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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
第三章、人々の暮らし
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それぞれの未来

まだジェフリーサイドが続きそうです。





 ジェフリーが契約の書を読み始めて、二日が経過した。



「うーん、やっと読み終わりました。 大半は理解出来ましたが、仁殿の解説書が無ければ、何日掛かるか分かりませんな」


「私も翻訳スキルがなければ、何日かは掛かりますね」




 神との契約も無事終わり、カルロスは加護の効果に感嘆する。


「しかし、神の加護とは凄いですな。 状態異常無効に精神異常無効、毒や病気にならないのは良いな。 冷めた食事は、流石にもう食べたくはないからのう」


「まったくです。 味は良くても、食べたくはないですね」


 王城での二人の食事は、毒味役を通してからのもので、食べられる頃には、すっかりと冷めていたそうだ。


「はは、そうですね。 因みに毒味役の方とか、何時から居るのですか?」


「以前は、居ませんでしたね。 暗殺事件の後に出来たとかなんとか……」

「うむ、儂が居なくなってからじゃな」


 仁は顎に手をあて、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「なるほど、冷や飯食いになったのは、あの連中からなんですね。 ざまぁ、としか言えないですね」


「「おお! 同感じゃな」ですね」


 ハッハッハと笑いあう、ジェフリーとカルロスであった。



 ◇ ◆ ◇



「ところで、如何でした? ダニエルさんの方は?」


「うむ、気持ち悪い程に、年老いていたな。 仁殿が、何かしたかと思ったが、違ったようじゃな」


 仁には思い当たる節があり、頭をよぎる。


「そういえば、夜逃げの途中で取り抑えたんですが、そのせいかも知れませんね。 あっ、それと奥方さまに、例の写真を送ったのもありまね」


 カルロスは、奥方にやり込められて逃げたあと、仁に捕まるダニエルを想像して笑いだした。


「ハッハッハ、そうか、なるほどな。 そりゃハゲるわな」

「えっ? ハゲてたので?」


 ダニエルの容姿を思い浮かべたのか、カルロスは腹を抱えて笑いだした。


「そりゃあ、もうハゲ散らかしておったわ、ハッハッハ」

「父上、流石に笑いすぎですぞ」



 ダニエルの話で緩んだ顔を戻し、仁は真面目な顔で話しだしす。


「ダニエルさんの事はこれぐらいにして、サリアさんの方なのですが、そろそろ神々の沙汰も決まるらしいです」


「ふむ、そうか。 出来ることなら罪が軽ければ良いのだが……」

継母(はは)上は、どうなるのでしょうか」


「とりあえず、アリア様が査問をしましたし、彼女の家系の有用性は伝えましたので、後は待つしかありませんね」


「うむ、『聖女』の血が、絶えてはならんからな」

「そうですね。 後は、神々に祈りを捧げ待ちましょう」



 ◇ ◆ ◇



 数日後、神々の沙汰も下り、サリアの処遇も決まった。


「えっと、カルロスなのよね?」

「ああ、そうじゃよ。 正真正銘、カルロス・エルトランドじゃよ」


「あ、あの、私は……」

「大丈夫じゃ、サリアは悪い夢を見ていただけ、お前の罪は儂も背負うと決めたからな。 後は、生きる事で罪を贖うが良い」


「うぅ…… ご、ご免なさい。 私だけ、こんな姿で……」

「ハッハッハ。 なに、気にすることはないぞ、儂はこんなに若い妃を持てるのだからな、ハッハッハ」


 淫魔に憑かれていた時の記憶は消去され、罪は不問となったが人々の記憶には残っているので、淫魔に取り憑かれた歳まで遡り、肉体を逆再生させた事で、若返ってしまったのである。


 要は、己が失わせた命に対し、己も失われる命の重みを見届けよと、神々は云っているのである。


 サリアは、年老いたカルロスを見て戸惑い、その愛しい人の最後を看とる事で、罪を赦して貰えたのだった。


 ある意味、かなり重い罰ではあるが、死んでいった者からみれば当然の報いなので、サリアはカルロスと一緒に生きると、決めたのである。



 だが、仁だけは違った。


 何故、罪の無いサリアがこんな理不尽を受けなければいけないのか


 そこで、仁は決断する。


 理不尽には、ファンタジーで対抗しようと、肉体強化薬を改造した、ホルモン調整剤と偶然の産物である賢者の石を使い、エリキシル剤とあわせて作成で無理矢理作った『若返りのエリクサー』を取り出した。


「フッフッフ、大丈夫ですよ。 こんな事もあろうかと、この若返りのエリクサーで全ては解決! さあ、カルロス様、ぐいっと飲んで下さい。 貴方も若い奥さんを残して、死んでしまいたい訳ではないですよね? フッフッフ」


 カルロスは、仁の異様な笑みを見てたじろいだ。


「ぐぬっ、ちょっ、ちょっと待て、なんだその無理矢理感たっぷりの怪しげな薬は?」


「安心して下さい。 不老不死の霊薬『エリクサー』を賢者の石を使い、ちゃんと若返りの霊薬に作り変えました。 後は試すだけなのです。 ささ、グイッといって下さいな。 フッフッフ」


「ま、待ってくれ。 今、試すだけとか言わなかったか? そのような…… なっ!? 何をする! は、放せ! 放さんか! ふぐっ」

「あ、あのっ! えっ?」


 仁に迫られ、背後をアレックスに取られたカルロスは観念する。

 そんなカルロスを助けようとしたサリアだったが、突然現れたアリアを見て驚いてしまう。


「すみません、これもサリアさんの為です、カルロスさまも覚悟を決めて下さい」


 アリアがカルロスの目の前に現れ、口元をあけるようにと鼻をふさぐ。


「ご協力感謝致します。 ではカルロス様、お飲み下さい。 フッフッフ」


 顔を歪めながらも、観念したカルロスは『若返りのエリクサー』を飲み干した。


「んぐっ!? グアアー!」

「カ、カルロス!?」

「触らないで! 大丈夫です。 今、肉体の細胞が再生されているので、一時的に痛覚が鋭敏になっているんです」


 ジェフリーに支えられ、苦しむカルロスを心配するサリアは目を瞑って祈りだす。

 アレックスは、そんな父と母を眺めてはブツブツと呟きメモを取っている。


「仁さま、これは大丈夫なのですか?」

「そ、そうですね。 少し長すぎですね。 年齢設定はあっている筈ですが…… あ、治まってきましたね。 もう大丈夫ですよ」


 心配したアリアが、仁に話し掛けてきたが、カルロスの姿が目に見えて若返っていった。


「継母上、父上を見て下さい」

「え? だ、大丈夫なの?」


 ジェフリーに声をかけられ、サリアは目を開けてカルロスを見詰める。


「ああ、カルロス…… カルロスが……」

「サ、サリア…… わ、儂はどうなった?」


「ええ、ちゃんと若返っているわ。 まさか、こんな事になるなんて……」

「そ、そうか、若返ったか…… だが、ちと疲れたのう」

「父上、お疲れのようですね。 ゆっくりと休んで下さい。 あとの事は私がやっておきます」


「ああ、宜しく頼む……」


 こうして、カルロスは若返りの反動で眠りにつき、サリアと共に自室へと運ばれていった。


「皆さん、お疲れさまでした。 仁さまも、お疲れさまです。 MPは大丈夫ですか?」


 アリアが皆を労い、仁の顔色を伺っていた。


「ありがとうございます。 何とか無事に調整出来ました。 思ったよりMPを持っていかれてしまい、焦りましたが、3割残ったので大丈夫ですよ」


 アリアと仁の会話を聞いていた、アレックスが話し掛けてきた。


「あ、あの、やはりあの薬は『エリクサー』ではなかったのですね」


「ほう、エリクサーをご存知なのですか?」

「はい、以前この城に仕えていた錬金術師にエリクサーなる薬剤は、人には使えぬと聞きましたので」


「なるほど、知っていましたか。 ですが、あれは本物から作った『エリクサー』なのですよ。 ただ、若返りだけの効果に留めるようにと、マナで抑制していたのです。 エリクサーは普通に作るとMPがなくなり、作成者が気絶してしまうのです」


「え? ではあれがエリクサーなのですか」

「ええ、エリクサーはもう在りませんが、作ることは出来ます。 ですが、おいそれとは使えないので、しばらくは作りません」


「それは何とも、勿体ないですな」

「まあ、理由は言えませんが、一言だけご忠告します。 エリクサーは不老不死の霊薬です。 関わらないのが身のためです。 でなければ、その身は必ず滅びます」


「それ程に、危険ですか……」

「ええ、()()()()あっても()()()()()ね」


 仁の忠告で身を震わせるアレックスであったが、本当の答えには気付かずに終わった。




誤字脱字を、直すかも知れません。



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