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第4話 ライゴン王国


 その頃、ライゴン王国では──


「ようやく君とずっと一緒にいられる」

「もう、ノウス様ったら!」


 きゃっきゃうふふな雰囲気が流れるこの二人、ノウス王子とレディーナだ。

 精霊王が怒りに震えている事も知らないノウス王子は、邪魔者がいなくなった解放感からか、ベラベラと喋り始めた。


「あの女は本当に薄気味が悪かった。友好国の王女だから仕方なく婚約したけど、嫌がらせされても表情一つ変えない。ほんと、俺の気持ち分かってほしかったよ。君はお呼びじゃない、さっさと国に帰れと。まさか半年も王城に居座るとは思わなかったな」

「そうですよね。確かにシェルレニア様はお美しい方でしたが、殿下の好みではありませんもんね」

「そうそう! あんな薄気味悪くて無口で、そのくせ国同士の友好がどうのこうのって説教してくるんだ。おまえは何様なんだって。そんな女よりも、レディーナのようなみんなを笑顔にさせる女性のほうが好ましいね」

「もうっ! 恥ずかしいです!!」

「事実じゃないか」


 そこでふと、ノウス王子は表情を曇らせた。

 去り際にシェルレニア王女から言われた言葉が気になったのだ。


「ねえ、魅了を使っているって本当か?」

「…………そ、そんなことあるわけないじゃないですかー。そ、れ、に、私みたいな平民の娘が、魅了なんていう魔術を使えるわけないですし」

「そうか。……そうだよな、疑ってすまないな。レディーナ」

「ノウス様……」


 燃えあがる様な恋愛。

 互いの事しか見えていない、盲目的な愛を育む二人のもとへ、物凄い足音を立てて誰かがやってきた。


 

 そんな二人のもとへ、物凄い足音を立てて誰かがやってきた。


「おい、ノウス!! 貴様、なんて事をしてくれたんだ!!」

「いだだだだだ!! な、なにするんだよ親父!!」


 顔を真っ赤にして、ややぽっちゃり気味のライゴン国王がノウスに怒鳴った。


「シェルレニア王女に婚約破棄を叩きつけだだけでなく、彼らを格下呼ばわりして国に返したそうじゃないか!! 貴様、これが何を意味しているか分かっているのか馬鹿息子め!!」

「はあ!? 親父だって精霊王の血族はみんな揃いもそろって人間に使役されるだけの腑抜けた存在だって言ったじゃないか!! それに議会での決定はどうなるんだよ!!?」

「ゆくゆくは、ライゴン王国も精霊王国への依存関係を脱却せねばならない。だが、それはこんな形で、しかも今じゃない!! 突っ走りよって!!」

「じゃあ余計に良かったじゃないか! ライゴン王国はもうあんな国に助けてもらわなくても良いだろ!!」

「っ貴様はどこまで馬鹿なのだ! いいか、貴様がシェルレニア王女に酷い暴言を放ち国に返したおかげで、向こうの国は怒り心頭だ。さきほど宣戦布告の文が届いた。彼らに我が国を攻め入る大義名分を与えてどうするのだ! 我が国の諸外国からの信頼は暴落の一途だぞ!?」

「そ、そんなの俺に言われたって……」


 甘やかされて育ったノウスは、あまり外交関係に詳しくない。

 もともと国王になる気などなかった。

 王子の仕事だって、ほとんど部下に押し付けている。

 

「今すぐ謝罪をしに行くぞ!!」

「えぇ!? せっかくレディーナと愛し合おうと思っていたのに」

「そんなことを言っている場合か!!」


 国王はノウスの首根っこを掴み、引きずるようにして国を発った。

 そして、精霊王国の玉座の間で、息子ともども土下座をした。


「うちの馬鹿息子がシェルレニア王女に大変、大変失礼な事を致しまして申し訳ございません。貴国に対し、我が国はなんら敵意など抱いておりません!! どうか、どうか開戦宣言を撤回していただきたく」

「ライゴン国王よ。我々は長きに渡り、友好な関係を築いてきた。寄り添ってきたつもりだった」

「で、では……」


 ライゴン国王の目が一瞬だけ期待に揺れる。

 けれども、玉座に座る精霊王を見て、国王の顔は絶望に染まった。


「娘が目を腫らして帰ってきた。この婚約が、どれほど重要な役割を持っているのか、貴国は分かっていなかったらしい」

「いいえそんなことは!!」

「国に帰れ。そのときには、我が精霊王国の軍勢が貴国の王都に攻め入ることだろう。……完全降伏するのなら、多少の条件は甘く見てやるが」


 すると、ライゴン国王の眉間に皺が寄った。


下手(したて)に出てやれば、何を言いますか。たかだか精霊術師の百や、二百、こちらには魔術師部隊が率いる数千の騎馬隊がいるのですぞ。精霊王こそ、よいのですか」

「では、降伏はしないと」

「ああ。おまえたち、国に帰還するぞ!! 戦の準備だ!!」


 ライゴン国王は、泡を吹いて気を失っている馬鹿王子を引きずりながら、国に帰った。

 その様子を、精霊王は憐れんだ目で見つめているのにも気付かずに。


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