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 あれから二年が経ち、わたしは今七歳になっていた。お兄様達は十歳になり、学園に通い出した。


 そんなある日のことである。


 二日ほど前からお父様は屋敷から出て、遠方まで行っている。「仕事なんだ」と言っていた。


 そして今日は、お父様が帰ってくる予定の日である。リーナによると、お父様の帰宅予定時間は夕食以降になるらしい。


 わたしとお兄様の三人だけでとる夕食を終え、部屋に戻って読書をしていると、扉がノックされた。


「……?リーナかしら」


 わたしは本を片付けると、椅子から降りて扉を開けた。


 わたしの就寝の準備を終えて退出したリーナが何か用事があって戻ってきたのかと思ったのだけれど、わたしのその予想は不正解だったようだ。


「……あら、リーナじゃなかったのね」


 扉を開けたその正面に立っていたのは、屋敷で働くメイドの一人だった。十代後半くらいの若い見た目をしている。比較的最近新しく雇われた人だったはずだ。わたしの何回か、屋敷の中で見かけたことがある。


「どうぞ。入ってもらって大丈夫よ」


 彼女を部屋に招き入れようとしたわたしだったけれど、首を横に振って断られた。


「いえ、私は旦那様からのご伝言を預かっただけなのです」

「お父様がお帰りになったの?」

「はい、先程」


 それは良い報せだ。


「今は執務室にいらっしゃるの?」

「はい。セレスティーナお嬢様に、執務室まで来てほしいとおっしゃっていました」

「それが伝言?」

「その通りでございます」

「分かったわ。教えてくれて、ありがとう」

「いえっ!滅相もございませんっ!」


 わたしが笑ってお礼を言うと、首をふるふると振ってそう言った彼女。心なしか顔が赤い気がする。


……どうしたんだろう、大丈夫かな?……っていうか、さりげない仕草が可愛い人だなぁ。


 わたしの方が彼女よりも恐らく十歳以上は年下なので失礼になるかもしれないけれど、彼女の様子が微笑ましいと思ってしまった。


「……ふふ。今すぐ行って良いのかしら?」

「……あ、恐らく大丈夫かと思われます。旦那様も、特には他には何もおっしゃっていませんでしたので」

「じゃあこのまま行くわね。わざわざここまで教えに来てくれて、ありがとう」

「では、私はこれで失礼させていただきます。おやすみなさいませ、セレスティーナお嬢様」

「おやすみなさい。お仕事お疲れ様」


 彼女は一礼すると、扉を静かに閉めた。


「ええっと、着替える必要は……ないわよね。ストールだけ羽織っていこうかしら」


 今のわたしの格好は、薄紫のネグリジェだ。これでもう少し年が上だったら、たとえ屋敷の中だったとしても出歩くのはあまり褒められたことではないのだけれど、今のわたしの年齢を考えればまぁ許容範囲内だろう。


 何より、お父様をあまり待たせる訳にはいかない。


 わたしは隣の衣服収納用の部屋に設置された棚からストールを一つ取り出すと、それを肩に羽織って部屋を出た。


 執務室に到着し、ノックをする。


「お父様、セレスティーナです」

「入っておいで」


 扉を開けると、扉のすぐ近くまで近づいてきていたお父様にすぐ抱き上げれた。


「セレナ!久しぶりだね、元気だったかい?遅くに呼んでしまって悪かったね」

「おかえりなさい、お父様。わたしは元気ですわ。それに、久しぶりとは言ってもたった三日ですよ」

「たとえ三日だとしても、私はセレナに会えなくてとても悲しかったよ。セレナは寂しくなかったかい?」

「……実のところは、少し寂しかったです。ですから、お父様がお帰りになったとメイドから聞いて嬉しかったですわ」


 そう言って少しだけ笑うと、お父様が胸を押さえた。


……ていうかお父様、わたしのこと、軽々と片手で持ててない?見た目よりも力ある……。


「うぅ、私の娘が可愛い……」


 そんな風に親馬鹿っぷりを発揮しているお父様だけれど、相変わらず若い。三十歳を超えているのに、しわなど一つもない。


……お父様って顔面凶器だからねぇ。


 今現在わたしは抱き上げられたままなので、当然お父様の整った顔か近くに来る訳で。結構眩しい。


 お父様だけでなく、二人のお兄様も、それにリーナとユリウスもと、わたしの周囲には顔面偏差値が高い人が多いので、セレスティーナになりたてだった時、つまり約三年前よりは慣れたけれど。


「それより、お父様。何かわたしに用事があったのではありませんか?」


 ここに来るように呼んだということは、話すことがあったのではないだろうか。


 流石のお父様でも、帰ってきたからというそれだけの理由で執務室まで呼びつけることはしないだろう。


 わたしは別に良いのだけれど、最初に遅くに呼んでしまって悪かったと言っていたので、多分違う用件があったのだろうと考えている。


 そう考えたわたしからの質問に、お父様は少しだけ表情を引き締めた。


 そしてわたしをソファの上に降ろした。


「その通りだよ、セレナ。流石わたしの賢い娘だ。実は、大事な話があるんだよ。セレナに来てもらったのは、それを話すためなんだ」


 その大事な話をするために、一回一回わたしを褒める言葉を挟んでくるお父様も流石と言うべきか。


「大事なお話、ですか」

「そう。今日から、セレナに弟ができるんだ」







100話到達です……!

ここまでずっと読んでくださった皆さんに感謝です!

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