溢れだす人々
予想通り収まらないので、分割しました。
評価をくださった方、ありがとうございました。
頑張ります!
マリーを連れて王城に戻った仁達は、マリエルが使っていた部屋へと向かう。
「アリア様、ここまで来れば後は大丈夫です。 アリア様は教会の方で、待機してて貰えますか? ジェフリー様の儀式に間にあうようにしますが、時間が掛かった場合の時間稼ぎをして欲しいのです」
「分かりました。 では私は教会の方で待たせて頂きますね」
「はい、よろしくお願いします」
アリアは仁達と別れて、教会へと向かった。
◇ ◆ ◇
アリアと別れた仁とサチコは、マリエルの部屋に辿り着き、マリーをベッドに寝かせた。
「うん、ここまではうまくいったようだな」
「はい、では私はマリエルさまのマインドコントロールに入ります」
「サチコ、やり過ぎるなよ、いいな」
「分かってますって、お父さんは心配性ね。 では後ほど……」
サチコはマリエルの額と自分の額をあわせて、マインドコントロールを開始する。
するとサチコの体が、マリエルの体に溶け込んでいった。
サチコの精神干渉スキルは、対象と一体化し、その精神へと入っていく為のものだった。
精神に入り込み、マインドコントロールをする事で、淫魔と呼ばれるようになった夢魔特有の種族特性である。
諜報活動にも使えるこの能力は、ある問題を抱えていた。
その問題とは、サキュバスの生殖活動と、人間の旺盛な性欲と相性が良すぎる為にあった。
何故、夢魔が淫魔と云われていたかは、自明の理であると云うことである。
そして、長時間の精神干渉行為は、夢魔をも蝕む行為であるので、仁は夢魔達に諜報活動以外での、精神干渉はするなと厳命している程であった。
★ ☆ ★
「仁殿、お呼びですかな」
「ここは…… あら誰か寝ているのね」
カルロスとサリアがマリエルの部屋へとやって来た。
「お待ちして居りました。 カルロス様、この方のお顔をよーく見て下さい」
「ふむ…… ん? ま、まさかっ!? マリエルなのか!」
「えっ? マ、マリエルなの? ああ…… なんてことなの、こんなに窶れているなんて……」
カルロスは、面影でマリエルと分かり驚愕している。
一方、サリアはマリエルの変わり果てた姿を見て、己の罪深さを改めて認識してしまう。
「彼女はカーラの町を興した後、酒場を開きマリーと名乗って、女将をして居りました」
「なんと…… 苦労をして居たのだな」
「そうですね。 苦労もありますが、これは呪いによるものです」
「…………」
「の、呪い…… マリエルに何があったのだ」
仁はカルロスの問いに、すべてを打ち明けた。
「そうか…… マリエルはもう長くはないのだな」
「はい、あと数カ月あるかどうかです。 このことはジェフリー様にもお伝えしてあります」
「マリエル…… 私はなんという事を……」
「サリアさま、それは違います。 貴女は罪を犯しましたが、すべては魔神の手の者によって行われたこと。 既に神々の裁きは済んで居ります。 どうかご自身を責めず、彼女と共に生きて、見送ってあげて下さい」
「そうだな。 サリアよ、儂も居る。 だからマリエルと最後まで生きて、共に見送ってやろう」
「はい……」
カルロスはサリアの肩を抱き、彼女の涙を拭う。
── ── ──
ジェフリーの王位継承の儀式も終わり、戴冠式が行われる予定であったが、教会での熱狂的な騒ぎで中止となり、後日改めて王城の広場に会場を移して、民衆も集めて戴冠式を開くこととした。
教会に現れた勇者と女神様を一目拝みたいと、民衆が王城へと押し掛けて居たからである。
「ふむ、ちょうど仁殿と相談したいと思って居たのだが、これで問題は解決したな。 流石は神の使い、勇者は伊達ではないと云うことであるな。 ハッハッハ」
「そうだな。 これで披露宴も同時に行えば、ジェフリーの世継ぎも安泰であるな。 ハッハッハ」
「「あらあら、ウフフ」」
仁は自分の蒔いた種なので仕方がないが、ジェフリーの方は追い詰められた事で焦ってしまう。
◇ ◆ ◇
戴冠式が中止となった翌日、披露宴も含めた戴冠式の準備をしていた。
王都の人口3800人程、続々と集まってくる人々が約5000人と途轍もなく増えていく人、人、人。
既に宿もなく、王都の外では野営地が作られていた。
ほぼ周囲に住まう者達すら、王都から溢れてしまう状況で、食糧も不足しているのだ。
これは人災といっていい程に、ジェフリーを始め全員が戸惑っていた。
「これは無理だな。 王都でも、これ程の人が溢れた状況は初めてじゃ」
「さて、如何したらよいのやら……」
「はあ、もう街中で祭りでもしますか」
「祭り? 収穫祭とか感謝祭ですか?」
仁は半ばヤケになり、いい加減な提案をしてしまった。
「うーむ、戴冠式は城でやるとして、披露宴を広場で、入りきれない者達は、街中で何かを振る舞うとかするのか?」
「戴冠式後に、パレードをしましょう。 馬車に乗って、街中を練り歩くのですよ」
仁はひらめき、適当な催しを提案する。
「馬車に乗るのか? そんなんで民衆が納得するものかのう?」
「屋根のない馬車に乗れば、新たな国王様見たさに人は集まりますよ」
「なるほど、見えるところでアピール為れば良いのじゃな」
「ええ、ジェフリー様とマリアンヌさんも乗せれば、お妃さまの紹介にもなりますしね」
「おお! それじゃ! 妙案じゃな、ジェフリーもマリアンヌも、それでよいな」
「ちょっ!? 父上、私は大丈夫ですが、マリアンヌはまだ使用人なのですよ。 無理をいわんで下さい。 まだ式を挙げてもいませんし……」
ジェフリーは自分の言動に気付き、顔を真っ赤にしてマリアンヌを背に隠している。
「なんじゃ、いい歳しおってウブな奴じゃのう。 王ともあろう者が、妃の紹介すら出来んようでは、先が思いやられるぞ。 しっかりエスコートするのが男ぞ!」
「「がんばって、ジェフリー」」
カルロスを始め、母親二人からの励ましで、パレードが行われることとなった。
明日のも長くなりそう予感です。
もっと早く書ければいいのですが、私には無理です。
取りあえず頑張ります。




