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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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第十六代エルトランド国王

うまく書けたかは分かりませんが、頑張りました。

ブックマークありがとうございます。

何時も来てくれる方々にも感謝いたします。





「これよりエルトランド王国、王位継承の儀を執り行う。 各位、神に祈りを」


 ジェフリーの、王位継承の儀式が王城内の教会にて開始される。


「第十六代エルトランド国王、ジェフリー・エルトランド、御前へ」


 ジェフリーは祭司の導きで祭壇へと近づき一礼したのち、祭壇へと上る。


「神の祭壇に、王たる証を捧げよ」


「第十六代エルトランド国王、ジェフリー・エルトランドが、神の使徒勇者より預かりし王の証、『王者の(つるぎ)』をここに捧げ奉る」


 『王者の剣』を頭上に掲げ、それを両手で祭壇上にある台座に乗せて、頭を下げつつ後ろへと下がる。


 祭壇を下りてきたジェフリーに、祭司が清水で清める。


 ジェフリーは祭司の清めが済むと、祭壇へ一礼して祭壇前にある壇上へと向かう。


 壇上には司祭が待っており、その司祭の前にてジェフリーが跪く。


「第十六代国王、ジェフリー・エルトランド、そなたの捧げし『王者の剣』を以て、エルトランド王国国教アリアの御手は神のご意志に従い、そなたを王と認める。 我らアリアの御手信徒は、王国とともに歩む。 神の導きに感謝を捧げ、その道を違えぬ限り王を盛り立て、その人生を捧げるとする」


 司祭は宣誓書を読み終わると、ジェフリーに宣誓書を差し出す。


 ジェフリーは立ち上がり、その宣誓書に手を置き、答辞を述べる。


「第十六代エルトランド国王、ジェフリー・エルトランドは、神の使徒である勇者と共に神のご意志に従い、王国の民と共に人々の安寧と繁栄を旨とし、神への感謝を忘れず道を違わず、悪しきを裁き正しき行いを以てして、神々の怨敵に立ち向かうと誓う」


 ジェフリーの答辞が終わると、どこからともなく仁とアリアが祭壇に現れ、『王者の剣』をその手にとり、頭上に高々と掲げる。


 すると剣から神聖な光が溢れだす。


「我は神の遣いにして勇者なり。 この剣はエルトランド王国の象徴にして『神の御業』によって(もたら)されたものなり。 この『王者の剣』がエルトランド国王の手に在る限り、この(つるぎ)の威光は、人々を護り続けるであろう」


 仁の掲げた『王者の剣』の輝きが収まると、教会内の人々から割れんばかりの喝采が沸き起こる。


「「「神の使徒勇者様、万歳!!」」」


「「「女神アリア様、万歳!!」」」


「「「エルトランド王国、万歳!!」」」


 王城全体が鳴り響くような歓声に、仁は苦笑いを漏らし、アリアは耳を押さえて縮こまっている。


 司祭は宣誓書を抱き、ジェフリーは呆気にとられ、歓声を共に聞きいっていた。



 ── ── ──



 ジェフリーの王位継承の儀式が始まる数時間前にあわせて、仁達はカーラの町に来ていた。



「さて、サチコさんや支度はいいかね」

「はい! 準備は万端であります!」


「よろしい、では行こうか」

「了解です!」

「あのー、仁さま? マリーさまをお迎えに行くのですよね?」


 仁とサチコは、アリアの質問に首を傾げる。


「アリア様、先程の話を聞いていなかったのですか?」

「えーっと、聞いてましたが、何故サチコがついて来るのですか?」

「ひどい、アリアさま。 私の仕事を信じてくれないなんて……」


「え? そんな事はないわ。 サチコはちゃんとお仕事が出来る子よ」


「アリア様、先程も言いましたが、ことは『内密に』という意味はお分かりですか?」

「えーっと、すみません。 どういう事ですか?」


 仁はひと息ついて、詳しい説明をしだす。


「いいですか、相手はあの()()()さんなのです。 どう話しあっても、王城に連れて行くなど不可能なのです」


「え? そうですの?」

「はい、よしんば強引に連れて行けても、王族になるなど、有り得ませんし、それこそ不可能でしょう」


「そうですね、彼女の人生では有り得ませんわね」

「ええ、彼女は王族というトラウマを抱えているでしょう。 そこでサチコのスキル、精神干渉によるマインドコントロールが役に立つ時なのです」


 アリアは合点がいって、仁の云わんとしている事に納得した。


「なるほど、眠らせてお連れ為るのですね」

「はい、何事も下準備は必要です。 彼女もジェフリー様の晴れ姿をみれば、心も(ほだ)されましょう。 サチコのマインドコントロールによる、感情の揺さぶりを高めれば、尚更なことになる事うけあいという寸法です」


「さすが仁さま、人の情けを知り尽くした見事な作戦ですね。 ですが、どうやって事を成すおつもりですか?」


「ふむ、それは向こうに着いてからのお楽しみということでお願いします。 どの道、荒療治になるはずですし、結果はまだ何とも分かりませんので」

「分かりました。 マリエルさまのこと、よろしくお願いします」


「はい、出来うる限りのことはします。 その後は、時の運に祈ることにしましょう」


 こうして、仁達は酒場に向かい、マリーを眠らせた後に王都へと転移したのであった。



 ◆ ◇ ◆



「うーん…… こ、ここは? えっ!? 私の部屋? ど、どういうこと? な、なんで……」


 マリーは王城内の()()で目を覚ました。


「おはよう、マリエル。 久しいのう」

「えっ!? カ、カルロスなの? えっ!? じゃあここは王城なのね」


 マリーがカルロスの姿に困惑していると、そこに聞き覚えのある声が聞こえる。


「そうですわ。 ここは王城内の貴方が使っていたお部屋よ」

「サ、サリアおね……」


 目の前には、若かりし頃のサリアが立っていた。


「ごめんなさい、マリエル。 私は貴方からすべてを取りあげてしまった。 本当にごめんなさい」


 王城内での記憶は消されているサリアだったが、マリエルを前にして床に頭を擦り付けて謝罪する。


「マリエル、儂も謝らせてくれ。 この通りじゃ、済まなかった」


 カルロスもサリアに倣い、床に頭を擦り付け謝った。


「やめて! 私は、わたしは……」

「マリエルさま、いえマリーさん、落ち着いて、まずはお話をしましょう」


 精神干渉による揺らぎに打ち震えるマリーを落ち着かせようと、仁が声をかける。


「仁さん、貴方まで……」

「すみません、すべてはジェフリー様の為です。 そして、これは貴女の為でも在るのです」


「ど、どういうこと?」

「お話を聞いて頂けますか?」


 まだ不安定だが、仁の顔をみて落ち着き、マリーは返事をする。


「は、はい……」

「ありがとうございます。 では……」



 ★ ☆ ★



「そ、そうなの…… お姉様は、淫魔に取り憑かれて居たのね」


「はい、サリアさまは罪を犯しました。 ですが、すべては魔神の手の者の為業です。 サリアさま自身には、なんら落ち度は無かったのです。 ですので、どうか彼女も含め、カルロス様もお許し下さい。 すべてはジェフリー様の王としての在り方に掛かっているのです。 酷なことを云いますが、貴女が王族として過ごすことを望まないのは承知の上でお願いします。 どうかジェフリー様の母として、どうか王族としての()()を、()()()迎えて欲しいのです」


 マリーは仁の真摯な想いを受け、マリエルとして、王となるジェフリーの母として、最後を迎えようと決意する。


「わかりました。 ですが、カルロスやお姉様を許すのは出来ません。 だって、私は既に許しているのですよ」


「「えっ?」」


 カルロスとサリアは、マリエルの()()()()()という言葉に困惑している。


「すみませんが、そろそろ時間の様なので、ジェフリー様の晴れ姿を見に行きましょう」


「もう、そんな時間か」

「ええ、急ぎましょう」

「えっ? ちょっと待って、今からなの?」

「そうよ、早く行きましょう」


 仁は王位継承の儀式に間にあうようにと、三人を連れて会場の教会へと急いだ。



 ◆ ◇ ◆



 仁達一行が教会へ辿り着くと、そこは人々で溢れかえっていた。



「こりゃマズいな、中に入れんぞ」

「如何しましょう?」

「ふむ、仕方ないか。 皆さんこっちへ」


 仁は、皆を連れて物陰へと誘導する。


「仁殿、ここでは中に入れんぞ。 如何するのだ?」

「皆さん、いいですか? これから皆さんを教会内の礼拝堂へと転移させますので、私の体に触り出来るだけ動かないようにして下さい」


「転移っ! なるほど、それで町からお城に……」

「今は急ぎます。 詳しくは後でお話しましょう」


「「「はい」」」


 仁は三人を連れて、礼拝堂へと転移する。



 ◆ ◇ ◆



「ああ、仁さま! 間に合いましたね。 よかったわ」


 仁達が礼拝堂へと転移で現れると、アリアが出迎えてくれていた。


「アリアさま! 何事ですか!?」

「あっ、ごめんなさい。 何でもないの」


「おお! これは勇者様方でしたか、いま急いでお迎えに行こうかと話していた処でした。 そろそろお時間ですので、しばらくはここでお待ちを」


 アリアの大声で入ってきた騎士は、仁達が間に合ったことで報告をしに戻っていった。


「何とか間に合った様じゃな」

「そうね。 でも大丈夫かしら、少し緊張してきたわ」


「えっと、私は如何したらいいのかしら?」

「さっきの騎士様が云ったように待っていれば、迎えのものがくるでしょう。 後はジェフリー様の晴れ姿を見守って上げましょう」


「そうだな、儂らは今日のジェフリーの姿を忘れないよう、しかと見守ることとしよう」

「「ええ、そうしましょう」」


 しばらく礼拝堂にて待機し、その後に祭壇のある広間へと案内され、ジェフリーの王位継承の儀式を見守ることとなった。


 ジェフリーが王者の剣を祭壇に納め、司祭が王位継承を認め、宣誓書に誓いを立てた辺りでお三方は、泣き崩れていた。


 だが、仁には誤算がひとつあった。



(エルトランド王国『()()アリアの御手』って、どういうことだってばよう!?)



 ウッカリ女神は、やはり()()()()だった。


 その後のヤケになった仁の行動で、教会内が大変なことと成るので在った。




明日は少し分かりません。

長くなりそうなら、二つに分けるかも知れません。



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