最終話 シェルレニア王女の幸せ
シェルレニアにとって、年齢の近い異性はザクロしかいなかった。しかも王族でも貴族でもない、元捨て子の男の子。彼が心を開いてくれて、初めて隣でサンドウィッチを食べた時のことは忘れもしない。最初は恐る恐るといった様子でサンドウィッチに手を付けていたのに、一口食べれば美味しさの虜。大きな口でがつがつ食べる様子は新鮮で、面白くて、見ていて飽きない。
護衛係に志願してくれた時の嬉しさは、天にも昇るほどだった。
おそらく、その頃からだろう。
シェルレニアがザクロを異性として見るようになったのは──
ただ、これが叶わない恋だと知っていた。
だから言わなかった。
言えなかった。
王女と護衛係。
そんなの結ばれるはずがないと。
でも精霊王は結婚を認めた。それどころか、王族の結婚に関して政略結婚だけでなく自由恋愛での結婚を認めていく風習を作ろうと言ってくださった。
何もかもが嬉しくて、シェルレニアはスキップしてしまう。
「姫さん、そんな変な歩き方してると転びますよ」
「うぐっ! こ、これはスキップよ!」
「へー」
「なによその顔!」
にやりと、ザクロは笑い、シェルレニアの顎に手をかけた。
シェルレニアはドキッとした。
「いま、キスされるんじゃないかって思いました?」
「っっっっザクロのバカ!!」
「ははっ、すいやせん。元捨て子なもんで。んじゃまあ、お詫びの印っていうことで」
ちゅっ、と。
可愛らしいリップ音が鳴る。
シェルレニアは、しばらく呆然としていた。
そして、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。
「はははは!! 林檎みたい」
「お、お返しするわ!」
負けじと、シェルレニアもザクロの首を掴んで、唇にそっと触れる。
しかしザクロは、にやにや笑うだけで照れる様子はない。
「これ、わたし損じゃない……!?」
「俺は得をしました。ほら、姫さん。早く行かなくていいんですか。王国一のケーキ、売り切れちゃいますよ」
「あ、そうだった。行くわよ。おまえも早く来なさい!」
ザクロの隣で、シェルレニアの笑顔がはじけていた。
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