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帰り道 4

「中学の時からって……マジ?」


「疑ってるの?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど……そんな素振りなかったから……心当たりもないし……」


 仲は良かったが意識するほど近い関係ではなかった。俺自身目立った存在ではなかったが、幸いコミュニケーションをとるのは得意だった為、友達には恵まれていた。シオリもその中の一人という認識だった。シオリにとってもただの友達、もしくは顔見知り程度の存在だと思っていた。


「コウタ君はそうだと思う。でも私には……」


「その……いつからなんだ?どのタイミングで俺のこと……」


 動揺とはやる気持ちが俺を立ち上がらせていた。かといって詰め寄ることもできず、微妙な距離を保ったまま見つめ合っていた。


「んーとね……」


 ごくり、生唾を飲んでシオリの発する一音一音を待っていた。いつの間にか一挙一動に感情が振り回されている。少なくとも、誤解の真相、本当の気持ち、そして何よりシオリの纏う空気に、惹かれ始めているのは確かだった。


「あれは中学の……」


 さっきまで座っていたブランコがぎぃぎぃと軋んでいる。揺れるその様は不安定な俺の内心を表しているようだ。


「やっぱやーめた。今日はもう遅いし帰ろっか。続きはまた今度ね」


 わざとらしく引き付けるようにゆっくりと話し、焦らしたところでお預けをくらう。まんまとシオリの策略に乗せられた。溜めるほどの内容ではないのに、俺の頭には残り続ける。


「そこまで言っといてそれはないだろ?気になって仕方ないんだけど」


「うんうん。それでいいの。コウタ君は私のことだけ考えてればいいの」


 おもむろに近寄ってきたシオリは、両手を広げ優しく俺を包み込んだ。


「コウタ君ドキドキしてる。嬉しいなぁ」


 俺の胸に耳を当てながら笑うシオリに対して、俺に余裕はなかった。


「コウタ君の気持ちわかるよ。柚木さんのせいで女子を信用できなくなったんだよね。だから付き合うことに躊躇っちゃう」


 俺の心の声を代弁するかのようにシオリは語る。


「でも安心して。私はあの女みたいに裏切ったりしないから。ずーっとコウタ君だけを好きでいるから」


 根拠もないのに、どこか説得力がある。シオリの声は繊細なようで、不思議と芯の強さを感じる。


「さっきも言ったけど、私は別れる気はないよ。表面上でもいいから付き合ってほしい。大丈夫、すぐに私のこと好きになるから。もちろん無理にとは言わないけど……その場合は気を付けてね。あれだけ大勢の前で告白したんだから」


 やはり選択肢はあってないようなものだった。だが今回は他の人のことはどうでもよかった。

 想像していた形とは違っていて、まだわからないこともあるが、それでもお互いに腹を割って話せたことは大きな進歩だ。本当の気持ちを知ったことで、前向きに考えられる。このまま関係を築いていけば本当に―――。


「わかった。むしろこんな俺でよかったらこれからも仲良くしてほしい。曖昧な関係で申し訳ないけど、改めてよろしくお願いします」


 煮え切らない俺を、それでも好きと言ってくれるシオリの手をとった。

 こうして俺たちは、新たな一歩踏み出した。

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