昼休みの校舎横ベンチ 3
アンナの唐突な告白を聞いて一気に体温が上昇したが、隣にシオリがいることを思い出して顔に出ないように取り繕った。
「えっと……私がコウタ君の彼女って知ってて言ってるんだよね?それとも、もしかしてコウタ君……」
「ごめん!勝手だけどアンナには全部話しちゃって……でも変なことは言ってないし、ちゃんとシオリと付き合うことになったってことも伝えたから」
「でも仮だよね?」
間髪入れずに付け加えたアンナの目には、もはやシオリに対する敵意のようなものすら宿っていた。
「コウタ君がなんて言ったかは知らないけど、私たちは真剣に付き合ってるの。コウタ君を好きになっちゃう気持ちはわかるけど、残念ながら譲ることはできないわ。ごめんね」
シオリもシオリで対抗心剝き出しで答える。
「それを決めるのは綾城さんじゃないよ。さっき伊坂っちが言ってたもん、『俺は俺が好きな人が好き』って。てことは偶々綾城さんが最初に伝えただけで、私にもチャンスがあるはずだよね?ていうか悪いけど仲の良さなら綾城さんよりも私の方が何倍も良いからね」
「順序とか関係なくコウタ君は私を選んでくれたの。それに一緒にいる時間が長いからって仲が良いわけじゃないと思うなー。まあ、私たちは同じ中学校だったし、結局一番付き合いが長いのも私だけどね」
普段おっとりとしているシオリがここまで張り合うことなど滅多にない。そもそもシオリ相手に張り合おうとする人がいないという理由もあるが、だからこそ今の状況が珍しい。普段温厚な人が怒った時のような感覚に近い、特有の圧を感じる。
一方のアンナも、その朗らかな性格は誰からも親しまれ、人間関係に摩擦が生じたなんて話は聞いたことがない。そのアンナも引くどころか強気に張り合っている。
今二人の間には見えない火花が散っている。それだけ真剣に考えてくれているのだろう。自意識過剰かもしれないが、話の筋からして俺を取り合っているような今の状況。男だったら嬉しいものだと思っていたが、いざ自分が対象となってみればそんな気持ちに浸る余裕もなく、ただただ動揺しているだけだった。
どちらにどのような言葉をかけていいかわからず、このままもう少し様子を窺ってみようと思った矢先、二人の矛先が一斉に俺へ向いた。
「どうなの?伊坂っち!」「コウタ君はっきり言ってあげて」
きりっと胃が締め付けられる。どちらかを選ぶくらいならいっそのこと二人とも拒絶するべきか、停止寸前の思考回路は俺を楽な方へ導こうとするが、二人を大切に思う気持ちがなんとか踏みとどまらせる。必死に悩み抜いた末に出した答えは―――




