タイムマシン
俺は毎年発表される世界長者番付の3番以内に必ず載る男だ。
まあ御先祖様達が残してくれた遺産ではあるが。
企業の実務は弟に丸投げし、裏切られないように有価証券の類いは全て押さえている。
弟に実務を任せて俺は何をやっているかと言うと、趣味のハンティングだ。
ゾウやクジラなどを狩ってきたがもっと大物を狩ってみたいとの思いが募る。
例えば恐竜なんかを狩ってみたい。
そんな俺のところに怪しい話しを持ってきた奴がいる。
何でもそいつは28世紀の人間でタイムマシンを開発し21世紀まで試運転を兼ねて来たらしいのだが、部品の1つが故障して帰れなくなったためその部品を作るための資金を援助をして欲しいとの事だった。
援助してくれれば、故障が治ったあと俺を恐竜が闊歩している時代に連れて行ってくれると言う。
だから援助してやった。
で、今、俺はバーレットM82A1を手にして白亜紀の南米に来ているって訳だ。
世界最大の恐竜アルゼンチノサウルスやティラノサウルスより大きい肉食恐竜ギガノトサウルスなどを狙っている訳だが、バーレットで倒せない事も考えて、部下達には40ミリ・グレネードやRPG―30対戦車ロケットなどを装備させている。
5メートル程の恐竜を撃ち殺し満面の笑顔でタイムマシンの傍にいる男の方を向いたら、男のタイムマシンの傍に男のタイムマシンより洗練された形のタイムマシンが現れ、そのタイムマシンから降りてきた男達が男のタイムマシンと男を連れて消えた。
俺をこの世界に残したまま。
洗練された形のタイムマシンの内部で、男を拉致した者の1人が男に声を掛けた。
「私達は42世紀のタイムパトロール隊です。
タイムマシンの父として、博士、貴方にはタイムパトロール隊が結成された30世紀に行き、故障しない完璧なタイムマシンを作って頂きたい。
勿論我々タイムパトロール隊の監視の下でですが」
「分かった。
ところで彼等をあの地に置き去りにして良いのかね?
歴史が改変されるのでは?」
「改変されません。
30世紀にタイムパトロール隊が結成されたときスポンサーになってくださったのは、あの男の遺産を全て引き継いだ弟の直系の子孫です。
また、20世紀の終わりに南米の鉱山でギガノトサウルスの糞の化石が見つかり、その糞の中から複数の人の骨の化石が発見されているのですが。
多分彼等の成れの果てでしょうね。
だから連れ帰る訳にはいかないのです」