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プロローグ

初作品です。誤字脱字、表現の間違いなども多々あると思いますが、暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。学生なので、更新が遅れることもあるかもしれません。できるだけ定期的に更新していくつもりではありますので、続きを楽しみにしてくださるとありがたいです。感想もお待ちしてます。

 わたしは、この日本に三百万人以上存在する、普通の学生だった。


 その日も、いつも通り学校に行き、授業を受けていた。


 昼食後の休み時間のこと。本を読んでいたわたしの目の前で、同級生のある女の子が転んだ。

 その女の子の名前は谷口綾香さん。胸まで伸びた茶色の髪を持つ、可愛らしい顔立ちをした女の子だ。


 彼女を助け起こそうと手を伸ばすと、顔を上げた谷口さんが涙目で私を見ながら立ち上がった。


「野中さん、ひどいです。なんで綾香のことつまずかせたんですか?」

「え?」


 その言葉にざわっとする教室。


 もちろん、わたしはそんなことはしていない。谷口さんが転んだときも読書をしていたし、谷口さんをつまずかせる理由もない。


「野中さん、綾香が通りかかっている事を知っていて足を出しましたよね」

「いえ、そんなことはしていないですけど……」


 もしかしたら、何かに当たって転んでしまったのを、わたしが机の下から出していた足だと勘違いしてしまったのかもしれない。わたしは足を出したりしていないけれど。


「おい、野中さんが足を出して谷口さんをつまづかせたらしいぞ」

「嘘だろ?野中さんがそんなことする人には見えないけど……」

「いや、でも谷口さんが嘘を吐く意味もないだろ」

「まあ、そうだな」


 他の同級生達も、わたしが足をつまずかせたのかと疑い始めている。


 谷口さんは、その可愛らしい容姿と明るい性格で、男女を問わず友達が多いのだ。そのなかでも、特に仲の良い人たちが彼女の言うことを信じてしまっている。


「野中さん、綾香は別に怒っている訳では無いんです。ただ、足がぶつかったんだ、と分かっているのなら、謝って欲しいだけです」


 それを言うなら、わたしもべつに謝ることが嫌な訳ではない。ので、最悪、どうにもならないようであれば謝ればいいか、なんて考えていた時だった。ある男の子が声を上げた。


「まあまあ谷口、落ち着いて」

「悠真くん!綾香は落ち着いてるよ!」


 声の主は相原悠真さん。サッカー部のエースで、女子生徒から人気がある……らしい。女の子達が話しているのを聞いただけなので、わたしはよく分からないけれど。


 その相原さんがどうして?と思い、頭の上に疑問符を浮かべるわたし。


 その目の前で、相原さんと谷口さんが話をしていた。


「そう?ならそのままでいいんだけど。谷口は、野中さんに足を引っかけられたって言いたいんだよね?」

「うん。でも、『言いたい』んじゃなくて、本当のことなんだよ!」

「まあ、それは一旦置いておいて。野中さん、谷口が言ってるように、君が足を出して彼女をつまずかせたのは本当?」


 相原さんに話しかけられ、我に返る。


「いいえ、そんなことしてません!というかまず、机から足を出してもいませんでしたし」

「そうだよね。俺にも、そう見えたよ。しかも、野中さんは谷口が転んだときも助けようと手を伸ばしていたしね。本当に野中さんが谷口をつまずかせたんだったら、そんなことしないと思う」


 相原さんはわたしが谷口さんをつまずかせたとは思っていないらしく、ほっとする。


「悠真くん!じゃあ、綾香が嘘を吐いているって言うの?」

「そうは言ってないよ。ただ、もしかしたら谷口の勘違いだったかもしれないとは思ってるけど」


 相原さんのわたしと同じ考えに、わたしは少し考えて谷口さんに話しかけた。


「谷口さん、わたしは足を出していないと思っていましたし、相原さんの言うように、谷口さんの勘違いだったのかもしれません。でも、谷口さんがそう考えるような行動を少しでもしてしまったんだと思います。ごめんなさい。李下に冠を正さずとも言いますし、次からは気をつけますね」


 わたしがそう言って謝ると、谷口さんは丸い目を更に見開いた。


「谷口、野中さんもこう言ってくれてることだし、この話はこれで終わりにしない?もうすぐ授業も始まるし」

「……分かった。悠真くんがそう言うなら。野中さん、これからは気をつけてくださいね!」


 谷口さんはそう言って、自分の席へと戻っていった。その時、何故か彼女に睨まれたような気がした。


 その様子を見て、わたしたちを周りで見ていた同級生も授業の用意に動き出す。


「……あの、相原さん!ありがとうございました」


 わたしは、まだその場にいた相原さんにお礼を言う。

 相原さんが間に入ってくれたおかげでこの騒ぎが収まったのは確かだ。


「いや、いいよ。そんなたいしたことしてないし。それより、俺たちクラスメイトなんだからさ、野中さんも俺のこと名前で呼びなよ。ずっと気になってたんだよね。ほかの奴らも俺のこと名前で呼んでるんだし。敬語もなしでいいよ」


 相原さんの思わぬ言葉に驚く。


「……じゃあ、お言葉に甘えて。悠真くんって呼ばせてもらうね」


 少し考えた後、わたしはその言葉を聞き入れることにした。


「じゃあ、授業始まるから俺は席に戻るよ」


 そう言って、悠真さんは自分の席に戻っていった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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