎて濃くなったり。お茶の種類によって必要な量も温度も、もちろん出来上がるまでにかかる時間も変わるから、失敗ばかりしてたわ」


 数々のやらかしを思い出して目が遠くなった。最初の方はどんな味になっているかも分からないために自分で飲むしかない。しばらくしたら慣れたことでコツを掴んできて飲めるようになってきたけれど。


「……ふふっ、どうして驚くの?」

「いえ……姉様が失敗しているのが想像しにくくて」

「失敗ぐらいいくらでもするわよ、人間だもの。まぁでも、お茶を淹れられるっていう貴族の方が珍しいでしょうね」


 正真正銘の貴族は使用人に仕えられることに疑問も湧かないだろうし、と心の中で付け加える。


「貴方はカウゼル侯爵子息でしょう?だったら尚更」


 わたしがそう言うと、セドリックは目を見開いた。


「え」

「あら、違う?」

「いえ、あの……どうして姉様がご存知なんですか?」

「確か、ここ数年で事故によって亡くなった方はカウゼル侯爵夫妻しかいらっしゃらなかったはずよ」


 以前、そんな記事を目にしたことがあった。


「公爵様からお聞きになった訳ではないんですか……」

「公爵様?……お父様のことは父上とかそういう風に呼んだ方が良いと思うわよ、セドリックはわたし達の兄弟になったんだから」

「そうですね、気をつけます」

「えぇっと、お父様から聞いたかって話だったかしら?それは違うわよ。お父様からは昔の友人の息子だとしか伺っていないわ。友人夫妻が亡くなったから引き取ることにしたとも仰ってたわね」

「そう、ですか……」


 ついでに、お父様の友人であるならばそれ相応の身分を持っている人物ということになる。もしかしたら下級貴族とか、平民であるとかそういう身分かもしれないけれど。


 それなのにわたしがセドリックの両親が侯爵であると推測できた理由は、ただ単に身分制度というのはそれほど厄介なものだからだ。恐らくだけれど、友人になることまでは眉を潜められたとしても受け入れられるだろう。


 けれど、その息子を公爵家で引き取って息子として遇することは絶対に歓迎されない。というかそんなことをしたら公爵家をその地位から引きずり下ろしたいお腹の中が真っ黒な貴族達にあれこれ言われてこの家の品格が周りによって下げられる。


 だから何と思わなくもないけれど、先祖の方々が築き上げてきたものを一瞬で崩すようなことをお父様はしないだろう。引き取るにしても使用人として育てるとかそういう手段を取るはず。少なくともわたしがお父様の立場になって考えてみればそうする。


……お父様、良い人なんだけどちゃんと公爵としての行動を取らなきゃいけないからねぇ……。


 それをしなかったということは、それ(養子縁組)が許される程度の地位をセドリックは持っているということだ。そして、お父様から伝えられた「両親が事故で亡くなった」という事実。お父様の年代で事故で亡くなっていて、子供がいて、かつ貴族である人物。


 その全てに当てはまる人なんてなかなかいない。セドリックが前カウゼル侯爵の息子だと推測するのは簡単だ。


……まぁ、そのためにはこの国の貴族の情報は最低限知っとかなきゃいけないんだけどね。


 事故について知ったのは本当に偶然だ。図書室にある本のほとんどを読んでいるわたしだったけれど、ある日見覚えのない冊子を見つけたのだ。


……新しく増えた本かな?と思って読んでみたら事故とかその後のカウゼル家のことについて詳しく書いてあったんだもん。なんでこんなに詳しいんだろう、って驚いたよね。


 恐らくセドリックを引き取るにあたってお父様が個人的に調べたのだろう。何故その冊子がお父様の執務室ではなく図書室にあったのかは謎だけれど、まぁそれは気にしても意味がないことだと思ってスルーしている。


 セドリックはその答えで納得してくれたようだけれど、わたしが気になっているのは別のことだ。


「わたしが知りたいのは、どうして侯爵令息のセドリックがお茶の淹れ方なんてものを知っているのかということなのよね。わたしはまぁ例外として、普通知ろうともしないと思うのだけれど」


 それに、と続ける。


「今の侯爵はクラーク様よね?彼は貴方のお父様……前カウゼル侯爵の弟だから、貴方が引き取られるにしても彼のところだったんじゃないかしら?」


 わたしの言葉を聞いたセドリックの表情が固くなった。それを見て慌てるわたし。


「あ、言いたくなかったら言わなくて全然大丈夫よ?気になっただけだから、無理して言わせようなんて考えてないわ」

「いえ、大丈夫です。公爵様……父上もご存知のことではあるので」


 セドリックは俯き気味のまま、ぽつりぽつりと話し始めた。







しばらく投稿できてなかったので、今日は連日投稿にしました……!


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