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とあるダンジョンの探索記  作者: アイネコ
序章、見習い冒険者マーク
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真実と嘘



 マークは目覚めた。

「う、うぅ……? ここは?」


 薄暗い洞窟に居たはずだが、見知らぬ部屋の柔らかなベッドに寝かされていた。


 マークが起きあがると、声を掛けられ振り返ると、そこには見知らぬ男が居た。


「やあ、おはよう」


「お、おはようございます……」

 マークは辺りを見回したが、部屋には窓もなく、ここがどこだか分からない。


「どうだい体のほうは?」

 男が訪ねてきたことで、やっと理解した。


 ダンジョンの4階層で、自分が罠にはまったことを


 マークは、手で体の状態を確かめ、目視でも確認をする。

 どこにも怪我や異常がないことに安堵し、男に礼を述べる。


「何処にも異常は無いです、お気遣いありがとうございます」


 男はほっとした顔で頷いた。


「とりあえず自己紹介だな、俺は田中仁という」

「僕、いや私はマークといいます」


 仁は右手を差し出し、マークも右手を差し出し握手する。


「えっーと、ヒトシさま、いきなりで失礼かと思うのですが、ここは何処でしょう?」

 マークは少し迷ったが質問をした。


 仁は少し困った顔をして答えた。

「こっここは、ダッ、ダンジョンなんだなあ」

 男は、思いっきりどもって答えた。


 マークは、理解不能の言葉で思考が停止した。


「あれ? おーい、ん? マジかぁ……」


 マークの開かれてる()()()で手を振ってみたが、反応がなかった。


 仁としてはボケてみたのだが、ものの見事に玉砕してしまい、違う反応に期待していたので、気まずくなってしまった。



 ☆ ★ ☆



 気絶してたマークをベッドに寝かせ、責任を感じた仁はちゃんとしようと思い看病を再開した。


 マークが、ここへ運ばれて来た時には、大怪我をしていたのたが、仁はその場で治療をして、全快させたのだ。


 どうやって治療したかと言うと、ストックしていたポーションを惜しげも無くぶっ掛けたからだ。


 あれから15分位だろうか、ムクリと起き上がったマークが、仁をジッと見つめている。


「ヒトシさま」

「ごめん、ひとしでいい、さまは止めてくれ」


「では、ヒトシさん貴方は人ですか?」

 マークは答えを待っているが、仁は答えに困ったが決意をした。


「正直に言うと、昔の俺は人間だったが、今は違うと思う」


 マークは困惑した。


「それと君がここに居るのは、俺が原因でもあるんだ」


「え? どういう事でしょう?」


「うん、だがまずは謝らせて欲しい、本当に済まなかった」

 仁は土下座をした。


 マークは仁を見つめ、困惑から混乱状態いっぽ手前になるが、その時ドアをノックする音がした。


 ノックの後、扉を開けて入室してきた人は女性だった。


「マスター、お食事をお持ちしました」

 入ってきた女性は若くて、とても美しい人だった。


 マークが思わず見つめていると、女性は微笑みお辞儀をした。


 我に返ったマークは赤面したが、仁は土下座をしていたので、見られてはいなかった。


「あ、あのぉ、ヒトシさん?」

 仁はマークの言葉で頭を上げ、マークに向き直る。

 そこで、自分の相方の存在を確認してひと息ついた。


「うん、食事だったなありがとう、そこに置いてくれ」


 女性は「はい」とひと言いうと、テーブルの上に配膳していく。


「マーク君、腹が空いているはずだし、まずは食べよう」

「はい、いただきます」


 マークと仁は席につき、食事を始める。


 しばらくは無言だったが、マークは彼女の事が気になり

 それに気付いた仁は、紹介してない事に気付く。


 仁は箸を置いて口にしていたものを飲み込むと、紹介を始めた。


「まだ紹介してなかったな、彼女はアリアだ、俺の相方で世話をしてくれている」

 仁は手招きをし彼女を促した。


「私はアリア、マスターの僕です、お見知りおきを」

 彼女は一歩下がってお辞儀をした。


「え? し、僕?」

 仁は驚愕の表情で固まったが、一拍遅れて言い逃れをかます。


「いやいやいやアリア、な、何ちゅうものをぶっ込むんだ! あ、アレだアレ、冗談だ、冗談…… ははっ、ハハハハ、やだなぁ、アリアは冗談が下手で…… はっ、ハハハハハハ」

 アリアは空気を読み頷いた。


「そ、そうでしたか…… はっ、ハハハハ……」

 どうやら誤魔化せず、だがマークが空気を読んでくれたと、仁は安堵した。


(マジで勘弁してくれよぉ)


 食事を終えて、アリアが場を整える。


 紅茶と焼き菓子がテーブルに置かれ、アリアは下がっていった。


 互いに一口紅茶を飲み、会談を再開する。


「食事前にも言ったが、俺は人ではない。 まあ、色々と説明しないと判らないと思うが、申し訳ないがこちらの事情でこれ以上は話せないんだ」

 仁は真顔でマークに話しかける。


「今話してしまうと、君を家に帰せなくなるので許して欲しい」

 仁はテーブル越しに頭を下げた。


「私も、家に帰れなくなるのは困るので、詳しくは聞かない事にします」

 マークは頷き受け入れた。


「そうか、ありがとう。 だが、原因を作ったのは俺だし謝罪する。本当に済まなかった」

 仁は、頭を下げた。


「謝罪はすでに受けましたし、最初から怒っていません。 ですから頭を上げて下さい」

 マークは仁に頭を上げさせたが、疑問に思う事を口にした。


「一つだけいいですか? なぜ人でないと、うち明けてくれたのですか? 答えずに騙したとしても、よかったのでは?」


 仁はマークの疑問に納得した上で、思った事を口にした。


「たぶんだが、君に嘘をつきたくなかったからだな」

 仁は正直に答えた。


「君が言うように、黙っていることも出来たと思うが、負い目があったし、君だからこそ正直になれたと思う」

 マークは黙って聞いていたが、顔には『?』マークが浮かんでいた。


「まあ、かなり迂闊だったと思うがね」

 仁は苦笑いしながら、頭をかく。



 実はこの時、ダンジョンにはマークを探す一団が居た。


 とてもではないが、マークをこのまま帰すと集団と出会い、場合によっては、仁vs捜索隊の構図が読めたので、引き留め工作をしていたのであった。



(言えねぇし、バレたらヤバいわぁ、嘘はついてないし…… ついてないよ、誰か助けてぇ~)



 この後、捜索隊が帰るまでの時間を、雑談交え帰る為の打ち合わせをしながら、再会の約束を押し付けた上に、お土産を渡しておく。


 これでもかという程、思い付く限りのことをマークに施すのであった。



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